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    ティファのストーカー

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    CALL 864の1章です。
    カームでのエピソードです。

    1章隣の部屋の扉が閉まる音でケルタは目を覚ます。
    どうやら二人の会話はあまり良い形で終わらなかったようだ。
    扉の外から聞こえる足音がいつもより早足で近づくのを聞いてバレットと目を合わせる。
    浮かない顔で部屋に入ってきたクラウドに対してもめたのか?と聞くバレットもケルタと同じように感じているようだ。
    バレットとはセブンスヘブンの常連の頃からたびたび話をする仲でケルタはティファ以外では最もバレットとの付き合いが長い。
    七番街支柱崩落以来、何だかんだでティファの用心棒を続けているケルタはクラウドやバレット、エアリス、レッドXIIIといった他の仲間たちとも出会い、フィーラーの作り出す運命の壁を超えた先の戦いにも参加している。
    そして今はここ、カームの宿で一泊する事になっている。
    餓死寸前だった自分を救ってくれたティファの助けになりたかったケルタにとっては運命の壁も些細な問題のようだ。
    装いも新たにノースリーブのジップパーカーのフードを深く被り、ニッカポッカにブーツ、口にはマスク。
    ティファ以外の人間にはなんとなく素顔を晒すのが躊躇われたため顔が殆ど見えないような格好である。
    バレットの問いに空返事をしてふて寝するクラウドを横目で見ながらケルタは部屋を出ると無線に向かってCALL864を唱える。
    ケルタは出会って以来クラウドの言動や行動がなんとなく気に食わないでいる。
    幼馴染だというだけでティファの信頼を得ているのも気に入らない。
    今回も何を話したかはわからないがティファを傷つけた事は確かだ。
    数度のコール音の後にいつもよりどこか元気のないティファの返事が聞こえる。
    ケルタは宿の1階のラウンジにティファを呼び出す。

    少し先にカウンターに座っていたケルタの隣にティファが座ると、ケルタは目の前のボトルの酒をティファの前のグラスに注ぐ。
    すすめられるままティファは注がれた酒を飲む。
    途端に歪むティファの顔を見てケルタは声を上げて笑っている。
    注がれた酒はカームの幻の酒ようだがお世辞にも美味しいとは言えない代物だ。
    どうやらあまりに不評で売れ行きが良くなく幻になったようだ。
    騙されて少し膨れるティファに、元バーテンダーでも知らない酒があったんだな、とケルタは笑い混じりにネタバラシを始める。
    ケルタはバーテンダーにザラメを注文するとティファの前のグラスの酒に一摘みのザラメを入れて再びティファにすすめる。
    半信半疑で恐る恐る酒を口にしたティファの顔がパッと明るくなるのを見て、ケルタは満足そうに自分も同じ酒を飲む。
    セブンスヘブンを再建したらぜひこの酒も置いてみてくれ、とケルタは笑う。
    元バーテンダーの自分でも知らないような豆知識をなぜ医者であるケルタが知っているのか。
    その疑問を投げかけるとケルタは少し考えると
    「俺も若い頃にバーにつとめていたことがあるような気がする。」
    と答える。
    そこではどこにでもあるような酒だけではなく、各地の名産品も取り扱っていたようだ。
    そしてそこのオーナーと共にこの酒の美味しい飲み方を試行錯誤していたらしい。
    若い頃、という言い回しに違和感を覚えるティファ。
    確かに自分よりも歳上ではあるが、ケルタはどう見ても20代半ばだ。
    彼の言う若いとは一体いくつの事なのだろうか。
    「今も若いよね?」
    と言うティファの言葉にそうだったな、とケルタは歯切れの悪い返事をする。
    そんなやり取りをしている間にいつの間にか、霧がかかったようだった心が少し晴れていくのをティファは感じる。
    彼なりの不器用な励ましにティファは自然と微笑む。
    ティファを少しでも元気づけるケルタの作戦は成功したようだ。
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