爆切 目の前に広がる大きな湖に息を呑んだ。それは、泉の女神様がいるかもしれないと錯覚するほどの澄んだ湖だ。
靴を脱ぎ、靴下を脱ぐ。恐る恐る足先を湖へと浸した。ちゃぽん、音もなんだか優しく聞こえる。湖に両足を入れたまま、ゆっくりと腰を落とした。腕で体を支えるように後ろへと倒す。
茹だるような暑さも、頭上から遠慮なく照らしてくる太陽も、今ならすべて忘れてしまいそうだ。湖の上を走る風が優しく吹いている。頬をくすぐられている感じがした。目を閉じて耳を澄ます。
木々の葉っぱが風で踊る音や、湖で遊ぶ風の音。小鳥の囀り。目を閉じていても頭に思い浮かぶ光景にふと口元を弛めた。すぐ後ろで土を踏む音がする。これは――
「バクゴー」
「?」
振り返った先にいた爆豪は相変わらず眉間にしわを寄せていた。名前を呼んだだけで何も言わずまた目を閉じる。
水の冷たさに、暑さを和らげる風、隣には爆豪。微睡みながら指を絡めた。起きたときもまだ繋がれていたら良いと遠慮がちに力を入れた。