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    yukito_usagi18

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    yukito_usagi18

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    凪って髪の毛長いよね。何でだろうね。ずっとあの長さなのかな。っていう妄想から彼の日常を考えてみたギャグ。

    #蜂乃屋凪

    凪が美容室に行かない話「凪くんって出会った頃から髪の毛長めだけど、ずっとその長さなの?」
    ある昼下がり、主任を含めた数人とリビングでまったりお茶を飲みながら過ごしている時のことだった。
    昼班の金沢土産のお菓子をつまんでいた凪は突然自分に振られた話題に驚いてビクッと肩を弾ませる。
    「ごっ、ごめんね急に!なんか気になっちゃって…」
    「ううん、ぼーっとしてた俺が悪いから。…この髪ね。そろそろ切りたいんだけど、どうにもいかなくて。」
    束ねた毛先をくるくると弄ぶ。…だいぶ長くなったな。
    「途中邪魔だから切ろうかと思ったんだけど、結べる長さになっちゃうと、もしかして結べた方が邪魔にならないかもって気づいてそのまま放置してた。でもそろそろ切ろうかな。いや、やめたほうがいいか…」
    枝毛がないか探しながら思案する。髪を切りに行くべきか、行かないべきか、それとも自分で切ってしまおうか……
    「…凪くん、もしかして美容室でなにかあったの?」
    隣に座っていた糖衣に顔を覗かれながら質問される。
    「あぁ、実は…」
    凪は最後に美容室に行った日のことを思い出しながら語り出した。

    最後に美容室に行ったのはいつだっただろうか、HAMAツアーズに入る前、いや主任に出会う前だから何ヶ月も前になりそうだ。
    前髪が目に掛かってきたため美容室に行こうと決めてお店を休みにした。自営業だし不定休にしてるからいつでもいけるのだが。
    しかしその日は特別ついていなかった日のようで、店舗兼自宅からバイクで出発して5分程で電話が鳴った。バイクを路肩に停車し電話を耳に当てると第一声から鼓膜が破れるのではないかと心配になる怒号。
    「なんで店やってないんだよ!!定休日じゃないだろ!!!」
    思わず電話を耳から離し、遠くにしてから返事をする。
    「あ…えぇと…すみません。うちは不定休で…」
    「いや!定休日は決まってただろうよ!!」
    電話の向こうの男は随分とお怒りのようだ。
    とりあえず謝って、店に戻って土下座をすれば良いだろうか…と考えていたところ、男は続けて怒りをぶつけて来る。
    「それに昨日電話で取りに行くって言っただろ!?」
    …昨日?昨日は予約を受けた覚えはないし、うちに電話すらかかってきていない。携帯にも着信履歴は残っていなかった。
    そもそも。
    「あのー、大変失礼なんですけど、お名前と何の受け取りか教えて頂いてもよろしいでしょうか…?」
    「あー?○○だよ。いつも妻が利用してるだろ!受け取りの予約はバースデーケーキだよ!」
    「バースデー、ケーキ??」
    凪の頭にはてなが浮かぶ。うちはクリーニング屋兼花屋であって、ケーキは取り扱ってない。
    バースデーケーキ、いつも妻が利用、予約。
    回らない頭をフル回転させ、もしかして、という仮説が思い浮かぶ。
    「あ、もしかして2丁目の○○さんですか?」
    「そうだけど。それがどうした。」
    食い気味にお怒りの男が返答する。この仮説が正しければそんなに怖くは無い、と思った。
    「奥さんのお母さんのお誕生日ケーキの予約ですかね?…あのー、大変失礼極まりないんですが、隣の区のケーキ屋と間違えてませんか?うちは16区のクリーニング屋兼花屋のふらわぁらんどりーなんですけど…」
    「はぁ!?」
    また鼓膜が心配になる程の声量だ。
    「は、花屋なら早く言えよ!時間が無駄だっただろ!すまなかったな!」
    プツリと電話が切れた。
    「あー、あれが噂の旦那さんか…」
    ツーツーと鳴る携帯を見つめながら凪が呟く。


    「ええ!?それで切れちゃったの!?怖い思いしたね…」
    凪の話を聞いた糖衣が心配そうな顔をしてこちらを見る。
    「大変だったね…というか、結局なんの間違いだったの?」
    主任も眉を下げながら聞いており、続きが気になるようだった。
    「あ、そうそう。あとで確認したら俺の仮説通りだったんだけどね。」
    あの男は常連の女性の旦那さんだったのだ。その日は奥さんのお母さんのお誕生日だったらしく、旦那さんが誕生日ケーキを取りに行く約束だったらしい。しかし奥さんが伝えた店は予約したケーキ屋ではなく、ふらわぁらんどりーの住所。店名を確認せずに休みの貼り紙を見て怒ってしまったらしい。
    普段怒ったりしない優しい旦那さんだが、大切にしているお義母さんのためを思って怒ってしまったらしい。後日2人揃って謝罪しに来てくれた。菓子折りまで用意してくれてこちらが申し訳なくなってしまったくらいだった。

    「本当に怖い人じゃなくて良かったねぇ」
    「まぁこれは美容室に行くまでの序の口の話なんだけど。」
    そう、この日の不幸はまだまだ終わらないのだ。

    その後バイクを発進させ美容室に向かうまでの信号には当然のように全部引っかかった。工事をしていて回り道を余儀なくされたり、何故か検問に引っかかったり。片道10分程の距離だったはずが結局1時間かかってしまった。
    まぁ何があってもいいようにと1時間早めに出たので到着したのは予約ぴったりの時間だったのだが。

    店の中に入ってからも大変だった。主に美容師さんたちが。凪は正直座っているだけだったのでそんなに不幸には見舞われなかった…と思う。
    まず入店するための自動ドアが開かない。目の前でジャンプをしても手を振っても、回ってみても開かない。中の美容師さんが気づいてくれなかったら永遠に入れないところだった。
    平日の昼間ということでお客さんは凪以外おらず、スタッフも美容師さんとアシスタントの2人であった。
    まず席に案内され、髪型の希望を聞かれた。特にこだわりはないため少し短く、とだけ伝える。
    シャンプー台に案内してもらうために美容師さんが椅子を回転させようとした時、ガコッという音がした。椅子を動かそうとしても動かない。何故か故障してしまった。とりあえず椅子は動かさずに立ち上がり移動する。
    シャンプー台に着いてアシスタントさんが頭にお湯をかけてくれる。気持ちいい…と癒されていたところ、ふしゅっ、ふしゅっ「あれ、あれ?」という空気の音と困ったような声が。
    「ごめんなさい、シャンプー切れちゃってて新しいの準備しますねっ」
    アシスタントさんがその場を離れて新しいボトルを持ってきたようだ。
    戻ってきてシャンプーを無事に終え、さっぱりした所で鏡の前に戻ってくる。先程の隣の席に。
    前髪と襟足を軽く切ってもらいもう少しで終わりそう、という時。
    「いたっ!」
    担当してくれていた美容師さんがハサミを落とした。どうしたのかと鏡越しに見ると左の指から結構な量の出血。手が滑って落としかけたハサミが反対の手をスパッと切ってしまったようだった。アシスタントさんが慌てて駆け寄ると、凪の切られた髪の毛に滑って盛大に転んでしまった。
    凪もとにかくどうにかしようと振り返ろうとするがケープがかけられたままで身動きが取りづらい。
    その間に「すみません!血止めてきます!」と美容師さんとアシスタントさんは裏に行ってしまった。
    美容室にポツンと残された凪。先程の喧騒が嘘のように静かだった。
    そこにガラガラっという扉を力強く開ける音。
    「この髪どうしてくれるのかしら!」
    店内に響くヒステリックな女性の声。
    「ええ…」
    凪のどうしようもない呟きが落ちる。
    女性の声を聞いて出てきたのはアシスタントさん。女性は酷くお怒りで支離滅裂な説明をしているが、まとめると大体こんな感じ。
    昨日お店でパーマをかけてもらった。仕上がりは良かったけど今朝起きたらパンチパーマのように全てがぐるぐるになってしまっていた。どうにもならない、やり直せ!というものだ。しかも別のお店でやってもらったもの。
    アシスタントさんはあわあわしながら「当店ではできかねます…」「そのミスはうちじゃないので…」などと返しているが女性はヒートアップしていく。
    あぁ、うちにもこんなお客さん前に来たな…と思いながら凪が立ち上がる。ついでにケープが背もたれにひっかかって転ぶ。
    それでも女性の元に行き、「あのー、」と声をかけた。
    「第三者のまっったく関係ない俺が間に入るのはとても恐縮なんですけど、昨日このお店に来たんですか?」
    「違うわよ!」
    「わーお、じゃあどこの美容室で?」
    「16区のところよ!」
    「さらにわーお、うちの区じゃないですか。あ、自己紹介が遅れました。16区の観光区長をしています。蜂乃屋凪です。名刺名刺…あ、ショルダーの中だからないや…」
    名刺を探していたらアシスタントさんが俺の荷物を持ってきてくれた。
    「あ、ありがとうございます。えっと…はい、観光区長の名刺と俺の店ふらわぁらんどりぃの方の名刺…名刺なのか?それとサービス券。とりあえず、どうぞ。」
    「ど、どうも…?」
    「とにかく昨日行ったお店に連絡してみましょうか?あそこなら店長さん知ってるから。あと16区の方にも今度来てくれる用事があったらうちの店来てください。洗濯はまかせて。お花も売ってるし店主とのおしゃべりもできる。」
    「わ、わかったわ。お店の方に連絡してちょうだい」
    女性は少し落ち着きを取り戻してスマホで連絡をする凪を見ていた。その後は無事に美容室に経緯を伝え、そちらに向かってもらうことになったのだ。



    「えぇ…その女性の方、さすがに理不尽すぎじゃ…」
    主任が若干引いている。
    「うちの店にもごく稀にそんな人が来るから慣れてるよ。その方もパニックになって近くのあの美容室に駆け込んできただけらしいから。」
    「凪くんが寛容すぎるよ…幾ら不幸体質で慣れているとはいえ、心が広すぎるよ…!」
    糖衣はなぜか涙ぐんでいる。彼の隣を陣取っている琉衣の視線が痛いからさすがに泣かないで欲しい…



    その後無事に止血を終えた美容師さんも戻ってきて、最後の仕上げをしてくれた。髪もさっぱりしていい感じ。もう一度シャンプーをしてお終い、というところでまたガコッと音がした。嫌な予感はしたが、また椅子が壊れてしまったらしい。本当に申し訳ない。
    シャンプー台に移動すると突然冷水が顔にかかってしまったり、顔に掛けていたタオルがなぜか飛んでいってしまってバッチリアシスタントさんと目が合ってしまって気まずくなったりもしたが、無事にシャンプーを終えた。
    ブローは珍しく何も無く終え、鏡で髪を確認する。
    うん、さっぱりした。ありがとうございます、と伝えると店長さんである美容師さんが「今回色んなことに巻き込んでしまいご迷惑をおかけしたので…」とお代を無料にすると言ってくれた。でもこの不幸の連鎖は絶対に俺のせいだ。俺がこのお店を選んでしまったから。こちらこそご迷惑をおかけしてしまった側なのだ。
    お代をきちんと払って店を出…られなかった。
    またセンサーが反応してくれない。美容師さんが開けてくれてなんとか外に出ることができた。
    帰り道は安定に信号は全て赤で引っかかり、何度も迂回して、大きな水たまりで泥はねをしながらも怪我なく帰ることができた。
    「今日は俺だけじゃなくて色んな人を巻き込んじゃったな。」



    「っていう感じで、仕上がりは最高によかったんだけど、俺が美容室に行くことで周りを巻き込んでしまう可能性があったのでそれ以来行ってない。美容室はハサミを使うし、他にお客さんがいたら何が起こるか怖すぎるからね…」
    「「たしかに…?」」
    主任と糖衣は首を傾げながら同意した。
    「じゃあ美容室に行かないのは不幸体質のせいなんだね?」
    「まぁそういうこと。」
    「そーいうことなら!」
    「うわぁ!」
    突如としてソファの影から現れた子タろに一同は驚く。
    「子タろくん、どうしたの?」
    「ドゥードゥーよくぞ聞いてくれた!これがボクが発明した『髪の毛チョキータくん』じゃ!」
    子タろがヘルメット型の物体をどこからとも無く取り出す。
    「またよくわからねぇモノ作りやがって…」
    琉衣が呆れながらもツッコミを入れる。
    「まぁまぁ、それで子タろくん、これは何?」
    「ぎぃの話を遠くからちょーーーっと聞いてたんだが、髪の毛を切りたいのに美容室とやらには行きたくないんじゃろ?そこでコレ!被ると脳内で思い描いた髪型にカットしてくれる優れものじゃ!これでぎぃも美容室いらずっ♪」
    「ちなみに実験は?」
    「わからんか?ボクのおさげが昨日より1センチ短くなった!」
    「そんな誤差分かるわけねぇだろ!」
    発明の説明から琉衣のツッコミまで流れるようなスピードで会話が続いていく。
    「流石琉衣。またコントやろう。」
    「はぁ?何の話だボケ蜂乃屋。」
    「わお、辛辣。」
    「それで、凪くんはこれやってみるんですか?」
    暫く周りのやり取りを見ていた糖衣が話を戻してくれる。ありがたい。
    「これで美容室に行かずに誰にも迷惑をかけずに済むならやってみる価値はあるかな。」
    「おおっ!ではさっそく〜…カポッ」
    子タろが凪の頭に装置を被せる。
    するとすぐに、シャキンシャキン、ブオーという機械音がヘルメットから流れ出す。
    「おおおお、なんか髪の毛を弄り回されているのだけはわかるううううう」
    ヘルメット内で凪が叫んでいるのが反響して聞こえる。
    数分後。
    チンッ♪
    「おっ!完成じゃ〜!にゅ〜ヘアスタイルのぎぃのお披露目〜!」
    子タろがヘルメットを取る。
    「「「…………………」」」
    その場にいた全員が固まってしまった。
    「あれみんなどうしたの。まるでメデューサを見てしまって石像になってしまったかのように動かない…おーい」
    「…あははははっ♪なんじゃぎぃその髪型は!」
    最初に動きを取り戻したのは子タろ。
    「な、凪くん。どんな髪型を想像したの…?」
    「蜂乃屋…お前…はぁ、ぷっ、ははっ!」
    「えっと、凪くん、まずは、大変なことになってるよ…?」
    混乱する糖衣と爆笑する琉衣、そして慌てる主任。三者三様の反応に失敗したことを察する凪。子タろがどこからとも無く手鏡を取り出す。
    「ほれ、ぎぃ見てみろ。面白いことになっているぞ!」
    凪は手鏡を覗き込み、映った自分を見てみる。
    「これは……」
    そこには見事にパッツン前髪のおかっぱ頭になった凪の姿があった。
    「蜂乃屋っ、お前、…どんな髪型を想像したんだよ…ははっ」
    未だに腹を抱えて笑う琉衣。
    「兄さま!そんなに笑っちゃ凪くんが可哀想だよぉ!どうしてこうなっちゃったんだろう…」
    「糖衣、こんな俺を心配してくれてありがとう。ちゃんといつもの髪型より少し短いくらいを想像してたんだけど……あ」
    何かを思い出したように目を見開く凪。
    「ん?どうした?」
    「わかったかも…」
    凪はうんうんと1人頷いて納得したような顔をしているが、髪型はおかっぱである。
    「何がわかったの…?」
    「主任、心配しなくていい。この機械は正しいみたいだ。俺が被る時に一瞬『変な髪型を想像したらやってくれるのかな』なんて考えてしまったせいだ。」
    どうやら髪を切られている間はいつもの髪型を想像していたようだが、被った一瞬の邪念を切り取ってしまったようで、この髪型になったらしい。

    「おおっ!ではこれは大成功というわけじゃ!」
    「蜂乃屋の髪型は大失敗だけどな!」

    その後凪の髪の毛は再度ヘルメットを被り直し、元に戻ったとさ。
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