魅惑の黒衣「少しは集中してくれないと困るんだけど」
「わ、悪い」
「まったく。エンジェルフェザーの対策がしたいって言ったのは君なんだからね」
「わかってるよ………」
そもそものことの発端は、クロノがゲスト出演を頼まれたドラエン支部のイベントだ。偶然、そのイベントにリンも呼ばれることになっており、クロノはリンとのファイトを行うことになっていた。
折角だから、できる限りの対策はしたい。そう思って、クロノはシオンに練習相手を頼んだ。そこまではよかった。
翌日、シオンはリンのデッキを再現したデッキを持参してクロノの家にやってきた。当然、メインとなるヴァンガードは黒衣の戦慄ガウリールだ。
ところで、ガウリールといえば黒いワンピースが特徴のユニットである。ノースリーブなうえ、スカートの丈も短い。更には腕が黒い手袋で、足が同じく黒いニーハイで覆われているため意外と肌面積は少ないのだが、見えているのが肩と太股なせいか危なく見える。
そして、クロノの高いイメージ力は想像してしまった。そのガウリールにライドしたシオンの姿を。
黒衣のせいで肌の白さが際立つし、淡い金髪もきっと映える。クロノはこれまでいくら女性陣が露出度の高いユニットにライドしようとさして気にならなかった。せいぜいセクシーすぎるのは目のやり場に困るだろうなぁと思うくらいである。
が、相手が恋人のシオンであれば話が別だ。ついうっかり、ライドしたシオンをイメージしたばっかりにクロノは動揺してガードやドライブチェックが遅れ、シオンにたしなめられたのである。
「何かあったのかい?」
「え」
「集中できていないようだったから。僕にできることがあれば協力するけど」
「いや………その、別に」
「なんだいその言い方。つれない………ね…………」
「シオン?」
シオンの口が薄く開いたまま固まる。水色の瞳が視線を送る先にあるものに、クロノも目を向け、そして仰天した。
ズボンの股間にテントが張っている。
「……………………え」
「あ、いや、その…………」
「………サレンダーするね」
「わーーっ、待て待て待て!! 悪かった!! ちゃんと治めるから帰んな!!」
「いや、だって君、それ…………ファイト中に…………」
「ごめんって!!」
ファイト中に女装姿をイメージして欲情した、十割クロノに責任がある。クロノは床に頭を擦りつける勢いで謝罪した。
「…………ぇっち」
ぼそりと小さく呟かれた声に、余計に反応するのを感じる。起き上がれないクロノだった。