「司くん」
新装置の試運転が一段落しのんびりとした時間をガレージで過ごしていると、ソファに座っていた類が手招きする。
意図は分からないが大人しく近付くと、突然腕を引かれそのまま類の胸元へと飛び込む形になってしまった。
腕を引かれる程度で体制を崩してしまうとは、我ながら油断しすぎである。
「類、大丈――」
「つかまえた」
「はぁ? む、もごっ」
予想外の言葉に思わず漏れた声を気にすること無く、背に回された腕に抱き締められる。力一杯の抱擁に息が苦しくなり慌てて上半身を救出させると、満面の笑みを浮かべた類の顔が目前に広がった。その近さについ顔を逸らしてしまったが、彼の気分は害さなかったようでくつくつと笑っている。
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