怒るけど、嫌わないから大丈夫 ゲンガーのフードポンチョを身に纏い、右腕に小型バスケットを提げた子供が、パシオのポケモンセンターサロンにて、一節踊るように、踵でくるりとサカキの前で踊ってみせた。
「トリックオアトリート」
サカキの目の前で踊りを舞うような子供の心当たりなど、息子であるシルバーや、このパシオで顔馴染みになったケイ、百歩譲ってリーフくらいの者だったが、意外なことにそれはレッドだった。サカキはその事に驚いて瞬きをしたものの、ああ、この子供も年相応にハロウィンという祭りに興じたりするのかと、どこか内心で安心をする自分もいる。
「存在事態がトリックでトリートな奴が言うのか?」
が、それを悟られぬように、サカキは一つため息をついた。
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