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    kikhimeqmoq

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    桐智 2024/11/11
    同じ大学で付き合ってる桐智。ポッキーの日です。

    #桐智

    ポッキーの日つんつん、と頬を突く感触がした。桐島さんと二人きりの部室だ。相手は決まっている。
    一気に振り向きたい衝動を抑え、できるだけゆっくりと横を向く。気をつけないと桐島さんは小学生でもしないような悪戯をしかけてくるから。
    あれだ。振り向くと指を突き刺してくるやつとか。
    俺が引っかかると宝くじでも当たったみたいに手を叩き、踊り、大袈裟に喜ぶ。腹がたつので俺は黙って呪いをかける。好きなパンを目の前で逃す呪いだ。
    まあいい。今日は腹立つ踊りは回避した。
    「なにしてんすか?」
    「今日はあれの日やろ」
    用心しながら振り向いた俺の目の前には、茶色の棒がふらふらと揺れていた。ほんのり甘い香りもする。どこをどうみても日本で知らない人はいない棒型チョコだった。
    「ポッキーの日でしょ?」
    「なんや、知ってるんか」
    「どんだけ阿呆だと思われてるんですか?」
    「アホは片割れやん?」
    「そうですけど」
    「君のんはアホやなくて、世間知ら……って箱をしまわんどって!これから使うんやから!」
    「使わないで、普通に食べてください」
    「いやや!せっかくやからゲームしたい!」
    叫んだ桐島さんは「んー!」と女子アイドルみたいに口を突き出した。真ん中にポッキーが挟まれている。差し出された棒を噛めということらしい。
    「なんや?ポッキーゲーム知らんの?」
    戸惑う俺に彼は問う。目が三日月になっている。こうしてゲームに慣れない俺を眺めるのが、とんでもなく楽しいらしい。
    「ほれほれ、反対側から食べていくねんで?」
    唇に挟んだポッキーを上下にぴこぴこ動かした。コミカルな動きに笑いそうになり、我慢した。笑うと彼の思う壺だ。桐島さんは甘い香りの向こうで俺の様子を窺っていた。俺を揶揄えて満足していると同時に油断しない。そういう時の綺麗で鋭い目つきが嫌いではなかった。
    「んっ!」
    ポッキーを投げ捨て、彼の唇に噛み付く。チョコとクッキーのわざとらしい香りが、あっという間にふたりの匂いに上書きされていく。舌を絡め、歯茎をなぞり、口内の柔らかいところを弄ると彼が俺の肩をグッと握った。気持ちいいんだ。俺もだけど。
    「はあ……」
    「こういうゲームで合ってました?」
    わざと首を傾げて尋ねる。彼は目を糸のように細めて笑い、俺の前髪を払った。
    「間違っとるけどな……」
    こっちの方がええな、と続いた気がしたが、お互いに口を塞いでしまったから、本当にそう言ったかは分からなかった。分かったのはキスの味が甘く苦かったことだけだ。


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    kikhimeqmoq

    DONE桐智 2025/09/29

    大学生。付き合っていない桐智が付き合いだす。学校は違いますが、ふたりとも野球をしています。ふたりで花火を見に行って、付き合い始める話。前半が桐島視点で、後半が智将視点です。
    来年もまだこの手を握っているんだろうか東京に来る前からずっと気になっていた男がいる。上手いだけではなく、曲者で、状況の隅から隅まで考えて野球をするやつだ。一緒に野球をしたら面白いやろうな。記録映像で感じた直感はその後も裏切られず、高校の練習試合でも、甲子園をかけた試合でも変わらなかった。変わらないどころか強まるばかりだ。だのに、そいつとは結局、大学生の今に至るまで同じチームになることはなかった。
    選手としての関心はいつしか個人としての関心となり、先輩後輩なので友達というのは変なのだけど、なんらかのツレになりたい気持ちが抑えられず、結果的に暇があれば連絡をして外に連れ出すようになった。野球関係なく繋がりたいといっても、結局は野球馬鹿二人がやることといえば野球くらいしかなく、出かける先といえば観戦観戦バッセン筋トレ分析会となるのが殆どだった。ついでに飯を食って帰るのが定番だ。まあなんだ。他のことをしようとしたって、例えば、そう、水族館に行くって考えてみたところで俺だってうまくイメージできないんだから今のままでいいんだろう。イルカを見た要がどんな顔でなんと言うのか興味がないわけではないのだけれど。
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    kikhimeqmoq

    DONE桐智 2025/09/08
    付き合っている大人の桐智。大人の桐智の大人の下ネタ。
    ほろよい、玩具、目を逸らす甘くもなく辛くもなくほどよい刺激の液体がスパイシーな香りを振り撒きながら喉を駆け抜けていく。三杯目としてはちょうどいい軽さだ。ほろ酔いの気まぐれでカウンターの上にある塔のオブジェを指先で弄った。このバーに要くんと来るのは五回目になるが、窓際ではなくバーテンダーのいる内側の席に座るのは初めてだ。間接照明しかない暗い店内で、隣の要くんだけがようやく分かる。黄色っぽいダウンライトに照らされ、いつもは白い要くんの頬も優しいクリーム色に染まっていた。なんか、美味しそうやな。パンケーキのみたいに柔らかく甘い気がする。本当は、硬く塩辛いことをよく知っているのに。
    カウンターのヘリには小さな塔のオブジェが並んでいる。東京タワー、エッフェル塔、スカイツリー、自由の女神、太陽の塔……。シャーペンより少し小ぶりで、丸みを帯びた形にデフォルメされ、お洒落というより可愛らしさを演出している。大人びた店内に優しいアクセントを添えていた。「かわええやん?」と要くんに言うともなく呟き、スカイツリーの先端をつついていた。
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    chrosite_10

    DOODLE桐智。
    大学生で同棲設定。ふんわり設定。
    大阪弁はふんわり。単語が下品です。
    キスの仕方なんて知らない「要クン。一年経ったし、そろそろ白状してもらうで」
     圭と秋斗が二人で暮らすアパートのダイニングキッチン。そのダイニングテーブルで圭と向かい合い、秋斗はにこやかに笑いかけた。
     テーブルには酒を注いだグラスが二つある。グラスを満たしているのは以前知り合いから譲り受けて飲んだところ、圭の反応がよかった桃の果実酒だ。今日のためにわざわざ通販で取り寄せたその酒は、圭が白状しやすいようにとの秋斗なりの気遣いと、尋問するのは多少心が痛むのでその詫びを兼ねたもの。
     とろりとしたクリーム色の酒をグラスに注いだときの圭の目は、少しばかり喜色を帯びていたが、秋斗の言葉で一気に真顔に戻った。口が引き攣らないように努力している様子さえある。圭と大学野球部で共に過ごすようになってから早三年。二人きりのときはこうして表情が表に出るようになった。圭の思考は表情に出ていなくても概ね分かるが、出ている方が秋斗の好みだ。秋斗以外は圭のこんな感情を知らないという軽い優越感が理由の一つ。あともう一つは、本人が秋斗の前だけ表情筋の動きが違うことを理解していないのがオモロ……ではなく、可愛いからだ。
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