お題『車の中で隠れてキスをしよう』 キラ事件の解決を迎えたSPKは解散したが、ジェバンニはLーーニアとFBIの取り次ぎ役として、FBIに所属を戻した後も、普段はニアの元で働き、状況に応じてFBI本部と行ったり来たりしている。
Lの指揮の元でFBIで捜査することになった事件について、L側の捜査状況の説明をするため、ジェバンニはLの捜査本部から、FBI本部に行くことになった。
今回の会議では、ジェバンニが司会権Lの代弁者役として、Lの指示で動くFBIの精鋭メンバーの前に立つ。
ニアは参加する必要はないのだが、ジェバンニが会議の司会をするというと、興味を持ったのか、ジェバンニの車に同乗し、ついてきた。
会議に使われる部屋はコンサートホールを半分にしたくらいの広さなので、会議が始まってからひっそり入り、終わる前にひっそり出れば、ニアに気付く者もいなかった。
まあ、さすがに目立たないように、パジャマを脱がせ、スーツを着せてきたが。
会議が終わり、同僚達と会議の内容について私語を交わした後、ジェバンニは車を置いている地下の駐車場に戻った。助手席には先にニアが乗っていた。
車のドアを開けて運転席に座り、シートベルトを付けると、車で二人きりになった時はいつもそうするように、ニアはジェバンニの頬にキスをし、「お疲れ様です」と言った。ジェバンニもニアの頬にキスを返す。
ニアはキスをした後も、ジェバンニの顔をじっと見てくる。
「なんですか?」
「壇上に立って外向きの顔をしているあなたはなかなか魅力的でした」
「それはどうも……」
「少し欲情してしまいました」
ニアはそう言うと、ジェバンニの首に手を回し、顔を近付けてジェバンニを見つめてくる。
ニアの艶のある小さい唇が近付き、ジェバンニはドキドキする。
小さいニアがスーツを着ると、社会人というよりは結婚式に参列している子供みたいだし、他人から見たら滑稽でさえあるかもしれないが、普段とのギャップで、ジェバンニは充分ときめいていた。かっこいいとさえ思う。
「ニア……」
ニアの頭と腰に手を回しキスをしようとしたら、手で唇を塞がれた。
「TPOを弁えてください」
理不尽だ……。自分はところ構わずこうやって煽るくせに。
中途半端にときめかされ、焦らされ、お預けにされる車の中のキスが好きで、嫌いだ。