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    amemoyo572

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    amemoyo572

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    2025年1月12日インテックス大阪 今夜帳の中で参加します。
    こちらはサンプルページとなっております。

    【サンプル】明日がどうなっても構わない 明日がどうなっても構わない
     

     近いからと言う理由で選んだ学校は勉強が大変だとか仲が良い友人が居て毎日楽しいとか、そう言う類いのものは全く無くて、ただ過ぎ去るだけの日々の退屈凌ぎに惰性で通うだけの場所だった。
     開始五分前に教室に入る、見慣れた変わり映えのない教室には、おはようの挨拶を交わすクラスメイトは居ない。後ろ側の扉から入り窓側から三番目、一番後ろの自分の席に一直線に向かう、席に着くと持ってきていた教科書を鞄の中から取り出し机の中に入れようとした所コツンと何かにぶつかった。机の中を覗き込むと、そこには一冊の本が入っていた。取り出して表紙を見ると明らかに自分のとは違う教科書だった。不思議に思いながら誰の教科書だろうと思い裏表紙を見る、そこには夏油傑と書いてあったのだが、なんと読むか分からなかった。間違いなく同じクラスにこの漢字を書く人は居ない。自分の机に知らない人の自分が使っている物とは違う教科書が入っている理由を考えるも皆目見当もつかなかったので、ろくに会話もした事のない隣の席のクラスメイトに声をかけた。
    「なぁ、この教科書って知ってる?」
     五条に突然話しかけられたクラスメイトは少し驚いてから返事をした。
    「見た事ないけど、中身は?」
     そう言われ教科書のページをペラペラとめくり確認してみたところ基礎の基礎とても簡単な内容の教科書であった。
    「中学のおさらいみたいな教科書」
     そう答えるとクラスメイトは閃いたかのように答えた。
    「もしかしたら夜間定時制の生徒の教科書じゃないかな?」
    「夜間定時制?」
    「そう、学校に行きながら仕事をしてる人や色々な年齢層の人が高卒の資格を取りたくて通ったり、まぁ色々だよ。ここの教室使ってたんだね、知らなかったよ。」
     五条はその時に初めてこの学校に定時制がある事とこの教室が定時制の生徒たちが使っていた事を知った。教えてくれてありがとうと礼を言い再び忘れ物の教科書の名前を見た、ものすごく綺麗と言うわけでは無いが読みやすく丁寧に書かれた文字を見てこの教科書の持ち主はきっと真面目で優しい人なんだろうな、なんて思いながら書かれた名前をそっと指でなぞり間違えて持って帰らないように彼の教科書を一番上にして机の中にしまう。教室の扉が開き担任の教師がホームルームを始めた。
     知らない事を知れるのは好きだから真面目に授業は受ける、サボったりもしない。ただ他人にあまり興味が持てない、ひとり教室で昼食を食べるのも気にならない他人にどう思われようが、どうでも良かった。だけど今日は、お昼休憩になると五条は昼食のパンと教科書と携帯電話を持ち出して騒がしい教室を後にした。
     持参したパンを食べながら自分の通う高校のホームページを開き定時制のページを探して読んだ、授業が何時に始まり何時に終わるか細かな時間割や行事の案内が書いてあった、全日制の授業と随分違うんだなと思った。帰り際にふと好奇心が湧いて机に一言『名前なんて読むの?』と書いた。



    「げとうすぐる……」
     翌朝登校した五条は机に書かれた文字を周りには聞こえないくらいの声量で読み上げた。響きが良く口馴染みが良い名前と綺麗で優しい文字、自分だけのために書かれたその文字が嬉しくて、汚さないように教科書の名前にしたように、そっと机に書かれた文字を撫でた。消してしまうのがなんだか、もったいない気がして携帯電話を取り出しカメラに収めてから消したあとに『俺は五条悟よろしく』と書いた、なんだかもったいない気がしたのだ、この縁を切ってしまうことに。日常に飽きていた五条に突如現れた非日常が心を躍らせた。
     部活動をして居ない五条はホームルームが終わると直ぐに帰宅する、だから最終下校時間が何時だとか定時制の授業の開始が何時からだとか、そう言ったことは一切知らなかった。
     翌日もメッセージの返事が書かれており『こちらこそよろしく』と書かれた文字を今回も携帯電話のカメラで撮影をして次になんと書こうかと悩む、共通の話題もなく何を書いて良いか悩んで居たらいつの間にかお昼休憩になって居た。五条は顎に指を当てると少し考えた後に足早に教室を出てトイレの個室に入り携帯電話を取り出すと定時制のホームページを開いた、先日も見たばかりなのだが何か共通の話題はないかと探すためにもう一度ページを開いたのだ、年間行事のページをスクロールしていると赤文字は全日制と合同行事と言う旨が記載されて居た。胸を躍らせながら四月の行事から確認して行くと七月に希望者で行くサマースクールそして八月に林間学校そして十月の文化祭が合同行事と記載されて居た。希望者のサマースクールと林間学校は一年生の時なのでもう終わっていた。と言うことは十月の文化祭が唯一の合同行事なのかもしれない。五条は去年の文化祭を何をして居たか、いまいち覚えて居なかった。中旬だったか下旬だったか日付も曖昧だった、そのくらい味気ない興味もない行事だったのだ。ついでに全日制の最終下校時刻を調べたら十九時と書かれて居た。
     五条は机に書かれた夏油の文字を消した後『俺この学校に定時制が有るの知らなかったんだ』と書いた。
     その後も途切れる事もなく毎日一言づつお互いに机にメッセージを書いて交換をした、五条は毎回携帯電話で夏油からのメッセージを撮影した。
     夏油とやりとりを始めて一ヶ月が経った頃には汗ばむような日が増えてきた、梅雨入りの頃にはジメジメと湿度が高く日本特有の暑さが襲う、梅雨が開ければ期末テストだ、そして期末テストが終われば修学旅行がある。行き先は国内と東南アジアから選べたが五条は仲良くもないクラスメイトと海外に行くのは気が引けたため国内を選んだ、修学旅行の時期、七月上旬には梅雨明けしている沖縄か梅雨がない北海道か、実際には蝦夷梅雨と言うものが有るがそれも六月中旬から下旬にかけての約二週間のため修学旅行に行く頃には開けているので、その二択で多数決を取り国内組は北海道に決まった、もちろん五条はどちらでも良かった。
     期末テストが終わり毎日の日課になっている机でのメッセージでのやり取りに『期末テスト終わった! 来週から三泊四日で修学旅行』と書き残した次の日に『北海道だっけ? 楽しんで、気をつけて行って帰ってきておいで』と返事が書いてあった。優しいメッセージに五条は心が温まる気がした。名前しか知らない顔も声もわからない、それなのにこんなにもメッセージのやり取りだけで温まるこの気持ちは一体なんなのだろう。



     羽田空港から新千歳空港までおよそ一時間四十分の空の旅、そこからバスで一日目の目的地、さっぽろ羊ヶ丘展望台に到着した。有名なクラーク博士像がある場所で修学旅行の定番の地になっているため他校の制服を着た生徒も沢山いる、みんな右手を挙げ同じポーズで写真撮影をしている。
    「五条くんも一緒に撮ろうよ」
     同じグループの佐藤が声をかけてくる。
     俺はいいよと声に出そうとしたけれど夏油の『楽しんで』と言うメッセージを思い出した。
    「うん、撮ろうか」
     佐藤は嬉しそうな顔をして他のグループの写真を撮ってきた先生を大きな声で呼び撮影をお願いしている。
    「はい撮るよー! 笑ってー! 三、二、一」
     カシャ、シャッターを切る電子音が聞こえた。
    「俺さ、クラーク博士の大志の誓い書きたいんだけどさ皆んなはどう?」
    「賛成!」
    「五条くんは?」
    「書いても良いかな」
    「よし! さっさと事務所に紙もらいに行こうぜ!」
     五条以外の四人は走って事務所に向かった、事務所に向かう道すがら何を書くか五条は考えていた、書くことが全く思いつかなかった。事務所に着いたら四人は真剣に誓いを書いており五条も同じテーブルに腰掛けた。鐘を鳴らしクラーク博士像の台座に五人揃って投函した。
     『夏油傑に会いに行く』五条にはこれしか思い浮かばなかった、クラーク博士に誓うようなことじゃないけれど、メーセージをやり取りしてからずっと思っていた夏油に会いたいと。お土産を買って渡すと言う口実を作って会いに行こうと誓った。
     そのあとは夏油の言う『楽しむ』を実行するためにグループの奴らとは輪を乱さない程度には仲良くした、二日目の歴史ある時計台はあまりの小ささにびっくりしたが明治からあると聞けば納得はいく。午前中は時計台やテレビ塔を見て周り午後からは自由時間だったので商店街でお土産を見たりした。甘い物しょっぱい物どっちが好みなんだろう?知らな人から貰う食べ物は食べれる?食べれない?それなら食べ物じゃない方がいい?他校の制服を着た女子達がシマエナガがかわいいと騒いでいる。確かに可愛かった、知らない顔の夏油が「悟ありがとう、すごくかわいいね」と言って笑顔で受け取り、そのまま通学鞄にマスコットを付ける所を想像した。口元が自然と綻び六種類ほどある表情から、眠そうな顔をしたまんまるなマスコットがついたキーホルダーを買った。
     


    「おはようございます、今から席替えをします」
     修学旅行から帰って来て初めての登校の日に担任が言った。忘れていたがテストが終わると席替えをするのが常だった。席替えをしたら夏油とやり取りができなくなる、ここにしか俺と夏油を繋げるものは無いのだ、新しい席は前の席からあまり離れてはいなかったが夏油は気がつくだろうか。気がついたとしてもわざわざメッセージを見るためにこの席を探すだろうか。
     ホームルームが終わり誰もいなくなったクラスで一人、五条は今だに自分の席に座っていた鞄の中から北海道で買って来たお土産をどうしようかと考えて居るのだ、直接渡そうと思ったが顔がわからない、やはり机に入れておくのが1番いいのだろうけれども、どっちの机に入れておけばいいのか悩んだ。身長に合わせて机と椅子ごと席替えをする、今は前の俺の席には身長が小さい奴が座っている身長に合わせて机も低いものを使っている座ったら直ぐに違うと気づくはずだ、だからそいつの席に『席替えした廊下から四番目の一番後ろの席』と書いて今の自分の席に『ただいま、お土産買って来た。机の中に入れてるから受け取って』そう書いて教室から出た。本当はお土産を買って来たから直接渡したいと書きたかったのに断られたらと思うと書けなかった。明日の朝、学校に行って無くなっていなかったら席替えした事に気がついていなかったら、メッセージに気が付いていなかったらと不安になったが翌日学校に来ると『お土産ありがとう、とってもかわいい、リュックに付けるね、あと私もこの席に席替えした』そう書かれていて思わず笑ってしまった。きっと夏油も身長が大きくて新しく変わった席は小さくて窮屈だったのだろう。自分が渡したものを夏油がつけてくれると思うと嬉しかった。
     五条は閃いたリュックに付けると言うことは目印ができたと言うことだ、下駄箱で待ち伏せをしたら会えるのでは無いか。
     携帯電話を開き定時制時間割を調べる。授業は十七時二十五分に開始、遅くとも二十分には教室にいるはずだから十七時に下駄箱にいれば会えそうだ。
     この学校の下駄箱は一ヶ所にしかない。五条の教室に行くには下駄箱の目の前にあるこの階段を登るしか方法はないので五条は廊下に座り夏油を待つ事にした、十七時を回り定時制の人たちと思われる私服の人たちがちらほらと登校をし始めていた、制服を着た生徒が階段に座り込んでいるせいか、すれ違う生徒達がチラリとこちらを見て行く。通り過ぎる人を一人づつ確認をしていくがシマエナガのマスコットを付けたリュックを背負った人はまだ見当たらない。もうそろそろ来なければ遅刻という時間にバタバタと走りながらリュックを背負った黒髪の身長の高い男がやって来た、シマエナガのマスコットを見る前に直感で夏油傑はこの人だと俺の魂が言った。夏油が通り過ぎる前に声をかけた。
    「お前、夏油傑?」
    「えっ? うん、そうだけどちょっと遅刻しそうなんだ! また後ででもいいかな?」
    「俺! 五条悟」
    「えっ? 机の五条くん? 会えて嬉しい! でも、ごめんまた今度でいい?」
     そう言って五条の返事を聞く前に夏油は一切振り向かずに速攻で階段を上り切った。十七時二十三分、あの速さなら間に合うだろう。リュックに付けたシマエナガが揺れていた。
     さてどうするか、また今度とは言ったが今度っていつだ?とりあえず下駄箱の場所はわかった顔もわかった、せっかく待っていたのにまともに会話をする時間はなかったもっと話したかったと言う不満な気持ち、会えて嬉しいと言う気持ちが混じって心が忙しかった。それにしても時間ギリギリすぎだろと思わず笑ってしまった。
     もう何回目になるだろうかを定時制の時間割を携帯電話で調べる、全部の授業が終わるのは二十時五十五分、最終下校時刻をとうに過ぎている時間だった。通学鞄からルーズリーフを一枚取り出し『今度っていつ? 教えて。これ俺の連絡先だから連絡ちょうだい』そう書いて夏油の下駄箱に入た。



    『夏油です。今日は話しかけてくれてありがとう、びっくりしちゃった。急いでいたので素っ気なくてごめんね。今度って言ってた話なんだけど平日の朝だったらいつでも大丈夫。八時から仕事なんだけど、どうかな?』
     夏油から連絡が来たのは二十三時を回った頃だった。メッセージを確認して直ぐに返事をした、時間差で返して返信が来ないと嫌だったから。
    『いいよ、何時?』
    『学校の近くなら七時位なら行けるよ、あまり時間取れなくて申し訳ないんだけど、それでもよければ』
    『大丈夫、職場近いところでいい。登校時間、俺のほうが遅いし家から学校近いから余裕』
    『ありがとう、助かる』
    『明日でいい?』
    『うん、また明日おやすみ』
    『おやすみ』
     
     

     朝六時、携帯電話からアーラムの騒々しい音が鳴り目が覚める、ゆっくりと起き上がり部屋のカーテンを開けると夏目前の空はすでに明るく、まだ人の気配もまばらだ。
     部屋を出て洗面所に直行し顔を洗い歯を磨いたら頭がすっきりとしていく。
     制服に着替え髪の毛をセットして学校の準備をし鞄を持って家を出た。
     夜と違い朝の空気は静かで落ち着く、あと一時間もしないうちに人出が増えてまたいつものうるさい日常がやってくるのかと思うと朝のこの時間は好きだと思った。
     夏油の指定した場所はベンチと砂場と鉄棒が有るだけの高校から近い小さな公園だった。三つあるうちのベンチの一つ日陰になり一番涼しそうなそこに腰をかける、風が吹くと心地が良かった。
     七時をまわった頃、自転車で夏油が颯爽とやって来た。俺に気づいた夏油は手を振ってベンチの近くに自転車を止めて、お待たせと言って背負っていたリュックを下ろして隣に腰掛けた。下ろしたリュックからはシマエナガのマスコットがチラリと見えた、高校生の男子にシマエナガは少し可愛すぎたかもしれない。
    「おはよう、五条くん待たせちゃったかな?」
     夏油の額からはうっすらと汗が滲んでいた、遠くから急いで駆けつけてくれたのだろうか。
    「おはよう今来た所」
     五条は鞄からハンカチを取り出して差し出したが夏油は首を左右に振りポケットから綺麗に折り畳まれたハンカチを取り出して汗を拭った。
    「ありがとう、でも人のハンカチで汗を拭くのは気が引けるよ、臭くなっちゃう」
     そう言って笑った顔は赤く色付いていた。
    「改めまして私は夏油傑、二年生だよ」
    「五条悟、俺も二年タメじゃん傑って呼んでいい?」
    「もちろん」
     夏油が手を差し出す、その手を掴んで固く握り合った。穏やかな喋り方に穏やかな声、耳心地が良くもっと聞いて居たいと思わせた。
    「なぁ、仕事何してんの?」
    「喫茶店、モーニングもランチもやってるよ自転車で十五分くらいの所にあるんだけど知ってるかな?」
     平日、週五回八時から十七時までアルバイトをして、そこから学校に行くとなると遅刻ギリギリになるのも頷ける。
     夏油は働いたお金で学校に通っていると言う、親の金でなんの苦労もなく学校に行っている自分とは大違いだった。ただその理由が中学生の時やんちゃしすぎて内申書が悪すぎて行ける高校がなくて行けるのが定時制だけで親にも自分でどうにかしろって言われちゃってね、と言うのだから驚きだ。
     やんちゃって一体どんな事をしたのだろうか、夏油との会話は波長が合うのか全くと言って良いほど飽きなかった。
    「そろそろ仕事に行かなくちゃ」
    「今度いつ会える?」
    「いつでもいいよ」
    「明日がいい」
    「分かった、じゃあまた明日」
     来た時と同じように自転車にまたがり手を振り颯爽と去っていった。
     来週から夏休みが始まる、夏休みになったら夏油の働く喫茶店へモーニングを食べに行こう、ランチでもいい、十六時頃に行って仕事が終わる時間を待ってそのまま遊びに行くのも良いかもしれない。
     時間もあるので家に一度帰ろうとしたが学校に行く準備は万端だったのでそのまま学校に行くことにした、まだ八時前だというのに朝練をしている運動部が登校しており校庭はすでに活気付いていた。
     スニーカーから上靴に履き替え教室に行くもまだ誰もいなかった、席替えをしたばかりの自分の机を確認する『お土産のお礼机の中に入れてるよ』椅子を引き机の中を確認した、そこにはチョコレートが入っていた。そう言えば朝ごはんを食べていない事に気がついた、購買が開くまでたっぷりと時間がある。チョコレートを食べて小腹を満たす事にした。



    「ねぇ、夏休みになったら傑のバイト先行っても良い?」
     翌日も同じように公園で待ち合わせをしてベンチに腰掛け過ごしている。
    「来てくれるの? うれしいな」
    「うん、行きたい。そんでさ仕事終わった後、どっか行ったりとかできる?」
    「夜は予定ないから大丈夫だよ」
     夏休みに入るまでの一週間、平日の朝に三十分程の時間を共に公園で過ごした。たわいの無い話をして盛り上がったり学校の話をしたり仕事の話を聞いたりしてあっという間に時間は過ぎていった。
     その内の一日だけ学校に夏油が来るのを下駄箱で待っていた、会えるのは一瞬だけだと分かっていても待っていたかった。相変わらず遅刻ギリギリな癖に、こちらに気づくと嬉しそうに手を振り話しかけてくれた。会いたかったから待ってたなんて言えないから図書室で勉強していたら遅くなったからついでに待っていたんだと誤魔化した。またねと挨拶を交わし相変わらず急ぎ足で夏油は去っていった。
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     開始五分前に教室に入る、見慣れた変わり映えのない教室には、おはようの挨拶を交わすクラスメイトは居ない。後ろ側の扉から入り窓側から三番目、一番後ろの自分の席に一直線に向かう、席に着くと持ってきていた教科書を鞄の中から取り出し机の中に入れようとした所コツンと何かにぶつかった。机の中を覗き込むと、そこには一冊の本が入っていた。取り出して表紙を見ると明らかに自分のとは違う教科書だった。不思議に思いながら誰の教科書だろうと思い裏表紙を見る、そこには夏油傑と書いてあったのだが、なんと読むか分からなかった。間違いなく同じクラスにこの漢字を書く人は居ない。自分の机に知らない人の自分が使っている物とは違う教科書が入っている理由を考えるも皆目見当もつかなかったので、ろくに会話もした事のない隣の席のクラスメイトに声をかけた。
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