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    yu__2020

    物書き。パラレル物。
    B級映画と軽い海外ドラマな雰囲気になったらいいな

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    yu__2020

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    ふと思いついた頭の悪い話。
    某賭け事漫画みたいに賭け事を日常的にやっているオクタ寮という感じの設定。
    いどあずがポーカーして脱衣する謎SS

    ##愉快なオクタ

    カジノ・オクタヴィネル 名門校、と言ったところで人間と言う物は変わらない物だ。
     いやそもそも自分たちは人魚ではあるけれど。そう思いながらアズールは目の前の手札を見つめて汗を一筋流した。
     オクタヴィネル寮は基本的にサバナクローで毎度行われるらしい乱闘騒ぎも(レオナにより大抵すぐに粛正される)、寮長への熱い思い故に殴り合いに発展するとかいうポムフィオーレの乱闘騒ぎも、なんでもない日のパーティで大騒ぎするハーツラヴィルのような取り立てて何かイベントがあるわけでは無い。
     乱闘がイベントになるのは、言ってはなんだが野蛮である。
     そう思っていたが、アズールは今のこの時になって思い出していた。
     ――あった、一つだけ面倒すぎる物が……
     一年の頃からあまりにも当たり前にしていたが忘れていた。これは恐らくオクタヴィネル特有だろう。

    「なんでこうなる?」
     これで何度目か分からない、アズールの疑問へはジェイドもフロイドも答えを返さず、トントン、とテーブルを叩いた。
    「さあ、まあ良いんじゃないですか」
    「そうそう、面白いし」
     アズールの部屋で、机を引っ張って手札を持った三人は、お互いの目を睨むように見つめて乾いた笑みを浮かべた。
     フロイドは上半身何も着ていない状態で、靴下が片方無い。
     ジェイドはシャツは着ているがピアスがテーブルに置かれていた。
    「脱衣ポーカーなんて物、誰がやり始めたんです?」
    「どうやら、うちの寮生の誰かがイグニハイドに遊びに行ったそうですね。そこで脱衣まーじゃん? というものを見たとかで」
    「何ですかねまーじゃんとは」
    「なんか、東洋の方にある遊びなんだってー。四角いちっちゃい駒を使うとかで」
     お互い、カードを切って山札にカードを捨てて、テーブルにカードを伏せる。
    「では良いですか」
    「おっけー」
    「はい」
     三人はぱっとカードをテーブルに並べてお互いのカードを見つめた。
    「げ、オレ、ツーペア」
    「僕はスリーカードですね」
    「僕もツーペアですが……カードの数字がフロイドの方が大きい……」
     うぐ、と呻くアズールに、ジェイドとフロイドがにやぁと微笑んだ。
    「では、最下位はアズールですね」
    「ほらぁ、早く脱ぎなよアズール」
    「ぐ、お前達……面白がって!」
     アズールは決められた順番が書かれた紙を見下ろして恨めしげに眺め、シャツに手を掛けた。

     

     元々、オクタヴィネルの談話室にはルーレット台やトランプ類などのテーブルゲームがそれなりに充実していた。これはハーツラヴィルやイグニハイドとはまた別で、座学が得意なオクタヴィネルの生徒達が寮の中で殴り合いなどをする代わりに賭け事で決着を付けていたことが理由だった。勿論、自己責任のモットーの通り、ありとあらゆるイカサマは禁止されておらず、ただしそれを見抜かれてしまえば問答無用で見抜いた方が勝ちという特殊ルールまで出来ていた。
     寮長のアズールが運ゲーを毛嫌いする事から、この傾向は更に強くなっていて、はっきり言ってしまうとオクタヴィネルの一年生はまず真っ先に洗礼を浴びる羽目になっていた。サバナクローなどとは違うが、ここもまた独自の弱肉強食の世界だった。
     その日、ラウンジの業務を終えた三人は、寮生達が最近やっているという、罰ゲーム付きのゲームの話を聞いてしまった。
     話を聞いているうちにジェイドとフロイドの顔が徐々に面白い物知った! という顔に変化していくのを、アズールは見逃さなかった。
     これは絶対面倒な事になる。昔から培ってきたアズールの対ウツボアラートがチカチカと注意を促し始めていた。
    「……で、では僕はまだ雑務がありますので皆さんお疲れ様」
     逃げるように立ち去ろうとしたアズールの両腕を掴んで、ジェイドとフロイドはにこやかに微笑んだ。
    「まあまあ、アズール」
    「面白い話せっかく聞いたんだからさぁ」

    「一緒に遊ぼう?」
    「一緒に遊びましょう?」


     ――……あそこで乗らなければ良かったんじゃ無いのか? でも、僕が勝てばシフト交互に対応する、とフロイドまで言い切っていたし……
     結局その条件にのって、アズールは三人で地獄の脱衣ポーカー大会をすることになっていた。
     それぞれ、眼鏡とピアス、上半身はシャツとネクタイ、下半身は靴下、パンツ、下着、ベルトで個数を揃え、三人はゲームを始めた。
     罵り合い、腹の探り合い、ありとあらゆる思いつく限りのイカサマの牽制をし、笑顔のまま足下では蹴り合うあまりにも醜いそのゲームを、既に数回、アズールもジェイドもフロイドも、それぞれ勝って負けて、服を脱いでいっていた。

     ――現時点で、僕の今の負け分でアイテムは二個マイナス……。ジェイドはまだアイテムマイナス一、フロイドはマイナス三……。尊厳を無くさないためにも、これ以上は負けられない……
     アズールは眼鏡を押さえて位置を直しながら、にっと笑みを浮かべて二人を睨み付けた。
    「ふ、まあ最終的に勝つのは僕です! お前達の服、全部僕が剥いでやりますとも」
    「おやおや、威勢が良いですねぇアズール。さすがは我らオクタヴィネルの寮長。ですが、僕だって負けませんよ」
    「あはは、アズールすげー乗り気じゃん」
     やったぁ、とニコニコ喜ぶフロイドは、どうやら単純に遊んでいるのが楽しいのかカードを切り始めて
    「じゃ、次オレがディーラーねぇ」
     カードを配り始めたフロイドに、ジェイドはお願いしますね、と声をかけた。

     何度目かのゲームを続け、お互い接戦の末、遂にその時が来た。
    「ああまた負けたー!」
     フロイドがカードをテーブルにばらまき思わず頭を抱えた。
    「これでフロイドは脱落ですね」
    「しょうがねーなー」
     フロイドはぽりぽり頭を掻いてからおもむろに下着に手を掛け、思わずアズールがうわっと悲鳴を上げた。
    「ちょっと待てフロイド。いい、別に良い。脱がなくて良い! もう最後の一枚ってなったのは分かっているだろう」
    「えーなんで? ここは誠意見せないとさぁ。アズール負けたときに困るじゃん」
     下着を手に、平然と仁王立ちするフロイドにアズールは思わず頭を抱え
    「おい! まるで僕が負けるのが確定みたいな言い方をするな! 僕が勝つに決まっているだろう! あと、勝手にその辺に寝転がるな!」
    「えー良いじゃん別に……」
     ベッドに転がりバタバタと足を振るフロイドを、アズールはシーツでも巻いておけとだけ言い、ジェイドに向き直った。
    「ふ、ふふふ。まあ良いでしょう。お前の身ぐるみ剥いでやりますとも」
     台詞は完全に子供向け番組の悪役のテンプレの如く、アズールは眼鏡を一瞬光らせ大見得を切る。ジェイドも顎に手を当て
    「ふふ、返り討ちにして差し上げますよ」
     にやりと歯をむき出しにしてお互いに微笑み、ジェイドアズールはカードを手に取った。


    「こ、今度こそ! 僕の勝ちですよ! フォーカード!」
    「残念ですが僕の勝ちです。ストレートフラッシュ」
     出されたカードに思わずアズールは内心頭を抱えて叫んだ。
     お互い追いつ追われつで続けたゲームはいよいよ佳境で、アズールもジェイドも脱げる物はそろそろ無くなってきていた。
     連続で負け越して一気に服を剥ぎ取られたアズールは、だん、とテーブルを叩いて思わず舌打ちをしていた。
     ――馬鹿な! ここの所の役、ジェイドばかりにカードが有利な状態……! だが、シャツも何も無い状態のジェイドの腕の周りではカードを隠し持つことは出来ない! と言う事は、カード周りのイカサマでは無い、のか? 僕の手札をどうや……
     焦って汗をかくアズールを、ジェイドはニヤニヤと微笑みながら
    「さあアズール、早く」
    「……くっ!」
     アズールは立ち上がって足下に目をやった。既に残っているのは下着、ズボン、眼鏡くらいである。アズールはボタンを外してズボンを脱いで、皺にならないようにとベッドに置こうと振り返り、寝転がっているフロイドに目が行った。
    「――!」
     まさか、そうなのか?
     ふと浮かんだ考えに、アズールは思わず声を上げそうになり、慌てて平静さを装った。
    「なあにアズール。そろそろおしまい?」
    「く、随分余裕ですねフロイド」
    「まあねぇ」
     面白がってニヤニヤと笑うフロイドに、アズールはふんと首を振って席について、配られたカードに視線を落とした。
    「……どうしましたアズール? 棄権しますか?」
    「僕が? まさか。素っ裸で泣いてるお前を見下ろしてやりますよ」
    「楽しみですねぇふふふ」
     余裕の表情を見せ始めたジェイドに、アズールは顔を引きつらせて、カードを山札から捨てた。
    「……さあ、僕の準備は良いですよ」
    「僕もこれで」
     カードを伏せ、二人は同時に場に出した。
    「……スリーカード」
    「フルハウス。僕の勝ちですね」
    「……くそ」
     アズールは眼鏡を取って、机の端においた。次の勝負はジェイドがツーペアで負け、ジェイドがズボンを脱いで、お互い最後の一枚の状態で椅子に座った。
    「ラスト?」
    「ええ。どっちが勝つか、ですね」
    「勿論、勝のは僕ですよ」
     アズールはそう言って不敵に笑い、ジェイドはおやおや、と面白がるようにアズールを見つめた。
     カードを配り、手札を捨て、お互いの準備が整うと、二人はテーブルの上にカードを伏せて並べた。
    「……ジェイド。お前からどうぞ」
    「……え? そうですか? では」
     ジェイドの手がカードをひっくり返す。
    「フルハウス……ですね」
    「ええ。さあアズールも」
    「……良いでしょう」
     アズールは伏せていたカードの端を起こし、パタパタとカードがひっくり返る。その役を見て、思わずジェイドが声を上げる。
    「……フォーカード?」
    「ええ、何を驚いているんですか二人とも。僕は勝つといったんですよ?」
     パンツ一丁で腕を組み、椅子にふんぞり返るその姿はどこか締まりが無いが、アズールは気にせずにやりと笑った。ジェイドは、手で口元を押さえて
    「……ええ、そう、でしたね」
     と、信じられないという顔でアズールを見つめた。
    「ふふ、気付いていなかったと思ったんですか? 後ろでゴロゴロしていたフロイドが、僕の手札をチェックしていたことくらい、気付いていましたよ」
    「あれ、いつの間にバレた?」
    「ズボンを脱いでベッドに置いたときですよ。興味を無くしたならお前はそもそもゴロゴロ寝ているか、スマホでも弄っているでしょう。でも、振り返った時、お前は僕の方を眺めていた。それに、飽きたとも、つまらない、とも口にしないでじっと黙って寝転がっていた。まるで僕がお前のほうに意識を向けないように、とでもね」
    「……ふふ、なるほど。さすがはアズール、と言ったところですね」
    「どうせお前達の事です。細かいジェスチャーや何かの動作を暗号の要領で伝える術があるのでしょう」
    「まあねぇ。あると便利だから」
     起き上がったフロイドは、大きく背伸びをしてアズールに腕を回した。
    「お前達がそうやっているのが分かれば、僕は騙された振りをしたまましばらくゲームを続け、さりげなくカードの配布をコントロールしてしまえば良い。ふふ、使ったトランプ、新品にすればまだチャンスはありましたけどねぇ。談話室のカードは、全て僕は把握済みです。この場にある五十三枚のカード、裏面からでも僕は何のカードが覚えていますから、いくらシャッフルをしても、最終的にカードの支配は僕の手の内だ。あとはフロイドが僕の手札を読み間違えるようにちょっと手の先で誤魔化してしまえばおしまい、と言うわけですね」
    「げぇ、まさかカード全部裏面でも覚えていたわけ?」
    「当然です」
     フロイドの問いに更にふんぞり返り、アズールは答えた。
    「なるほど、最初の負けや今までの負け分は、カードを全て把握していることを気付かれないように、僕の手元のカードを全部アズールがコントロールしている、という事実を誤魔化す為にずっととぼけていたわけですね」
     思わずジェイドが首を振り、頭を押さえて短く笑う。
    「さすがは、アズール。ですね」
    「そうでしょう!」
     アズールは得意げに胸を反らして、ジェイドを見つめて
    「さあ、それじゃあけじめですね。フロイドはちゃんとやったんですから。勿論お前もやりますよねぇ」
     ほら脱いでみなさい、と優越感にひたりながらアズールは椅子の肘掛けに腕をかけ、首をかしげてジェイドを見つめた。
    「……ああ、そんな。アズール」
     思わず呟いてジェイドは視線を逸らし、下着に手を掛けた。
     アズールはほらほら、と意地悪な笑みを浮かべてジェイドを眺めていたが、立ち上がったジェイドは予想もしなかったことを言い放った。
    「そんな積極的なアズールは、初めてですね」

    「は……?」

     思わず、肺から抜けるような間抜けな音がアズールの口から漏れた。
    「そうだよねぇ。自分から服を脱げなんてアズールってば大胆」
    「え、いや、それはゲームの趣旨的な話で……。いやちょっと待てお前らおい!」
     明らかにまずい流れに、アズールは慌てて立ち上がろうとして、肩に手を置くフロイドと目が合った。
     ――やられたー!
     百面相するアズールをジェイドとフロイドはにこやかに微笑んで
    「優勝のアズールには、いつも以上にサービスしますよ」
    「あは、良かったねぇアズール」
    「違うだろ! 明らかにおかしいだ」
     喚いていたアズールの声が途切れ、バタバタと抗議するように振られていた手足が二人に縋る物に変わり、更に少し経つと部屋の明かりが消された。


     翌朝、明るくなった天井を眺めて、アズールは試合に勝って勝負に負けた、という何かの映画だったかの言葉を思い返していた。
     ――ギャンブル禁止令だそうかな……
     遠い目で彼はそんなことを画策し始めていた。


    (なおシフトはかっちり働いたので次の機会にまた一本釣りで賭ける模様。二回目は普通に対策取られてストレート負けして泣かされる)



    +++++++++++++++++++
    数時間で勢いで書いてしまったのであんまり突っ込んではいけない

    オクタヴィネル寮談話室は通称「カジノ・オクタヴィネル」
    慈悲の心のおかげで身を持ち崩す事もなく、自己責任と世の無常さも学べる大変素晴らしい場所。ポイントカードか少しばかりの現金、それも無ければ差し出せる対価を明示してしまえば楽しめる遊技場ですよ。ただし全ては平等。寮長であれなんであれ、負ければ同じように素寒貧。
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