きつねのお嫁入り寒い雪の朝だった。
かりかり、かりかり、と戸を引っ掻く音がする。
ただ、外の猟犬たちは吠えていない。
猟師は鉄砲を構えて、少しだけ戸を開ける。
細く見える銀世界の中に、きつねが行儀よく座っていた。
「ごきげんよう」
はしばみ色の綺麗な毛並みに、尻尾が何本もあるきつねであった。
「入れてくださいよ」
と、きつねは綺麗な声で言う。
「隙間風が寒いでしょう? あなた」
「まぁそりゃあ」
猟師は戸を開けて、きつねを入れた。
「にしても綺麗な白い毛並みですね。艶々でさらさら」
きつねは土間にちょこんと座って、猟師の髪を見上げる。
「神さまなのに、こんな貧相なところでお暮らしになるの?」
「神さま?」
猟師は言いながら、藁で編んだ円座を囲炉裏の前に置いた。円座以上の贅沢な品がこの家にはない。
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