大地に告白された。咄嗟に「考えさせて」と答えてしまいその場から走って逃げてしまった。
自分もずっと好きだったのに口から出たのはまさかの保留の言葉。
大地の顔は見ていないというより見れなかった。
それから数日、教室でも部活中もなるべく普段通りにしていたつもりだけどやはり隠し切れていなかったのか周りからも心配される始末。確かに練習中のミスは多く、日向や田中にも心配された。
ちらっと大地の方を見るとしっかりと主将の顔をしていて普段とあまり変わらなかった。
「スガ、ちょっと来て」険しい顔した大地に連れられて体育館裏へとやってきた。
あぁ、流石に怒られるかな。気まずい沈黙を割くように大地が口を開いた。
「ごめん、忘れていいから」
「えっ」
「スガを困らせるつもりはなかったんだ」
すまん。と頭を下げた。どうして謝るの。思考がフリーズする。
言わなきゃ、自分も好きだと伝えなければ。心臓の音が聞こえそうなぐらいに激しく鳴る。
「先に戻るな。気まずいだろうし本当は先に帰らせてやりたいけど、今はスガがいてくれないと困るから落ち着いたら戻って来てくれ」そう、俺に告げると体育館へ戻っていく。
「待って大地ー」追いかけようと踏み出した瞬間、足がもつれて振り向いた大地の腕の中に思いっきりダイブしてしまった。結構な勢いで突っ込んでしまったせいで二人して倒れた。
「っててて…スガ、大丈夫か?!」
しっかりと受け止めてくれたおかげで問題はないが恥ずかしさで顔を上げられずにいた。
何も答えない俺に焦って顔を覗き込もうとするけど見られたくなくてグッと大地の胸に顔を埋める。
「俺ずっと、大地のこと好きだった」
やっとの思いで絞り出した声は震える。それに半応するようにドクンと大きく大地の心臓が跳ねた。
「だからっ…忘れてとかっ…いうなよぉ…」
嗚咽が涙と共にシャツへと吸い込まれていく。言った。言い切った。もうどうにでもなればいい。
俺の頭から一つ呼吸をおいた大地の声が降ってきた。
「なぁ、顔見ていいか?」
落ち着かせるように優しく背中を撫でてくれる手はまるで魔法のようにスルスルと緊張が溶けていく。
「やだ」
「なんでよ」
「俺、今すっげぇブサイクだから」
乙女かと言われるだろうが嫌なもんは嫌だ。べしょべしょに泣いてるし鼻水は出てるし男でも流石に大地と言えど見せられない。さっきの羞恥とはまた違った羞恥に苛まれる。
「じゃぁ仕方ないな」
こちょこちょこちょ。脇下をいきなりくすぐりだしたのだ。
「ちょ、やっ…大地っ!やめっ…あはははっ!」
「ほら、さっさと顔あげないとと潜り続けるからな〜」
「はぁ?!それはずるっ…んっぅ…」
抗議の声を上げた瞬間、大地の唇に塞がれていた。
「やっと顔、上げたな」
仲間を見る目とはまた違い、熱の篭った深い目をした大地が俺の目を覗き込んでくる。
またそれがかっこよくて自分の顔に熱が上がっていくのを感じた。
「もう何…ほんと、ズルい…」
きょとんとしているこの目の前の男を思いっきり殴りたくなってしまったがなんとか堪える。
でも悔しいので大地のシャツで鼻水をかんでやった。