ウィークエンドシトロンをきみと秋晴れが気持ちの良いニューミリオンの空の下。
久しぶりにオフが被ったセイジとニコは、日用品の買い出しに平日の街へ共に出かけていた。
お互い必要だった物も買い終わり、休憩がてらニコのお気に入りのオムレツが食べられるカフェで食事をする。
『セイジも食べて』とニコが一口分けてくれたチーズオムレツの味がとても美味しくて、また一緒に来ようねと約束を交わしてから店を後にした。
二人で買い物に出かけて食事をする…今まで何度も行ってきたことなのに、ニコとの休日デートだと考えると自然と心が弾んでしまう。
ぽかぽかと気持ちの良い天気も相まって、思わずスキップしたくなる気持ちをぐっと堪えたセイジは、日用品の入った紙袋を抱えて隣を歩くニコへ声をかけた。
「買い出しも終わったし、この後どうしようか?」
「夕食の材料を買いに行くには荷物が多いし、一度帰るとか。セイジは行きたい場所ないの?」
「えっ?行きたい場所、そうだな…」
もう少しだけデート気分を味わいたい気もするが、お互いに荷物を抱えたままこれ以上散策するのも少々気が引ける。
一度帰ろうか…そう口にしようとした時、不意に甘いバターの香りがセイジの鼻をくすぐった。
「……?ニコ、何かいい匂いがしない?」
「する、バターの匂い。そこのパティスリーからみたい」
「本当だ、いつの間にかパティスリーが出来たんだね!」
「おれも知らなかった、いい匂い…お腹すいてきた」
「あはは、せっかくだし覗いて行こうか?」
数メートル先の真新しい建物へ近づく。店先に飾られた木製のメニューボードには、New Openの貼り紙と共に『当店のおすすめケーキ♪』とご機嫌に装飾された紹介写真が貼られていた。
「へぇ〜、ウィークエンドシトロンだって。ニコ、食べたことある?」
「たぶん食べたことない、はじめて聞いた」
「えっと、レモン風味のしっとりと焼き上げたバターケーキで、家族や恋人など大切な人と一緒に過ごす週末に食べるお菓子だって」
メニューボードからニコの方へ顔を向けると、レモン色をしたニコの瞳が目に入り視線がぶつかった。綺麗だな、なんて思わず見惚れてしまう。
「セイジ、これ買って帰ろう」
「えっ?」
「美味しそうだから。それに、恋人と一緒に食べるお菓子なら今日のおれたちにぴったり」
「ええ!?」
ニコからの思わぬ言葉に大きな声が出てしまい、周りに人がいないか慌てて辺りを見回す。
恋人同士になったとはいえ、ニコから自分たちが恋人と明言される機会はあまりなかったため、驚きと嬉しさで自分の顔が赤くなるのを感じた。
「……?セイジ、週末じゃなくて今日が平日だから気乗りしない?」
「そんなことないよ!!ただ、ちょっと嬉しくて…そしたらケーキ買って帰って、一度お茶にしようか!」
「うん。早く買おう、セイジ」
セイジの甘々な気分を表しているかのように、甘い香りに包まれたパティスリーへ二人は足を踏み入れた。