世紀末デイズ×風来のシレン5お別れシレン「大切な事、教わったさ。黒羽もこうして元気になった。」
天霧 葵(あまぎり あおい)教室で最初に出会い避難所まで彼の妹(黒羽ちゃん♪)を探してやった。大変な旅だったが…
「そっちこそやっとワタシの扱いに慣れたナ。」
スマホとかエーアイとか言う光る御札がいつもの生意気な事を言った。いつも通り返してやる。
「オイラの粋でいなせな魅力には敵わないさ。」
「コラこのイタチ!」
「ヒヨちゃん、怒らないであげてね…」
黒羽ちゃんが撫でてくれるからまあ良い。
珍しく弱気な事を言う(言葉を発すること自体珍しいが!)相棒に話しかけた。
「シレン、どうしたんだよ?」
そいつは少し見間違いでなければ寂しそうな眼差しをしていた。
「もし俺が居なくなっても、大丈夫か?きっと来るべくしてここへ迷い込んだのだろう…
役目が終わった様な気がする。どこか行かなければ、とそんな気がするんだ。」
保健室の中がしんと静まり返る。オイラもそんな気が最近していたのだ。
でも…オイラより先に声を出した男がいた。
「シレン!勝手にいなくなったら承知しないからな!もしどうしても…のときは伝えてくれ。」
「葵…」
そこには夏に会ったときより強い意志を持った葵がいた。
「葵…強くなったな。」
やっとシレンも笑ってくれた。
「大切な事、時にはかっぱらいをしたり腐った飯を口にしてでも死なない為に生きろ。まだ教えられることはあるな」
いつもの相棒だ。いつもの…違和感に気づく。
「おい、髪の生え際…眼も…なんか紫色になってんぞ…」
別の意味で保健室の時間が一瞬止まるが
「ウーム、ハハハ、お前も少し共鳴したのかもナ。」
「あの、シレンさん鏡見ます?」
黒羽ちゃんに小さい鏡を借りた相棒はそっと覗き込んだ。
髪の色が茜色に菫色が少し混ざっている。瞳の色は茜色からほぼ菫色に変化していた。
ヒヨが言うにはオモイカネに共鳴した子供がアルビノ、白銀の子となる場合があるそうだ。
実際に見てきたがまさか。
「えっでも色が少し変わるだけというのは?」
「そこまではワカラン」
「でも俺のオモイカネが刺さった方の眼もあの時から変わっていない」
今のところ直ちに体に障ることはないらしい。
「まーイメチェンだと思え」
ヒヨはそう締め括った。
フフッと笑う声が聞こえた。滅多に表情を変えないアイツ。
「この先どんな運命が有ってもやっていける気がした。」
もうそこに弱気な風は無い。ああいつもの相棒だ。
どうかこのひとときがずっとじゃないのはわかっている。あともう少しだけ続くように。
終わり