Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    kikhimeqmoq

    はらす

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖
    POIPOI 31

    kikhimeqmoq

    ☆quiet follow

    2025/02/14 桐智
    バレンタイン小話。大学生で付き合っている桐智。

    #桐智

    バレンタインにチョコなんていらない「チョコないん?」
    「ないです」
    「なんでやねん。今日はバレンタインやぞ。ないのはおかしいやろ」
    「あんな体に悪いものを用意する方が、頭おかしいですよ」
    「さり気なくおかしさのレベルが上がっとんのやけど」
    「そのくらい体にも頭にも悪いってことでしょ。値段も高くて懐にも優しくない。悪徳の塊ですよね」
    「こんな日くらい甘いもん食べたってええやんか」
     じゃあ、と聞こえた気がしたが、確かめる暇はなかった。 要の口が俺の唇を塞ぎ、強引に割り込んで口ん中をめちゃくちゃに掻き回したから。
     要の舌が俺の舌に絡み、ほどけ、歯列を確認して口蓋をなぞった。強引な舌の動きと気持ちよさに唾液が溢れ、口端から垂れていった。
    「たまに思うんですけど」
     キスを始めた時と同じように唐突に要は離れ、舌で唇をぬぐい、小さな声で問いかけた。
    「ひとの唾液って甘く感じません?」
     要はこちらを伺うように首を傾げた。やばい。危険だ。そんなに可愛い仕草で、そんなに可愛いことを聞くな。恥ずかしいことを口走りそうになるやろ。
    「ほな、もう一回試すか」
     危険な台詞を漏らしたくない一心で、自分と相手の口を塞いだ。何も言わないためだけなら動かす必要なんてないのに、噛むように唇を喰み、中に侵入し、舌を翻弄して要を奥まで探るように味わった。俺も前から感じていたけど、確かにこいつの唾液は甘いと思う。夢中で求めあっている時ほど味が濃い。甘みが、感情に比例しているのか、欲望に比例しているのかは分からないけど。
    「……ぁ……つ……」
    小さく叫んだ要の声で我に返った。身を引き、要の顔を確かめると、うっとりとした表情でこちらを見つめていた。お互い黙ったまま向かい合う。要の手の甲で口元を撫でると、唇からじわりと鮮やかな朱色が滲み、ひとすじ垂れた。
    甘露に夢中になりすぎて、俺が要を噛んだらしい。
    「さっきまで甘かったのに塩っ辛いですね」
    薄く笑いながら、小さく覗かせた舌で、ぺろりと血を舐める姿が扇状的だった。
    「俺も」
    「は?」
    「俺も味見したい」
     戸惑う要の前髪を払い、顔を寄せて唇を舐めた。鉄くさく、塩辛く、ややなまぐさい。甘いだけではなく、辛く苦いところが一筋縄ではいかない男らしい気がする。要の体の芯の味がする。
    おいしい。
    思わず呟くと「吸血鬼みたい」と要が笑った。血を流しながら俺を笑うこいつが堪らない。
    「せやな。時々、血を吸わせてな」
    それだけ答え、乾き始めた残りの血を舐めとった。
     もう無いんか、と思った時に気がついた。ああ、もう、これは、こいつに植えつけられた新しい性癖やん。


     バレンタインにチョコなんていらない。血を啜るような苦くて甘いキスをができれば十分だ。










    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    kikhimeqmoq

    DONEチヒ隊 2025/01/19 チヒロと巻墨

    61話、カフェでランチを食べた後に京都へ向かうチヒロと巻墨の小話。63話で巻墨の名前が判明して嬉しくて書いた。チヒ隊かどうかは微妙な感じで特に何も起こらない。
    豪快に京都へ「車で行くんですか?電車の方が早くないですか」
    店を出てさっそく駅に向かおうとした千紘を巻墨は引き止め、車で移動すると告げた。
    「車の方が安全だろ。装備もしてあるしな」
    隊長は得意げに説明した。斜めに切り上がった口端が車への自信を表していた。可愛らしいな、と千紘は感じたが黙っていた。それより装備ってなんだ?
    「装備とら?」
    「武器や小道具が車に隠してあるんですよ」
    炭がすかさず説明した。
    「へえ」
    さすが忍びだ、と千紘は感心した。その評価が伝わったのか、隊長は満足げに頷いた。こくり。
    「じゃあ、車を出しますから、ちょっと場所を開けてください」
    炭の依頼に千紘は振り返った。駐車場はどこだろう。きょろきょろと周囲を見渡す千紘の肩を、杢は長い腕で掴んだ。最初は肩を強く掴まれたが、すぐに柔らかく抱きかかえられ、店の脇へそっと移動させられる。杢の腕も身体も熊のように大きく、肩を抱かれただけなのに、千紘は全身を包まれた気持ちになった。なんだか温かい。杢と千紘は、歳はさほど離れていないと聞いた。実際、杢は隊長や炭よりも若者らしい軽い発言が多い。しかし、なんとはなしに信頼したくなる安定感が杢にはあった。身体の大きさだけではない。ほどよい雑さと丁寧さのバランスが好ましあのだと思う。
    2715

    related works

    chrosite_10

    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
    2512