聡狂ハジメテ物語1「好きかどうかわからんのやけど、あんたに触れたい」
その真っ直ぐな言葉に一瞬、狂児の時が止まった。
ファミレス内で他愛もない話をしていたのだ。狂児の相変わらずの軽口に淡々と、ときに切り捨てる素っ気なさで返していた聡実が急に黙り込み視線を下に落とした。どしたん?と問うた狂児に、一度視界を上げてからまた目を伏せ、すぅ、と深呼吸してから、聡実は眼鏡の奥の目を少し緊張の色で潤ませてそう言い放ったのだ。
「……ええと、んー…………触れたいて、こういう意味で?」
ぽんぽん、とテーブル越しに軽く頭を撫でる狂児の手を振り払い、聡実は目の端を少し赤くして、だから、と言葉を繰り返す。
「触れたいんです」
「触れてるやんか。 あ、なに? 昔俺にくっついてたああいう感じ? なんや聡実くん、ホームシックか〜」
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