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    kikhimeqmoq

    はらす

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    桃綾 2024/11/21
    群馬金煌で付き合っている桃綾。キスして手を繋いで走る話。高2の夏とかそのくらい。

    #桃綾

    「電気をつけたら先生に見つかるんじゃない?怒られるよ、桃吾が」
    「あ?お前も怒られろや」
    「課題を教室に忘れたのは桃吾じゃん。俺はぁ、付き添いだし?優しいでしょ」
    「先生なんかに見つからへんし、怒られへん」
    「ホント?」
    「知らん。それにしても、この時間の教室て、ほんまに暗いな」
    なんとなく電気を点けるのが面倒で、暗い教室の中を進む。綾瀬川が脅してきたからではない。面倒だからだ、と桃吾は独り言のように繰り返した。夜の学校は消化器の赤いランプ以外に光るものがなく、窓からの明かりもない。大阪なら、外のビルや住宅やどこかしらが光っているものだが、ここは群馬だ。しかも、郊外とも言えない田舎の畑の真ん中で、窓の向こうはグラウンドと第二グラウンドと畑と田んぼが広がっている。夜はあかりのあの字もない。
    「ひっ」
    肩に誰かの手が触れた。暗闇な油断していた桃吾は咄嗟に身を屈め、いつでも相手を殴れる姿勢をとりながら、おそるおそる振り向いたが、ここには綾瀬川しかいないに決まっている。
    「ビビってんの?桃吾ってお化け屋敷苦手?」
    「ほざけ!お化け屋敷なんて怖いわけあるかい」
    「夜のトイレもいかないよね?」
    「言いがかり言うなし。俺はめっちゃ寝てんねん。ほっとけ」
    「めっちゃ寝てるって日本語として変じゃない?」
    「アクセント逆やねん。きっしょいな」
    クスクスと笑う声が聞こえる。表情はよく見えなかったが、機嫌がいいのは伝わってきた。
    まあ、夜の学校っておもろいよな。それは俺も同じや。
    ガツッ。足元がよく見えないので一歩進むごとに何かとぶつかる。机の脚だったり、椅子の脚だったり、誰かの置き靴だったり、訳の分からない荷物だったり。
    さっき踏んだやつ、グネっていう独特の感触やったけど食べもんちゃうかったやろな。
    「俺の勝ち」
    いつの間にか先を歩いていた綾瀬川が、小さな声で勝利宣言した。
    くっそ、なんでこんなしょうもないことまで得意やねん。
    一歩遅れて自席についた桃吾は、机の中に手を突っ込んだ。
    こんなに暗かったら、どれが何か分からへん。適当に上の方からいくつか持って帰るか。
    「用事済んだしもう帰るで」
    「桃吾は先に帰りなよ」
    「なんでやねん。帰るっつっとるやんけ」
    「なんだ。やっぱり一人で帰るのが怖いんだ」
    顔はよく見えないのに、綾瀬川が楽しそうなことだけはよく分かった。
    「ちゃうって言うてるやん!あほ言いな」
    なんで帰らへんねん、と文句を呟きながら桃吾は窓際の綾瀬川の方へ歩み寄る。
    「なんか、綺麗だなあとおもって」
    窓を開けて夜空を見上げ、背高のっぽはぼそりと呟いた。
    つられて桃吾も外を見上げる。夏には少ないはずの星が、空一面に瞬いていた。
    「星くらい、こっちに来てからずっと見とるやろ」
    自分だって綺麗だと思ったのに、桃吾はどうしても素直になれない。男が星を見て綺麗だの美しいだの言うてられんやろ、恥ずかしい。そんなん口にして似合うんはこいつだけや。
    野球の才能も頭の良さも背の高さも顔の良さも、人の羨む全てを持ち合わせておきながら、地上の人混みでは不器用にしか振る舞えない綾瀬川が、空の輝きに憧れるのは、当たり前のような気がした。
    「大阪って星は見えるの?」
    「アホか。見えるに決まっとるやろ」
    「東京よりすごいじゃん」
    「まあ、二、三個はかたいな」
    「うそつき。星を見つける方が大変じゃん」
    ただその声を聞いているだけで、自分も楽しい気持ちになるからだ。と内心言い訳するものの、その言い訳もしっくりとしないまま、暗い中でほんのり浮かぶ綾瀬川の輪郭を見つめていた。
    「なんでこっち見てんの、怖いんだけど」
    「いや……」
    「ちゃんと見なって。綺麗じゃん」
    桃吾を手招きする綾瀬川の瞳が光る。本当に星みたいだ、と思ったのと同時に桃吾は綾瀬川の顎を掴んでいた。
    「んっ……ふっ……」
    綾瀬川の唇を乱暴に舐め、開いた隙間から舌を滑りこませた。桃吾の性急な動きを、綾瀬川は受け入れ、させるままにした。しばらくそうして絡み合っていたが、お互いが満足した頃、自然と離れた。
    「あ……よだれ垂れてる」
    垂れた唾液は二人の間で糸となった。暗い部屋でそれは唯一のもののようにきらりと光り、直後に消えた。
    桃吾は綾瀬川の口元を自分の指で拭い、そのまま顎を掴んだ。離せない。動くと綾瀬川まで消えそうな気がした。こいつはマウンドで圧倒的な光を放つ一方で、いつか闇に紛れて消えていく気配がする。捕まえておかないと。俺がこいつをこの世に繋ぎ止めておかないと。俺の手を繋いでおかないと。
    「桃吾、星は見ないの?」
    綾瀬川のなんでもない口調に我にかえった。暗闇にのまれている。こいつはどこにもいかん。
    「せやからいつも見てるやん」
    そう、いつだって桃吾の前で輝いている。
    「そんな言い方だからモテないんじゃないの?」
    「知らんわ。言い方なんか気いつけへんくてもモテんねん」
    それだけ早口で言い捨て、桃吾は綾瀬川の手を握った。
    「帰るで」
    うん、と頷く綾瀬川の手を握り直し、指を交互にしてしっかり掴む。
    「桃吾、やっぱりお化け怖いの?」
    「ちゃうわ、お前が迷わへんように気いつかったってんのやろ」
    「うっそ。絶対怖いからでしょ」
    「やかましい。走るで」
    「ばか、こんな暗いところで走るやついないって」
    「おらんくても俺らは走るねん」
    真っ暗な廊下を手を繋ぎながら走った。
    星しか見えない道をずっと二人で走っていった。


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    kikhimeqmoq

    DONE桐智 2025/06/02
    大学生の桐智の小話。智将1年。友情出演寺門さん。
    天気予報「要くん、俺のこと好き?」
    「明日の天気は晴れですね」
    「ふーん、ほな傘はいらんか」
    そっすね、と適当な相槌を打ちながら要くんはボトルの水を飲んだ。次の練習メニューのことを考えているのか、要くんはノートを手放さない。
    「で、俺のこと好き?」
    「最高気温は三十度近いらしいんで、ちゃんと水分とった方がいいみたいです」
    分かった分かったサンキューな。
    俺が頷くと、要は少々わざとらしく、再度水を飲んだ。まあなんだ、実際、暑いんやけどな。
    要くんが壊れたアレクサみたいな答えをすることに気がついたのは、同じ大学になって三日目のことだった。何回聞いても、しれっと何事もなかったかのような真顔で天気予報を返してくるから、狂ってんのは俺の頭の方なのではないかと不安になったのも、今や懐かしい記憶だ。俺は俺のことが好きかどうか質問してるつもりやけど本当は「今日の天気なに?」って聞いてるんかもしれん俺のことが好きかどうか聞いてるつもりなんは俺だけなんかな春なのにホラー体験かよ、と混乱した俺が慌てて部室にいた寺ちゃんに「俺のこと好き?」って聞いたところ我が親友は間髪入れずに「好きに決まってるでしょ!」とハグアンドキスを授けてくれたので、おかしいのは俺の頭じゃなくて要くんの方やって確信が持てたあの日のことも忘れない。寺ちゃんありがとうさすが俺の心友。でも前から言ってるけどキスのあとに髭でゴリゴリすんのはやめといてんか。俺のお肌は羽二重餅並にやわやわやからな。頼むで。
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    MAIKING伏五で、五を喜ばせたい(意識させたい)伏

    ※書きかけのまま
    「お前らに相談がある」

    寮の自室で、伏黒はベッドに腰掛けながらいわゆるゲンドウポーズで、友人たちに話しかけた。
    友人である虎杖と釘崎は『東京のお洒落なところで山手線ゲーム』で盛り上がっていたところだったが、伏黒のただならぬ表情を見て、その手を止めた。

    呪術高専一年の生徒は、この三人のみである。
    最初は絶対に気が合わないと互いに思っていたが、三人で行動するうち、なんだかんだ馬が合うことに気付いた。

    伏黒は元来警戒心の強いタイプだったが、今では任務後にどちらともなく伏黒の部屋に集まってダラダラと三人で過ごすことも少なくない。

    「なんだよ。あらたまって」

    床の上で胡座をかいていた虎杖が、伏黒を見上げる。釘崎も椅子に足を組んで座り、「さあ話しなさい」という表情でこちらを見ている。

    もう後には引けない。急に喉が乾いて、ンンッと咳払いをした。

    「今から話すことは、友人の話なんだが」

    あ、これ知ってる。友人の話って言っておいて、本当は自分の話なやつだ。
    てか、コイツ絶対俺たち以外に友達いねぇだろ。
    虎杖と釘崎は目配せをして、心で会話する。任務で鍛えられたから連携はバッチリだ。

    「自 1386