1842でカントボーイ学校が終わって声をかけてきたツレには適当なことを言ってごまかして家への帰り路を急ぐ。途中コンビニの前を通り過ぎようとしてあいつが前に気に入っていた飲み物とお菓子を買ってもう一度走り出す。夕方よりも少し早い時間。俺みたいに学校帰りなんだろう、学生服を着ているやつらを何人も追い越していく。家にたどり着いてガラス戸に手をかければがちゃん、と音がして鍵がかかっていることに気づく。母さんもパートに出てるんだろう。玄関のすぐわきにある植木鉢の下から鍵を引っ張り出して鍵穴に刺す。玄関には兄弟揃いのローファーが一足。弟みたいにかかとを踏んでるわけでもない。ものを大事にあいつらしいなって思う。居間に買ってきたものが入ってるビニールを投げて子供部屋への階段を上がる。カバンを勉強机のとこに置いて制服をハンガーにかける。もう週末だからシャツはクリーニングに出すために部屋の端に置いておいて、部屋着のパーカーとスウェットを身に着け階段を下りた。兄弟6人に両親二人何営う大家族だから、家の中には常に人の気配がある。それなのに今は家の中はしんと静まり返っている。だって、家の中にいるのは俺とあと一人。居間に置きっぱなしだったビニールを拾い上げてさらに奥の客間に足を進める。襖を開ければ部屋の中央に敷かれた一人用の布団の中、俺の足音に気づいていたらしい兄弟が体を起こして待ち受けていた。
「寝てなくて平気なの?」
「うん。熱とかがあるわけじゃないからさ」
眉を下げたままへにゃりと笑って見せたのは2番目の兄であるカラ松。朝起きたときに体の不調を訴え、学校を休んだんだけど思っていたよりも元気そうでほっとした。それなら大丈夫かとさっき買ってきたコンビニの袋を差し出す。俺を疑うこと中を確認したカラ松は自分の好物が入っていることに気づいたのだろう、嬉しそうに笑ってありがとう、と頬を染めた。
朝、目を覚ましたら隣で眠っていたはずの兄がいなくて、けれど学校には行かないといけないから、だらだらと着替えて階段を下りたら母さんが何かひどく慌てていた。カラ松が不在なのも気になってどうしたのって聞いたらあの子は体調が悪いから今日は休むって先生に伝えてって言われて置いてきたけど正直気が気じゃなかった。家には母さんもいるってわかってたけど、隣にいないってだけでなんだか落ち着かなかった。一日中、うわの空で柳田達があつしの家でゲームするから一緒にどうだって言われたのもおそ松やチョロ松、それから二人の弟たちを押し付けて一人で帰ってきた。
柔らかそうな頬に手を伸ばす。少しだけひんやりとした肌、どうやら熱はないようで少しだけ安心した。
「そういえば、体調不良って結局なんだったの?」
「んー…何でもない、って言いたいんだけど…」
「うん」
よいしょ、とカラ松の隣に腰を下ろすとこてりと肩に頬を乗せられてドキリと胸が跳ねた。最近のカラ松は何故か俺にだけ、こうして甘えて見せることが多くなった。もちろんほかの兄弟がいる前ではやらないけど二人でお昼食べてるときとか周りに目がないときとか。何か言いたげに布団の上に置いた俺の手にゆっくりと触れてもじもじとしているところを見ると胸の奥がなんだか変になりそうになるから勘弁してほしい。
「あの、あのな?」
「うん」
「笑わないでくれよ?」
「うん?」
「僕の体、なんか、変になっちゃったみたいで…」
「体?」
顔は伏せられたままだから表情はうかがえないけれど、見える範囲をまじまじと見る。黒と白の寝間着に包まれた薄い体。運動もあんまり得意じゃないから筋肉もついてない。トド松も大概だけどこいつも風邪引いたりとかもしやすくて、ツレに巻き込まれてスポーツやらされてる俺とは違う庇護欲を駆られるっていうのかな。俺の手の上から重ねられていた手を反対の手で取って指を絡めるようにつないだ。しっとりとした手のひら。まあるい爪は白いところがないように切られているのがらしいなっていうか。体が変っていうけれど、やわらかい手のひらだっていつも通りだなって思うし、どこが変なんだろう?
「っ…ぅ、っぅ…」
真っ赤になった顔。長いまつげが涙に濡れているのに気づいて、驚いて肩を抱き寄せる。え、何?想ってたより深刻な感じなの?ど、どうしたらいいんだろう。どうしたら泣き止む?俺の手を放して、両手で顔を隠してしまったカラ松を見て少し考えてから体を離す。こんなに、泣くぐらいに不安になってるなんて思わなかった。カラ松の後ろに回って、後ろからぎゅうと抱きしめる。これなら顔も見えないし大丈夫だ。
カラ松の肩に顔を埋めて抱きしめる手に力を籠める。こんなに肩薄いんだって、六つ子で同じ体型なはずなのに少しの違いに一喜一憂して。暫くそうしていると腕の中で大人しくしていたカラ松がそっと俺の手を取った。
「ん?」
「いちまつ、」
「なぁに?」
「わ、笑わない?」
「笑わないよ」
「…嫌いに、ならない?」
「ならないってば」
「う、ん…」
後ろにいるからカラ松の顔は見えないんだけど、胸のあたりに回していた手がゆっくりと下におろされる。何だろうって思っていたらそのままズボンの中に手を誘われて思わず息をのんだ。ズボンの中は多分布団の中にいたせいだろう、しっとりと汗ばんでいる。指先に触れた柔らかい生地は兄弟揃いのブリーフだろう。そのまま、するすると下にむかって、
「ん、え?」
「っ、」
「か、カラ松?」
ブリーフのスリットの辺りに手が触れて、そのまま股座まで移動する。どう考えてもあるはずのものがない。体が変って、まさかそういうこと?え、これパンツの中どうなってんの?手を掴まれたままだけれど気にせずにそのあたりを撫でる。カラ松の体がびくびく震えるけれど気にせずに触れていれば本来タマがあるであろう位置にふっくらとした部分がある。くぃ、とそれほど強くない力で押し込んだりしているうちにじんわりと何かがしみこんできて
「っぁ、」
「っご、ごめんっ!」
慌てて手を引き抜いてカラ松の背中をまじまじと見る。どう考えてもチンコがなかった。それどころか、あれって?カラ松の耳が真っ赤に染まって、肩が震えている。でも、俺を責めるような、そんな言葉は来なくて少しだけ考えてからそうっと背中を撫でた。ぴく、と震える肩。ゆっくり、腕を前に回して肩口に顎を置いて、覗き込めば足を擦り合わせるようにしていて、ごくりと唾液を飲み込んだ。
「ねぇ、」
「っ、」
「さわって、いい…?」
どくり、どくりと鼓動が耳の奥で音を立てる。あれ、多分チンコがないだけじゃなくて、あそこだけ、女になってるんだよ、な?怖がらせないようになるべく声色を落して耳元で言えばぴくん、ぴくんと肩が跳ねて。それでも、こく、と小さく頷いたのに気づいてふぅ、と息を吐いた。
「ぅわ、すご…」
年齢=彼女いない歴、なんてまぁ学生ならありがちなんだろうけどやっぱそういう妄想をしたことは少なくはない。ただでもそれは見知らぬだれかであって兄弟じゃない。ましてや、こいつは、
薄い茂みを分け入った先にスリットのようになった部分があって多分その奥に所謂女の子の部分ってのがあるんだろうなってのが分かる。けれどゆっくり触れていく途中にあった指先で挟めるような大きさのものにかすめたときにカラ松の体が思い切りはねた。これがクリトリス、なんて声には出さないけれどクニクニと刺激すればするほどに気持ちよさそうな声が漏れて、たまらなくなってさらに刺激を続ける。
とろりとあふれた蜜を掬って、つぼみに塗りつけて根元から先に向けて擦り上げて。下着の中につっ込んだ手に添えられた手には跳ねのけるような力はない。普段の声、結構低いのにくちゅくちゅと指を動かすたびに漏れるのは甘い甘い砂糖菓子みたいな声で腹の奥にずくりと熱が溜まるのを感じる。
「ねぇ、すごいよ」
「っは、ぁっや、やぁっぅあんっ」
「こんなとろとろになるんだ…すご」
「っひ、ぃ、ちまっぁっら、め、」
「漏らしたみたいだよ…?こっちも、する?」
最初はふにゃふにゃだったのに今は随分芯を持ったそこをきゅ、とつまんでやればいやいやと首を振って俺の手に縋る。そのまま、そうっと指を滑らせて割れ目をフニフニと押し込む。