Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    kikhimeqmoq

    はらす

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖
    POIPOI 31

    kikhimeqmoq

    ☆quiet follow

    桃綾。
    tdodワンドロライ。お題使わせていただきました。
    桃綾。「ドーナツ」「公衆電話」「修学旅行」。
    桃綾はつきあってなくて、高校同校別クラスです。修学旅行なので2年の秋とか。

    #桃綾

    爆発すんぞ修学旅行で泊まった宿に公衆電話があった。くすんだピンク色のダイヤル式電話だ。玄関棚の上に置いてあるそれが公衆電話だなんて、宿に着いた初めは全く気がつかなかった。
    気がついたのは、綾瀬川がツレと一緒になって騒いでたからだ。あいつ、なんでそんな変なものに気がつくねん。初めて見るものにホイホイ気軽に近づくなや。爆発したらどないするねん。
    俺は周りの奴と喋りながら、綾瀬川がピンクの電話を前にツレと何やら笑っているのを横目で見ていた。そうこうしているうちに綾瀬川は鞄から財布を取り出し、十円玉を摘まみだした。あいつ、使う気なんか?あほか?ほんまに爆発すんぞ?
    しかし爆発したのは綾瀬川の手元ではなく、俺の鞄の方だった。
    プルルルル。張り切って鳴り響いた俺のスマホの爆音は、担任の耳にもしっかり届いたらしい。
    「誰だ!スマホ持ち込み禁止って言っただろう?」
    「ひなでーす!」囃し立てるツレを睨みつけるも、あのデカい呼出し音をなかったことにすることもできず、仕方なく俺は担任のもとへ進み出た。
    ああ、なんで目覚まし用の音量のままにしていおいたんやろ。俺のアホ。
    ていうか、綾瀬川のやつはなんで俺の携帯を呼び出したんや。


    「桃吾、怒られた?」
    担任にこってり怒られた後、ロビーで呆けて座っていると、綾瀬川が後ろから声をかけてきた。無表情に見えるが、少し笑っているようにも見える。俺が怒っているとは思っていないらしい。まあ、そこまで怒ってへんけど。
    「スマホ没収されてもうたやん。今日のプロ野球見られへん」
    「ごめん」
    綾瀬川はやや申し訳なさそうに眉毛を下げた。一応、自分のせいだとは思っているらしい。
    「なんで、俺の番号呼び出したん?没収されろって思ったんか?」
    「いや、その」
    はい、いいえ、で答えられるはずの質問をしたのに、返事はどうも要領を得ない。
    「寮に置いてきたとでも?」
    「そこまで全然考えてなくて」
    眉尻を下げたまま、綾瀬川はもそもそと曖昧に答えた。
    「?」
    「十円入れたら、とにかく急いで電話番号を押さなきゃと思って、無意識に最初に思い出した番号を打ったら、桃吾の番号だったんだよね」
    なんでだろうね、と笑う綾瀬川にそもそも少ししか残っていなかった怒りは急速に失せていった。咄嗟に動かしたら、ということは、俺の番号が指先に染みついたっちゅうんか。怖いんか、嬉しいんか、気持ち悪いんか分からへん。いや、嬉しいっていう気持ちが混じったっていうことは、そういうことなんやろう。
    「桃吾、なんか奢ろうか?」
    「え?」
    「スマホ没収されたから」
    ああ、と考えるふりをして俯いた。じわじわと嬉しさがつのり、口元が緩んでいるのを隠したい。小さく深呼吸し、落ち着いて顔を上げた。
    「じゃあ、明日ドーナツおごれや」
    「え?そんなんでいいの?ていうか、ドーナツって何?」
    「来しなに駅前で見た名物のドーナツうまそうやったから。同じ名物なら饅頭よりドーナツの方が腹は膨れるし」
    「ラーメンでも食わせろって言うのかと思った」
    「ラーメンはラーメンで食わせえや」
    「そんなお金なんて無いって知ってるくせに」
    「ほな、なんでラーメンとか言いだしてん」
    「謝罪の?気持ち?」
    「なんで疑問形やねん。ちゃんと九十度のお辞儀して謝れや」
    突っ込むにしてもアホらしくなってきた。半笑いで脇腹に手刀をかますと、こいつはするりと俺を躱した。
    「ええ、九十度のお辞儀ははないって。桃吾だってそんなに怒ってないじゃん」
    綾瀬川は笑って走っていった。「じゃあね。明日、ドーナツね。俺も食べるから」と言い残して。
    なんや、怒ってへんって伝わってるんやんか。なんなんや。まあええ、ドーナツ奢ってもらえるし。
    綾瀬川が奢ってくれると思うと、明日と言わず、いま猛烈に食いたくなってきた。
    はあ、明日、しぬほど食うたる。あいつが食べてる途中でも、横から口出して半分齧りついたんねん。






    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤💘💘💘💘💘💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    kikhimeqmoq

    DONEチヒ隊 2025/01/19 チヒロと巻墨

    61話、カフェでランチを食べた後に京都へ向かうチヒロと巻墨の小話。63話で巻墨の名前が判明して嬉しくて書いた。チヒ隊かどうかは微妙な感じで特に何も起こらない。
    豪快に京都へ「車で行くんですか?電車の方が早くないですか」
    店を出てさっそく駅に向かおうとした千紘を巻墨は引き止め、車で移動すると告げた。
    「車の方が安全だろ。装備もしてあるしな」
    隊長は得意げに説明した。斜めに切り上がった口端が車への自信を表していた。可愛らしいな、と千紘は感じたが黙っていた。それより装備ってなんだ?
    「装備とら?」
    「武器や小道具が車に隠してあるんですよ」
    炭がすかさず説明した。
    「へえ」
    さすが忍びだ、と千紘は感心した。その評価が伝わったのか、隊長は満足げに頷いた。こくり。
    「じゃあ、車を出しますから、ちょっと場所を開けてください」
    炭の依頼に千紘は振り返った。駐車場はどこだろう。きょろきょろと周囲を見渡す千紘の肩を、杢は長い腕で掴んだ。最初は肩を強く掴まれたが、すぐに柔らかく抱きかかえられ、店の脇へそっと移動させられる。杢の腕も身体も熊のように大きく、肩を抱かれただけなのに、千紘は全身を包まれた気持ちになった。なんだか温かい。杢と千紘は、歳はさほど離れていないと聞いた。実際、杢は隊長や炭よりも若者らしい軽い発言が多い。しかし、なんとはなしに信頼したくなる安定感が杢にはあった。身体の大きさだけではない。ほどよい雑さと丁寧さのバランスが好ましあのだと思う。
    2715

    related works

    recommended works

    uncimorimori12

    PAST夏五の匂わせしかねえ伏五
    無名のファイル「恵ってサッパリした食べ物好きって言ってたよね」
     扉を開けると、そこには日常生活ではそうそう拝まない白金に光り輝く頭髪を靡かせた男がいた。睫毛の奥まで純白をたもつ男は、ビニール袋を伏黒に差し出すと我もの顔で靴を脱ぎ捨て家へと上がる。押しつけられた袋の中身を確認すれば、小分けにされた生蕎麦がいくつか入っていた。つゆやネギなども同封されたその袋は、どうやら茹でて皿に盛れば完成という代物のようだ。
    「おそばですか」
    「うん、三人で一緒に食べようー。って、津美紀は?」
    「ちょうど買い物に出ています。さっき出たばかりです」
    「そっか、入れ違っちゃったなあ」
     五条はそういうと座布団を枕にし畳の上にゴロリと寝転がる。以前はなかったえんじ色の座布団は、津美紀が「五条さんが来るから」と言って買い揃えたものである。それまでは来客はおろか姉弟ふたりのみしか存在することの無かった六畳一間は、五条が訪ねるようになってから少々物が増えた。食器類は三人分揃えるようになったし、客用の布団なんてものも用意されている。べつに五条はそんな頻繁に来るわけでもなく、よくて月に二回顔をみせる程度なのだが、窮屈になったアパートは以前より風通しがよくなったように感じる。
    2035