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    tyachatea

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    幸村視点の赤真(付き合ってる)です

    幸村視点の赤真「幸村ぶちょぉーっ! 今の見ましたぁ!?」
     コートに立ったまま、赤也はこちらに向かって手を振ってくる。まだ試合中で、しかも相手のサーブを待っているのに調子がいい。さっきのリターンエースを褒めて欲しいのだろう。他校との練習試合だというのに態度が悪い。生意気盛りってやつだろうか。けど可愛げがあるのは得だ。呆れつつ笑ってしまう。
    「赤也ーっ! 試合に集中せんか!!」
     手を振り返してやる前に、真田が声を張り上げた。いつの間にやら真田は自分の試合を終えたらしい。俺の隣に腰掛けてドリンクを手に取る。手に取ったものの口は付けないまま、赤也の試合に目を奪われている。
    「真田ってさ」
     他のみんなはまだ試合を続けていて、ベンチのそばには俺と真田の二人きりだった。ラリーが終わり、相手側のコートにボールが転がる。そのタイミングで、聞いてみることにした。
    「赤也と付き合ってるの?」
    「――っ……!?」
     真田のドリンクホルダーが、地面を転がっていく。どうやら俺は真田の触覚を奪ってしまったみたいだ――なんて。
    「ゆき……なっ……ど……」
     面白いくらいにうろたえている。口もきけなくなったらしい。そんなんじゃもう、誤魔化されてもやれない。赤くなったり青くなったり見ていて愉快ではあるけれど、俺は笑いを飲み込んだ。
    「最近特に、お互い意識してるだろ? わかるよ」
     さっきだって俺の名前を呼んでいながら、真田からの返事を聞いた赤也は満足そうに試合に戻っていった。ダシされたのかと思うと腹が立つ。けど、この世の終わりのように項垂れる真田の背を見ると胸が空く。
    「……お前に悟られるなら、蓮二も」
    「仁王辺りも気づいてそうだ。……というか、そっちから言ってくれたらいいだろう。水臭いじゃないか」
    「それは……」
     言い淀む真田は、まるで小さい頃道に迷った時のような顔をしていた。あのゲンイチローくんも年頃なんだなと思うと、くく、と笑いが漏れてしまう。
    「そりゃあみんな絶対にからかうと思うけど、応援してくれるよ」
    「からかいはするのか」
     と突っ込んで、真田はちょっと笑った。40-0と審判の声がする。赤也はポイントを決めようと真剣な顔をしている。
    「告白は赤也から?」
     有言実行で、早速からかってやる。
    「ああ……」
    「へえ、まあそうだろうな」
     赤也と初めて会った時のことを思い出す。真田はああいうがむしゃらに向かってくる相手のことがきっと好きだろうなと思った。赤也からしつこく言い寄られ、真田が折れたのだろうということは想像に難くない。
    「キスとかはもうしたのか?」
    「っ……ゆ、幸村! いい加減にしろ!」
     真っ赤な顔を向けてくる。なんなら涙目だ。からかいがいがありすぎる。
     それに真田のこの反応に――察してしまった。していないならそうはっきりと言うだろうし、していないと嘘をつけない性分なのがこの幼馴染だ。
    「真田が教えないなら、赤也に聞くことにするよ」
    「やめろ!」
    「いいじゃないか。赤也の方は惚気たいかもしれないし」
     赤也の反応も気になるところだ。言い返せなくなったのか、真田は黙ってしまった。
     さすがに、いじめすぎたかもしれない。隠されていたことへの溜飲は下がった。もうそろそろ勘弁してやるか――と息を吐いたところで、袖が引っ張られた。
    「……やめてくれ」
    「真田?」
     照れてるのとは違う表情だ。なんだか思い詰めてるみたいな。さっきまでとは違う雰囲気に、俺は真田をじっと見つめて言葉を待った。
     普段はうるさいくらいなのに、蚊の鳴くような声が口から漏れる。
    「……何だって? ごめん、聞こえないよ」
    「だからっ……その……赤也には言わないでくれ」
    「え?」
    「部員に関係がバレたら別れる、という話になっているからな……」
     言って、真田は帽子のツバを思いきり下げた。
     一瞬何を言っているのかわからなかったが、だんだん頬が熱くなってくる。
     これは惚気だ。
     真田はどうやら、赤也と別れる気はないらしい。赤也の執着に根負けしたのかと思いきや、真田も案外――。
    「あのおーっ! 二人で何話してるんスか!?」
     また赤也が、コートの中からこっちに向かって声を上げる。真田と俺が話していて試合に集中していなかったことに不機嫌になったようだ。
     それから、俺だけ見てて下さいよ――なんて、含みのありすぎることを叫ぶ。
    「た、たわけが……!」
     言葉と裏腹な、満更でもなさそうな真田の声色に、俺は耐えられず腹を抱えて笑ってしまった。
     
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