バレンタイン小ネタ赤真 2/14はふんどしの日。
2/14にバレンタイン以外の記念日があるわけないけどもしかして、の気持ちで検索した結果に俺は思いきり叫んでしまった。
隣の部屋の姉ちゃんに壁を叩かれる。けどそれどころじゃなかった。パズルのピースがぴったりはまっちまったんだ。
おかしいと思ったーー俺と真田副部長は付き合ってる関係ではある。けど、副部長からバレンタインにチョコを貰えるなんてまあ無いだろうなと思ってた。
風紀委員長だし。チョコの持ち込みに目くじらを立ててる側だ。俺が渡したって多分叱られる。
けど言うだけタダだと思って、ダメ元で聞いてみた。
「あのお…14日って俺、副部長に貰えたりするんスかね」
そう言えば伝わるって思った。
副部長は最初何のことをって風に眉を寄せて、それからふと気がついたように言ったんだ。
「……欲しいのか?」
「え!?くれるんスか!?」
「学校に持ち込むことは出来ないが放課後家に寄って帰るのならば用意しておく」
俺は馬鹿みたいに喜んで、家に行った時に隙あらばキスとかできないかなって妄想を膨らませてた。けどあまりにうまく行きすぎだってことも、薄々わかってた。
「あ〜〜マジかよお…………」
何も考えず、手作りがいいとか言っちまった。副部長も、わかったとか言って。
手作りのーーっつーか、手縫いのふんどしを貰うことになるのか、俺は。しかもめっちゃ期待してます!みたいに訴えたから、今更いらないなんて言えるわけがない。
しかももう日付が変わって、2/14はまさに今日だ。
もっと早くに気がついていたらチョコ欲しいアピしてたのに。
「赤也、約束していたものだ」
当日。心臓がめちゃくちゃドキドキするのは副部長の部屋で二人きりだからってだけじゃなくて、昨日寝つきが悪かったりとか、緊張とか色々。
「わー、たのしみー……」
俺はもう覚悟を決めることにした。なんだかんだで付き合ってから初めて貰うプレゼントだ。きちんと包装までされている。
「しかも手作りですもんね」
うちにある、ドラゴンの裁縫セットのことが頭をよぎる。
「言っておくがあまり期待はするな」
「いや、もうこの際ハミ出なきゃそれでいーっス」
「はみ……?」
「つか貰っといてなんなんですけど、これってどーやって身につけるもんなんスか?」
「……っ!?おい、何をする!?」
いでっ!て声が出た。今も履いてるだろうと思って参考に見ようとしたら副部長にぶん殴られたからだ。
「たわけが!」
「えーっ、……あ、もしかして今履いてるのって俺とお揃いとか?」
「お前は一体何の話をしているんだ……」
「え、だってこれ……あ」
包装を開けると、中にはさらに小箱があった。それを開けると、几帳面に正方形に切り分けられたチョコが並んでいる。上にはココアまでかかってた。
じっと見ていると、じろじろ見るなと真田さんの手に隠された。
「お前には来年の立海を任せることになるからと思い、願いを聞いてやったつもりだが。これではなかったのか?」
チョコペンで書かれているのは好きですなんてかわいい文字じゃなくて、「頑張れ」って達筆な字だった。
その無骨な感じが副部長って感じで、ちょっといびつなそのチョコは、俺のためにわざわざ作ってくれたんだってわかってしまう出来だ。
ふんどしの方が余程「らしい」のに。
「副部長……」
「な、なんだ」
「俺、副部長のことすげー好き……」
チョコだった安心と、疑った申し訳なさと、俺のために全然らしくないことをする副部長への可愛いって気持ちが入り混じる。
副部長は予想外だったみたいに狼狽えた。