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    amemoyo572

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    amemoyo572

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    描き途中ばかり
    572
    当主と使用人兼護衛

    悟って呼ばれたい(仮)「あっ、すぐるだっ」
    「坊ちゃん廊下は走ってはなりません」
     使用人の言葉には聞く耳を持たずに五条は廊下を駆け出した。
    「すぐるー!」
     五条は庭園にいる夏油に聞こえるように大きな声で名前を呼んだ。それに気がついた夏油はクスクスと笑いながら振り返った。
    「悟?そんな大きな声で呼ばなくても聞こえてるよ」
    「うっせー」
     夏油を見かけて嬉しくて駆け寄ったのがバレバレで少し恥ずかしくなった。
    「こんにちわ悟坊ちゃん」
     声をした方に顔を向けると夏油の父親が作業をしていた手を止めて帽子を外して五条に挨拶をしにきた。それに応える様に軽く会釈した。今日は日曜日で小学校のやっていない今日は傑が庭仕事を手伝いにやってくる日だ。
    「ねぇ、すぐる連れて行って良い?」
    「どうぞお連れください」
     夏油家は代々五条家に仕える庭師の家系である。
    「私まだ父さんの仕事を見ていたいだけど」
     そう言った夏油の言葉を無視して手を引っ張り連れ出した場所は五条家の書斎であった。
    「もー、ほんと君は強引だな」
    「すくるー見てこれ」
     五条は頭より高い位置にある古ぼけた本を取り出して夏油に見せた。
    「何これ?」
    「すぐるの術式!呪霊操術について書かれている本を見つけた」
     それは印刷された本ではなく手書きで記された伝記のような物だった、夏油は見ても良いかと五条にお伺いを立てると中身をペラペラとめくった。難しい漢字な上に達筆で全く読めなかった。
    「なんて書いてあるかわかる?」
    「わかる」
    「さとるは凄いね、なんでも知ってる」
     五条は夏油に褒められるのが好きだった、誇らしげに笑った。
    「すぐるの術式はね呪霊操術と言ってとっても珍しい、簡単に言うと呪霊を調伏して取り込んで操れるんだよ」
    「あんな危ない呪霊を仲間にできるなんて面白い術式なんだね」
    「実践してみる?」
    「えっ」
    「夕方から任務に行く予定だったんだけどさ、今からこっそり抜け出して二人で行こうぜ、その辺の適当なやつ祓っても良いんだけどさ、せっかくなら強いやつが良いじゃん?」
    「…うん」
    「なに?びびってんの?」
    「…少し」
    「大丈夫!俺が居るから!」
     そう言ってその辺にいた使用人にちょっと出かけてくる!と言い残して夏油の手を引いて外に出た、大人は連れていけない五条は夏油が術式を持っている事を隠したがっているからだ、呪力がある事は呪力がある者には気が付かれているけれど術式があるかまではわからないと思っている。


    「傑、そろそろわきまえてくれないか?もう来年から中学生だ、言いたいことが分かるよな?」
     夏油は頷いた。いつまでも子どもでは居られない居てはいけない五条家時期当主の五条悟と非呪術師の庭師の息子の夏油傑、子どもだからと許されていた事がそろそろ許されなくなる頃だとは幼いながらに思ってはいたのだ。
     夏油は中学生になり相変わらず学校のない日は父の仕事について行き庭師の仕事を手伝っていた。このまま庭師になれば、たまには五条のに会えるのでは無いか今までの関係通りとは言えないが雇い主と使用人のひとりとして接する事ができるのでは無いかと考えてしまっていた、とんだ不純な理由だ。小学生の頃は父の仕事が好きで、ただついて行っていただけだと言うのに今は、ただ会いたいと一目でも見たいとそんな気持ちでついてきているに過ぎない。
     まだ幼かった頃は次期当主とかそんなの知らない付き合いをしてきた。嫡男ですとか次期当主ですとかそんな自己紹介なんか無くただの子どもとして出会ったのだ。


    「君、大丈夫?」
     夏油はトイレの前で、白髪のうずくまる子どもに声をかけたが返事は返って来なかった。
    「ごめんね、触るね」
     そう言って夏油は少年の目の前にしゃがみ込み前髪で隠れたおでこに触れた。額は冷たいのに汗がすごい、体調が優れないのは確かだった。夏油はこの症状に見覚えがあった。
    「ねぇ、これ舐めて」
     ポケットから飴玉を取り出して少年の口の中に押し込んだ。
    「飴舐めたら良くなると思うんだけど、どうかな?」
     返事がないので夏油はそのまま彼にもう一粒飴玉を握らせて少し待っていてね、すぐに戻るからと伝えて父が仕事をしている庭へと急いだ。日陰に置いてあるビニール袋からコーラを取り出して夏油は「父さんコーラもらうね」と一声かけ、行きしなにコンビニで購入した未開封のコーラを握りしめて少年の元に戻る。
    「これ、飲める?コーラ、炭酸なんだけど」
     キャップを開けて渡すと彼は素直に受け取った、おそるおそる口の中にコーラを含む少年はシュワシュワと口いっぱいに広がる感覚に驚いたようだが、すぐに慣れたよう一口一口ゆっくりと口に含む様子を夏油は見守っていた。半分ほど飲み終わった所で少年はやっと夏油の方を見た。
    「……ありがとう、気持ち悪いの治まった」
    「ふふふ、どういたしまして。低血糖かな?って思ったから正解でよかった」
    「ていけっとう?何それ」
    「朝ごはん抜いた?糖が足りなくなって身体がうまく動かなくなるんだよ」
    「あー、心当たりあるわ」
     俺の目は特殊だ、術式のコントロールも大変で沢山脳を使うから糖が必要だと使用人が言っていた気がする。こんなに気持ち悪くなるなら次からは気をつけようと思った。
    「ねぇ、名前なんていうの?」
    「名前を知りたいなら自分から名乗るべきだよ」
    「はぁ?何それ、知らねー」
    「君ねぇ…私は傑だよ、よろしく」
    「悟、よろしくな傑」
     握手を交わす、六眼でじっくりと傑を観察した、へぇ、良いもん持ってんじゃん。でも本人は自覚無し、か。もったいねぇ。






    「悟様失礼いたします」
     落ち着いた声が襖越しに聞こえる。丁寧な所作で三回に分けて襖を開ける指先はピンと伸び襖から覗く跪座の姿勢までもが美しい。夏油の長く節くれた指が縁だけを器用に触れ襖を静かに開ける。
    「おはようございます悟様、ご機嫌いかがでしょうか?」
     夏油はすでに身支度を整えた五条の姿を確認して声をかけた。
    「おはよう傑、いつも通りだよ、でもそういう態度をとる傑が嫌すぎて気分は最悪だよ」
     夏油は眉を下げて困ったように笑う、五条だって困らせてるのは分かっているのだが嫌なものは嫌なのだ、小学生までは良かった五条家当主の息子と使用人の息子という関係はなんて物は関係なく一緒にいられたから、中学生になると少しよそよそしくはなった物の今まで通り遊んだりしてた。その関係が変わってしまったのが高校生になった時だ夏油は五条に黙って京都校に入学をした、一緒に東京都立呪術高専学校に行こうと約束をしたのに、なんでだよ。その理由を知ったのは高専を卒業して当主になるべく本家に戻ってからだった。
     くそっ、誰だよ傑に余計なこと言いやがった奴は。許せねぇ。

    「いつも言ってるじゃん僕の前では親友の傑で居てって」
     不満げに口を尖らす五条に困ったな、と言う顔で夏油は五条をなだめる。
     「悟様そんなわけには参りません、私は幼き頃の遊び相手ではございません、今は五条家当主様に雇われている立派な世話係兼護衛でございます」
    「ほんと嫌!傑のそういう所!ほんと頑固!俺が良いって言ってるじゃん!」
    「悟様、粗悪な言葉遣いになっております」
    「何時もだっつーの!」
     夏油はむしゃくしゃとして頭を掻きむしる五条に思わずため息を吐いた。
    「一人称俺は流石に辞めていただきたいです」
    「もう!ほんと朝から説教とか辞めて欲しい!」
     静かな和室に五条のわめく声がこだました。夏油はもう一度ため息を吐き頭を抱えた。昔はこんな風にわがままでは無かったはずなのだが一体どこで間違えたのだろう。
     夏油傑は五条家に庭師と仕える夏油家の長男として生まれた。祖父や父の作り出す庭が好きで物心ついた頃から仕事に同行させてもらっていた。
    「いいかい傑。五条家には時期当主様になる傑と同い年の坊ちゃまがいらっしゃる、もし出会われた場合には決して失礼のない様にな」
     そう言ったのは祖父だったか父だったか忘れてしまったけれど必ずと言っていいほど赴く際には言われていた。毎回言わなくても良いのにと幼い頃の夏油は思ったが素直に返事をしていた。ただ、情報が同い年の坊ちゃまと言うだけで他の情報は聞いておらず出会っても分からないのでは無いかと思った。
     
     



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    amemoyo572

    INFO2025年1月12日インテックス大阪 今夜帳の中で参加します。
    こちらはサンプルページとなっております。
    【サンプル】明日がどうなっても構わない 明日がどうなっても構わない
     

     近いからと言う理由で選んだ学校は勉強が大変だとか仲が良い友人が居て毎日楽しいとか、そう言う類いのものは全く無くて、ただ過ぎ去るだけの日々の退屈凌ぎに惰性で通うだけの場所だった。
     開始五分前に教室に入る、見慣れた変わり映えのない教室には、おはようの挨拶を交わすクラスメイトは居ない。後ろ側の扉から入り窓側から三番目、一番後ろの自分の席に一直線に向かう、席に着くと持ってきていた教科書を鞄の中から取り出し机の中に入れようとした所コツンと何かにぶつかった。机の中を覗き込むと、そこには一冊の本が入っていた。取り出して表紙を見ると明らかに自分のとは違う教科書だった。不思議に思いながら誰の教科書だろうと思い裏表紙を見る、そこには夏油傑と書いてあったのだが、なんと読むか分からなかった。間違いなく同じクラスにこの漢字を書く人は居ない。自分の机に知らない人の自分が使っている物とは違う教科書が入っている理由を考えるも皆目見当もつかなかったので、ろくに会話もした事のない隣の席のクラスメイトに声をかけた。
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