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    kiirohitoKG

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    投稿企画のサンプル的なもの
    一章?

    「ゆびきりげんまん、な」
     差し出された立てた小指。それを不思議そうに、首を傾げてガッシュが見つめている。
    「あれ……もしかして、ゆびきり、知らないか?」
     うなずく子供に、彼は故郷でどのように過ごしていたのだろう、と。清麿は思わずにはいられなかった。

     退院を祝ってくれた金色の子供に話したいことがある、と耳打ちをしたのは数時間前の朝のこと。数日ぶりに部屋に帰れば、放り出したままだった通学鞄はきちんと机の傍に掛けられ、破れて汚れた制服はシャツだけが新品をおろして繕われてたものがハンガーに吊るされていた。
    (お袋……)
     それをしてくれたであろう母親は、今は買い物に出かけている。
    「ははのひ?」
     そして、ガッシュに話したかったのはそのことだ。
    「次の日曜がさ、ちょうどその日なんだよ」
     去年の母の日はどうしただろう。小遣いでカーネーションの一本くらいは買ったような気もするが、あの頃のことはよく思い出せない。ちょうど、周りからの態度が変わり始めた頃。はじめて受けた『定期テスト』と言うものの結果の掲示に自分は『普通』とは違うと突きつけられて……記憶に蓋をして蓋をして、ずっと考えないようにしていた。
    「オレ、ずっとお袋には迷惑かけてばっかりだったからさ……ちゃんと、祝いたくて」
     ならば、ガッシュに協力して欲しかった。
     学校に再び行けるようになったのはガッシュのおかげだし、何よりガッシュが来てから母はよく笑うようになってくれた。苦労をねぎらい感謝を示すというのなら、この子も一緒に。けれど、その日のその意図を伝えてみれば、ガッシュの表情はなぜか曇ってしまった。
    「華どの、は……」
     そうして、絞り出すようにやっと伝えられた言葉。
    「華殿は、私の本当の母上ではないのだ。私は……人間では、ないのだ」
     記憶を無くした子供に突き付けられた、残酷な現実。戦え、とは言ったけれど。
     わしゃわしゃと、その金髪を撫でまわす。細い絹糸をいじっているようで、少しくすぐったい。
    「お前は、さ。なんて言うか、もう『ウチの子』だし、それならオレのお袋だってお前の母親みたいなもんでさ。それとも……やっぱり、『本当のお母さん』の記憶もないのに、本当の母親でもないのに、オレと一緒に祝うのは嫌か?」
     『ここ』は、もうガッシュの居場所だ。しゃがみこんで、その目を覗きながら問う。髪よりも少し濃い目の金色。蜂蜜に似ている。
    「そんなわけなかろう! 華殿はだいじな人だ」
     ニッ、と笑う。
    「じゃ、決まり、な」
     もう一度、わしゃわしゃと頭を撫でる。
    「ウ、ウヌ……!」
     曇っていた金色が晴れていく。
     さて、何を協力してもらおう。ガッシュに何をしてもらったって、きっと母は喜んでくれると思うけれど。自分は……何をすればいいだろう。何をしたって今更だけれど、せめて感謝を示せればそれでいい。
    「だから、さ」
    「ヌ?」
     ガッシュが首を傾げる仕草は、動物か何かのようで微笑ましい。
    「その日まで、この事は二人の秘密、な」
     人差し指を口元に立てて、しぃーっとしてみせる。
    「!」
     子供は、秘密の共有が好きだ。大概はそれは噂話という形で破られてしまうけれど、ガッシュならば守り通してくれそうだ、と思った。……友達、なんだな。と。今更ながらに思う。大切な友人。無くしたくない友情。
    「任せてくれなのだ!」
     どん、と胸を叩きえへん、とした態度をして見せる。つけ上がらせすぎも考えものだが、これくらいは良いだろう。
    「じゃあ、約束、な」
     そうして今度は小指を立てて差し出したら、首を傾げられた。ゆびきりの、約束の仕方は知らないと。記憶はないとは言うけれど、ガッシュは魔界でゆびきりの約束をするような友達はいなかったのだろうか。こんな子に友達がいないなんてありえないのに。
     ガッシュの手を取り、ゆーびきーりげんまん、とお決まりのフレーズを口ずさむ。小さな小さな小指。この手にどれだけの重たいものが乗っていると言うのだろう。少しだけ、それを手伝う事は自分にはできるだろうか。
    「ほら、お前も」
     促せば、同じフレーズを一緒に歌う。
    「はーりせーんぼーん、のーます、ゆびきった」
     何とも懐かしいことを口ずさんだ気がする。しっかりと絡めた指を振りながら離すと、ガッシュは不思議そうに自分の小さな小指を見つめている。その目が丸くて、なんだか可笑しくて。
    「のう清麿、げんまんとはなんなのだ? ハリセンボンとはあのトゲトゲした魚かの?」
     つい意地悪をしたくなってしまった。
    「約束破ったらゲンコツ一万回食らわして縫い針千本飲ますって意味だ」
     ワンブレスで説明すれば、ガーン、と効果音と共に効果線すら見えた気がする。
    「きよまろは……鬼なのだ……」
     目立たないとはいえ頭に角のある奴が何をいっているのか。
    (魔物……なんだよな)
     不思議な本を通じて発動する不思議な力。人間の世界ではあり得ない力。ガッシュには……帰る、世界がある。その世界の王を決めると言う戦い。
     魔物の子供たち同士の戦いは、ずいぶんと激しいもののようだ。今回は数日の入院程度で済んだが、本の持ち主もが狙われるというならばいずれ取り返しのつかない怪我を負うことすらあるかもしれない。
    (指の一本くらい、お前にくれてやっても良いかもな)
     ──ユビキリの由来は、その名の通り小指の先を切って遊女が愛情を示した証。指の一本くらいで彼への信頼が示せるというなら、随分と安いコストな気がした。
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    kiirohitoKG

    PROGRESS投稿企画のサンプル的なもの
    一章?
    「ゆびきりげんまん、な」
     差し出された立てた小指。それを不思議そうに、首を傾げてガッシュが見つめている。
    「あれ……もしかして、ゆびきり、知らないか?」
     うなずく子供に、彼は故郷でどのように過ごしていたのだろう、と。清麿は思わずにはいられなかった。

     退院を祝ってくれた金色の子供に話したいことがある、と耳打ちをしたのは数時間前の朝のこと。数日ぶりに部屋に帰れば、放り出したままだった通学鞄はきちんと机の傍に掛けられ、破れて汚れた制服はシャツだけが新品をおろして繕われてたものがハンガーに吊るされていた。
    (お袋……)
     それをしてくれたであろう母親は、今は買い物に出かけている。
    「ははのひ?」
     そして、ガッシュに話したかったのはそのことだ。
    「次の日曜がさ、ちょうどその日なんだよ」
     去年の母の日はどうしただろう。小遣いでカーネーションの一本くらいは買ったような気もするが、あの頃のことはよく思い出せない。ちょうど、周りからの態度が変わり始めた頃。はじめて受けた『定期テスト』と言うものの結果の掲示に自分は『普通』とは違うと突きつけられて……記憶に蓋をして蓋をして、ずっと考えないように 2273

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