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    kikhimeqmoq

    はらす

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    桃綾。
    tdodワンドロライ。お題使わせていただきました。
    桃綾。「ドーナツ」「公衆電話」「修学旅行」。
    桃綾はつきあってなくて、高校同校別クラスです。修学旅行なので2年の秋とか。

    #桃綾

    爆発すんぞ修学旅行で泊まった宿に公衆電話があった。くすんだピンク色のダイヤル式電話だ。玄関棚の上に置いてあるそれが公衆電話だなんて、宿に着いた初めは全く気がつかなかった。
    気がついたのは、綾瀬川がツレと一緒になって騒いでたからだ。あいつ、なんでそんな変なものに気がつくねん。初めて見るものにホイホイ気軽に近づくなや。爆発したらどないするねん。
    俺は周りの奴と喋りながら、綾瀬川がピンクの電話を前にツレと何やら笑っているのを横目で見ていた。そうこうしているうちに綾瀬川は鞄から財布を取り出し、十円玉を摘まみだした。あいつ、使う気なんか?あほか?ほんまに爆発すんぞ?
    しかし爆発したのは綾瀬川の手元ではなく、俺の鞄の方だった。
    プルルルル。張り切って鳴り響いた俺のスマホの爆音は、担任の耳にもしっかり届いたらしい。
    「誰だ!スマホ持ち込み禁止って言っただろう?」
    「ひなでーす!」囃し立てるツレを睨みつけるも、あのデカい呼出し音をなかったことにすることもできず、仕方なく俺は担任のもとへ進み出た。
    ああ、なんで目覚まし用の音量のままにしていおいたんやろ。俺のアホ。
    ていうか、綾瀬川のやつはなんで俺の携帯を呼び出したんや。


    「桃吾、怒られた?」
    担任にこってり怒られた後、ロビーで呆けて座っていると、綾瀬川が後ろから声をかけてきた。無表情に見えるが、少し笑っているようにも見える。俺が怒っているとは思っていないらしい。まあ、そこまで怒ってへんけど。
    「スマホ没収されてもうたやん。今日のプロ野球見られへん」
    「ごめん」
    綾瀬川はやや申し訳なさそうに眉毛を下げた。一応、自分のせいだとは思っているらしい。
    「なんで、俺の番号呼び出したん?没収されろって思ったんか?」
    「いや、その」
    はい、いいえ、で答えられるはずの質問をしたのに、返事はどうも要領を得ない。
    「寮に置いてきたとでも?」
    「そこまで全然考えてなくて」
    眉尻を下げたまま、綾瀬川はもそもそと曖昧に答えた。
    「?」
    「十円入れたら、とにかく急いで電話番号を押さなきゃと思って、無意識に最初に思い出した番号を打ったら、桃吾の番号だったんだよね」
    なんでだろうね、と笑う綾瀬川にそもそも少ししか残っていなかった怒りは急速に失せていった。咄嗟に動かしたら、ということは、俺の番号が指先に染みついたっちゅうんか。怖いんか、嬉しいんか、気持ち悪いんか分からへん。いや、嬉しいっていう気持ちが混じったっていうことは、そういうことなんやろう。
    「桃吾、なんか奢ろうか?」
    「え?」
    「スマホ没収されたから」
    ああ、と考えるふりをして俯いた。じわじわと嬉しさがつのり、口元が緩んでいるのを隠したい。小さく深呼吸し、落ち着いて顔を上げた。
    「じゃあ、明日ドーナツおごれや」
    「え?そんなんでいいの?ていうか、ドーナツって何?」
    「来しなに駅前で見た名物のドーナツうまそうやったから。同じ名物なら饅頭よりドーナツの方が腹は膨れるし」
    「ラーメンでも食わせろって言うのかと思った」
    「ラーメンはラーメンで食わせえや」
    「そんなお金なんて無いって知ってるくせに」
    「ほな、なんでラーメンとか言いだしてん」
    「謝罪の?気持ち?」
    「なんで疑問形やねん。ちゃんと九十度のお辞儀して謝れや」
    突っ込むにしてもアホらしくなってきた。半笑いで脇腹に手刀をかますと、こいつはするりと俺を躱した。
    「ええ、九十度のお辞儀ははないって。桃吾だってそんなに怒ってないじゃん」
    綾瀬川は笑って走っていった。「じゃあね。明日、ドーナツね。俺も食べるから」と言い残して。
    なんや、怒ってへんって伝わってるんやんか。なんなんや。まあええ、ドーナツ奢ってもらえるし。
    綾瀬川が奢ってくれると思うと、明日と言わず、いま猛烈に食いたくなってきた。
    はあ、明日、しぬほど食うたる。あいつが食べてる途中でも、横から口出して半分齧りついたんねん。






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    nnn

    DOODLEとーじにやられた時の傷が残ってたら、な伏五ちゃん
    どんなに痕残したり傷つけたりしても結局反転で消えちゃうのに、ただ一つ痕残せたのがめぐの父親であるとーじってめちゃめちゃエモくないですか
    額に落ちる前髪を鬱陶しげにかき上げたときに見えたのは、陶器のように艶やかな肌に似つかわしくない瘢痕だった。
    彫刻か何かのように、一つの狂いすら許さないものと思っていた彼の身体に残る歪な傷跡は伏黒に鮮烈な印象を与えた。

    穏やかでない色を潜めた深緑の瞳に気付かない訳もなく、刺すような視線を一身に浴びる五条は仕方ないと言った様子で真っ白な髪を上にやり、視線の求める先を露わにする。

    自ら求めたはずなのに、いざまじまじと見せつけられてつい目を逸らしてしまう。
    向かい合って座る伏黒のそんな様子を気にすることもなく、血の気のない指先で額を撫でながら言葉を転がし始めた。
    「もっとザクザクって刺されて、ズバーッてぶった斬られたんだけど、他は綺麗さっぱり。ここだけ残っちゃったんだよねえ。ま、初めて反転使ったのがこの時だからいきなり100パー完璧になんて無理だったのかな」
    けらけらと笑いながら口にされる、捉えようのない抽象的な擬音と不穏な言葉の羅列に、伏黒は隠すこともなく顔を顰めた。

    「どしたの恵難しい顔して。もう痛くないしただのケロイドだよ?」
    「五条先生に傷つけるなんて、よっぽどの奴ですよね」
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