5分限定サンタさん『ごめんね。日程の調整は頑張ったけど、やっぱりイブ当日は難しいかもしれない』
シオンからのメッセージにはそう書かれていた。少し迷って、クロノはスマホでメッセージを打ち込む。
『気にすんな。また別の日に一緒に過ごそう』
学業に加えて実家の経営にも携わっているのだ、外せない仕事があってもおかしくない。中学の時から知っている。
「ま、寂しいっちゃ寂しいけどな」
3年前はシオンの家が大変な状況だった。
2年前は戦いこそなくなったが受験に追われてクロノの方がまともな時間は取れなかった。
そして去年は使徒たちとの戦いに備えて、どこか緊張感が走る気が抜けない年だった。
つまりクロノもシオンも、今年が全てが解決した後の世界で初めて迎える恋人同士でのクリスマスだったのだ。
そうは言っても、クロノとてシオンの邪魔をしたいわけではない。来年もその先もまたクリスマスはやってくる。その時にまた過ごせばいい。そう納得できているはずなのに、どこか心にもやが残った。
「……」
少し考え、クロノはもう一つメッセージを打ち込んだ。
『この後電話いいか?』
12月24日、午後6時55分。
「クロノ、遅れてごめん!」
「おう、俺もついさっき来たとこ」
隅田川の近くのベンチで、クロノは白い息を吐きながらシオンを待っていた。そこに、息を切らしながらシオンが走ってきた。
「で、どれぐらいの間いられそうなんだ?」
「5分くらいかな、またすぐ会食の予定が入っていてね」
「そっか。忙しい所時間作ってくれてありがとな」
「ううん。……ああ忘れてた、クロノ、はいこれ。メリークリスマス」
シオンは小さな箱を渡す。シンプルな模様だが上品な水色の包み紙がシオンらしい。
「サンキュ、シオン。俺からも、メリークリスマス」
クロノは箱を受け取り、やはり小さな赤い紙袋をシオンに渡した。
「また今度、ゆっくり凄そうな」
「そうだね。……そろそろ行くね。クロノ」
「なに、っ」
頬に、シオンの唇が寄せられる。
「会えて嬉しかったよ。じゃあまた、っわ」
「待て」
「っちょ」
お返しとばかりに、クロノはシオンの頬を掴んで唇を奪う。勢い余って、舌も入れた。
「っふ、ぅ、ん……」
「ぅ、ふ、んん……」
外の空気は冷たいが、絡め合わせた舌は熱かった。一分ほど舌を絡めたところで、シオンがクロノを押し返す。
「っぷは、もう……」
「悪い。じゃあ、今度こそまたな」
「……ああ」
(やっぱ、会って正解だったな)
キスをした時の、驚きつつも幸せそうなシオンがクロノの目に焼き付いていた。