雨「団子食べます?」
離は落ち着いた顔で団子の串を手にする。
「でもこれ……」
坤は首を傾げた。
「お供えだって言うんですから食べないとまずいでしょ」
村人たちに異人の兄弟だと思われて、寝る場所まで用意してくれた。
この村のヒトたちは、異人が何かも知らないようで、神仏の類いのようになってしまっている節がある。
「お前がいて助かりました。お前は侍たちとは話せてもこういう村だと話せないから助かりますよ」
坤のしどろもどろの説明のおかげで、村の者たちは異人だと信じたのである。
「酷いじゃないですか、俺をダシにつかって」
坤はむっと拗ねて、串に刺さった最初の団子をひと口齧る。桃色の団子だ。
「まあね」
離はくすくす笑う。
父の血がよく出た弟と違って私はこちらの言葉を話せる、と離は村人たちに言ったのである。
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