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    Sakumaru_oo

    @Sakumaru_oo

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    Sakumaru_oo

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    そういう個性事故にあってファンタジー設定の舞台でイチャコラするプロヒ勝デ
    ワンドロです

    #勝デク
    katsudeku

    舞台でイチャコラする勝デ暗転。
    人の沢山いるこの劇場で、しかし声を上げるものは一人もいない。
    それもそうだ。もう劇の最中。この暗転だってきっとすぐに解かれるのだろう。

    舞台の内容は中世風ファンタジー。
    麗しき王子は王位を継いで国を治めよと煩い王に痺れを切らして家出する。
    忠実で堅物な騎士と、それから途中で目的地が同じということで同行したガラの悪い剣士の旅人と共に、あらゆる願いが叶うという秘境に辿り着いた。
    王子の目的は母親の病を治すため。騎士は兄の怪我を治すため。それぞれ願いを口にすると宝珠が授けられ、それを割れば一番の薬が手に入るだろうとお告げを貰った。
    そして、次は旅人の番だ。彼はとにかく気性が荒く、万物に興味を示さず、しかし何かひとつの目的に固執していたようだった。裏切りの可能性も含め、観客は固唾を飲んで見守っていたのだ。その彼の願いが明らかになる。

    じんわりと舞台が明かりを取り戻し、そこに立つ旅人が明らかになる。
    旅人は素行悪く木々をかき分けており、きょろきょろ当たりを見回して何かを探しているようだった。

    と、ざわりと音がした。茂みの動く音だ。旅人は警戒しながら手持ちの槍を突き出した。
    槍の先に照明が絞られる。

    ふわり、とその槍に降り立ったのはあどけない顔立ちの青年だった。白い神職風の衣に緑の髪が映えている。

    あっ、と見覚えのあるその顔にポスターを思い浮かべた。この劇の主な登場人物の画像にいた青年だ。物語のキーパーソンだろうか。

    それにしても、メタい話ではあるが、槍に人を乗せて尚且つそれを支える旅人役の人、そしてブレもせず小さい足場に乗る青年の人、どちらも物凄い体幹やら筋肉やらをしているようである。

    旅人が槍を振り、青年をなぎ落とそうとした。
    しかし青年はふわりと飛び、旅人の槍を避ける。
    苛立った様子の旅人が一なぎ、二なぎ。ふわり、ふわり、青年が避ける。

    観客はそのパフォーマンスに見とれていた。

    旅人の槍はまるで武舞のように美しい軌道を描き、それを避ける青年のひらひらした白い布も弧の軌道を描く。

    暫し美しい芸を披露した二人は、やがて闘気を無くした旅人によって終わりを告げた。
    完全なる警戒から多少訝しむまでに気を許した旅人に青年が寄る。
    旅人は意外にも硬派らしい。寄り付く青年を離れさせ、しかし意味がわからない様子の青年が近づきと可愛らしい攻防の後、青年がそっと旅人の手を握った。

    「──旅の無事を、祈っておりました」

    はっ、と旅人が青年の腕をまくる。
    そこには細く金の紋章が蔓のように描かれていた。

    観客が息を飲む。

    あれは、物語の序盤で旅人が唯一言った、想い人の特徴である。

    旅人は青年をそっと抱きしめ、青年もそれに腕を回す──かと思いきや、つっと突き放した。
    先程までは触れてきていたのにと旅人が顔を顰めるが、青年は「まさか覚えているなんて」と離れて消えた。

    旅人が悔しげな顔をする。なんてったって、ずっと捜し求めていた相手だ。観客が同情した。

    場面は王子サイドに移る。
    騎士と共に旅人を探す王子と元に、賊が現れた。
    秘境の地では心からの純粋な願いにのみ宝珠が授けられる。心の汚い者はその恩恵を受けられず、他の者から奪おうとするのだ。
    王子と騎士は必死に戦うが、ここは秘境の地。血を流すことはご法度とされる。
    故に殺さぬよう戦うが、それだときりがなく、押され気味である。

    王子が不意打ちの刀をくらいそうになった時……ぱっ、と照明が絞られ、青年が現れた。
    青年は賊に手をかざすだけで眠りに落とし、二人を振り返る。
    命の恩人に二人は感謝したが、その腕の紋章を見て旅人の想い人だと気づき、どうか会ってやくれまいかと説得をした。しかし青年は辛そうに頭を振る。

    青年は独白を始めた。
    自分は旅人と古くからの仲だということ。彼を救うため、背に腹はかえられぬと人で無くなったこと。──本当は彼を愛していること。

    仕方がないのだと哀しげに笑う青年に観客からすすり泣きが聴こえる。

    ぱっ、と照明が集まった。
    救いの手のように現れた彼は旅人である。
    驚く青年に、旅人が願いを言った。

    「お前を人に戻したい」

    顔を抑えた青年。
    舞台が暗転し、その僅かな合間で青年の衣装が変わっていた。
    白の服から一変、動きやすそうなパンツにベスト、シャツといった村人の服装になっている。彼の人ならざる雰囲気は消え、素朴さの引き立つ彼の腕にもう紋章は無い。

    状況を呑み込めないでいた青年が、旅人を見て、自身の腕を見て、それからにこりと笑った。

    観客からは嬉し涙と、心からの拍手が送られる。

    そんな彼を旅人は掻き抱き、そしてキスを送った。青年が慌てる。

    ──そうして、城に着いた王子の蟠りは青年によって解かれ、王子の母、そして騎士の兄の怪我も治り、そして……旅人と青年は末永く、結ばれたのであった。

    一度引いた舞台に役者がずらりと並ぶ。

    最高のカーテンコールだ。観客はスタンディングオベーションで称え、役者は嬉しそうにお辞儀をして見せた。
    青年が旅人にキスを返したのを見て、更に拍手の輪が大きくなった。



    「──はあ、まさかあんな個性があるとは思わなかったよ」
    「そうだな」
    「驚いたが存外貴重な体験ができたな!」
    「無駄に体力使ったわクソが」
    「君が一番演技上手かったじゃないか」

    緑谷、爆豪、飯田、轟は、チームアップで救助をしていた時、助けた子供の個性にかかってしまったのだった。
    個性、《追憶》。母親曰く、一度体験した出来事をもう一度他の誰かに共有する個性らしく、気が動転していたことから、本来観客として記憶を体験するはずが役者として反映されてしまったようであった。少女は母親に連れ立って見た舞台をもう一度、しかもヒーローの演技で見られて大興奮である。
    申し訳なさそうに頭を下げる母親に頭を振って、事務所にて四人で労いつつ、出久は自宅に帰ったのだった。

    「……もう、ほんとにキスする事無かっただろ」
    「二回目してきたのは何処の何奴だァ?」

    旅人と青年の愛の巣は、現実にも存在しているだとか、しないとか。
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