Carousel Adventure 0 これは、レトロとルカが思わぬ事故に遭遇する前のお話。
ある日、なにやらルカはレトロに作ってもらった義手のことを気にしていた。腕を曲げたり伸ばしたり、指を動かしたり。どうやら義手の動きが悪いらしい。
自分でメンテナンスもしてみたが効果なし。作った本人のレトロに頼もうにも、そもそもレトロは機械音痴だから論外。そんな機械音痴が作り上げた奇跡の逸品なので、もちろん本人は直し方を知らない。
仕方ないので義手に詳しい技師を訪ねることにした。
技師曰く、義手に付いている青いコアに問題があるらしい。よく見ると青い色が少し失われつつあるようだ。
技師は義手の修理をしてくれるようで、修理の間別の義手を付けるよう言われた。その義手には赤いコアが填められていた。
技師に修理を任せ、渡された義手の動きを確認しながらレトロの元へ。
相変わらず機械音痴なのに何かの機械を修理しようとしていた。
「おい」
声を掛けるが返事がない。修理に没頭しているようだ。
彼は機械の作成や修理になると集中しすぎて注意散漫になってしまう。
少し苛立ったルカは、レトロの前に屈んでデコピンを食らわせた。
「いてっ! なんだルカかぁ。何するんだよぉ」
ようやくレトロは顔を上げた。そこまで強かったのか少し涙目である。上げられた顔は、既に機械修理に失敗したのか真っ黒である。
レトロはルカの義手に視線を落とした。
「あれ? その義手どうしたんだ?」
「お前が作った義手の調子が悪かったんで、今は技師に修理を頼んでいるところだ。こいつは、その技師から渡された代わりの義手」
「なんだって? だったらおれに任せれば良かったじゃん」
レトロは少し膨れた。
「どうせ直せないだろ」
「ひどい……。まぁそうなんだけどさ……」
レトロはしばらく項垂れていると、突然立ち上がった。
「ルカのせいで落ち込んだらはらへった。飯食いに行こうぜ。ルカの奢りな」
「はあ?」
思わぬ発言でルカは理解できていない様子。
そんなルカのことなんか気にせず、レトロは真っ直ぐ飯屋に向かった。ルカはため息を着きながら「おい待てよ!」と後を追った。
飯屋に向かう道中、ルカはずっと義手を気にしていた。
「……」
ふと、ルカはコア部分を触ってみた。特に変化は起きなかった。
「それにしても、今日も平和過ぎなんだよなぁ……」
レトロは空を見上げながら言った。
「なんか事件とか起きないかな?」
「例えば?」
「んー。例えば空から人が降ってくるとか!」
「は? ありえねぇだろ」
レトロの発言に、ルカは呆れた。
「そうかぁ……」
レトロは肩を落とすと、再び空を見上げた。
今日は雲一つない快晴である。レトロはラジオで聞いていたので、今日の天気を知っていた。「人が降るなんてラジオで言っていなかった。だからルカの言う通り、それはありえない」と思った。
しばらく空を見上げていると、雨雲が無いのにも関わらず、一瞬稲妻が走った。
「ん?」
レトロは気の所為かと思い、もう一度空をよく見る。
今度は稲妻が走った空に真っ黒な穴が現れた。
「なんだあれ」
レトロは慌てて空に空いた穴を指さした。
レトロの声にルカも空を見上げる。
二人はしばらく穴を観察していると、穴から複数の何かが降ってきたように見えた。
「い、今穴から降ってきたのって……」
レトロはルカの方を見た。
「……人か……?」
「やべぇよ! 早く助けに行かねぇと 行くぞルカ」
レトロはそう言うと、ルカの腕を引っ張り走り出した。
「俺もかよ……」
ルカはレトロに引っ張られるがまま着いていくことになった。
二人は穴を目指した。
そこにはきっと、彼らの新しい仲間達が現れるだろう。
だが、新たな仲間達と出会うのは、また別のお話。