綺公子の甘やかし方 綺場シオンという男は、常に複数の草鞋を履いている。綺場家の御曹司として経済界で辣腕を振るうこともあれば、フェンシング選手として大きな大会に出場することもある。勿論、ヴァンガードファイターとしても一流の実力を誇っている。
常に済ました表情で、時には余裕すら感じさせる笑みを浮かべる彼を見て『天は二物を与えず』という言葉を信じたくなくなる者も多いと聞く。
しかし、綺場シオンとて人間である。
ある日。大学の講義を終えたクロノはスマホに届いたメッセージを見て眉をひそめる。遊びに行こうという友人の誘いを断り、彼はまずスーパーに向かった。
その日は朝からみっちりと商談のスケジュールが詰まっていた。その全てを終わらせ、空白の時間をようやく確保したシオンはある場所に向かっていた。
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