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    byakugun26

    @byakugun26
    留文などなど小話を投稿予定です。

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    ハロウィン留文

    #留文
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    #小説
    novel

    はっぴーハロウィン🎃「なんて恰好をしとるんだ、お前は!」
     学園長の突然の思い付きで催されることになったハロウィンパーティーで、各組で仮装をすることになった訳だが、文次郎は目の前の男の装いを視界に捉えるなり、声を張り上げてしまった。
     犬猿の仲である留三郎の仮装を見やれば、包帯を身に纏っただけの姿で恥ずかし気もなく歩いている。見慣れた男が包帯に包まれ、これまたよく見慣れた格好になっていた。今は怪我は無いようだが、いつもならこの包帯に見合うほどの重傷を負い、伊作に看病されている姿を何度も目にしている。
     だが、文次郎が指摘したいのはそこではない。文次郎からすれば、包帯の下の柔い肌でさえ、よく見慣れたものなのだ。それが今では包帯一枚のみで隠され、やけにその体の線を強調させている。鍛えられた体と引き締まった腰つきが包帯によって更に顕著に現れ、文次郎に嫌な汗をかかせてきた。
     ――目の前の体を見るだけで、昨晩のことさえも思い出してしまいそうで……。
     昨晩だけではない。夜が訪れる度に肌を重ねては、覆い被さってくる男の姿が脳裏にちらつき、目の前の男と一致してしまえば、文次郎の身体にカッと火が灯る。
    「なんだよ文次郎」
    「そ、そんな卑猥な恰好でうろつくな! これでも着てろ!」
     自分が何を口走っているのかわからず、身に纏っていた吸血鬼を象徴する外套を外し、包帯だらけの男に被せてしまった。この包帯の下には、昨晩自分が残してしまった爪痕や吸い跡がまざまざと残されてしまっている。この男の淫靡な体もさることながら、昨晩の出来事をこの体を通じて誰かに悟られてしまうのではないかと思い、文次郎はひどく狼狽した。
    「なにすんだよ、バカもんじ! 卑猥とはなんだ卑猥とは!!」
    「う、うるさい、このバカ留が! だいたいなぁ、前に俺には露出が多いと散々文句を言っていやがったくせに、お前だって人のこと言えねぇじゃねぇか!」
    「なんだと! お前のメイド姿や女装は開けすぎなんだよ!! 誰が見てるかわかんねぇんだから気をつけろって言ったんだ! それなのにそのデコ!! 誰かにちゅうされたらどうすんだ! 誘ってやがるのか!!」
    「そんなことを考えるのはお前しかいねぇんだよ!!」
     動揺を隠すように不満を口にしてみれば、とんでもない文句で更に返されてしまった。どれだけ自分が他者を誘惑しているのかわかっていない、と以前この男に言われたことがあるが、その台詞をそっくりそのまま返してしまいたい衝動に駆られる。
     この包帯の下には、いくつもの傷が刻まれている。文次郎と過ごした時が刻まれている。まざまざと、どこまでも、色濃いほどに。
     ――そんな体を誰にも見せるじゃねぇよ。
     せっかく整えた髪も、取っ組み合いの喧嘩となっては乱れてしまい、衣装も着崩れてしまう。身も心もいつも乱してくるこの男の事が気に喰わなくて、文次郎は今日もまた拳を交えるのだった。
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    byakugun26

    PAST留文の日ー!!おめでとうございますー!!新作は何もないので過去に書いたお話をのせて留文をうみだした気になるやつです
    劣情を宿した男 ――何をされるかわかっていた筈なのに、体はピクリとも動かなかった。
     いつもの喧嘩。いつもの取っ組み合い。胸倉を掴まれたのを感じた途端、咄嗟に文次郎も留三郎のそれを掴んだ事は覚えている。空いていた片手に力を込め、整った顔立ちの男の頬へと、それを喰らわせてやろうと拳を作ったことも鮮明だった。だが、留三郎の闘志に燃えているであろう瞳を見つめた瞬間、文次郎の本能は警鐘を鳴らす。
     闘志と共に見えるのは、別の色が紛れ込んだそれ。普段はこの男の奥深くに眠っているというのに、今では文次郎の目にもはっきりと映りこんでしまい、嫌でも自覚してしまう。
     ――色欲に似た、熱を孕んだ瞳。
     この男の眼から時々チラつくその色に、文次郎は気付いていた。日々の喧嘩や勝負の時、己を真っすぐ見据えている際に現れる淡い劣情。じりじりと文次郎の身を焦がし、その上、心にさえ軽く火傷を負わせようとしてくる熱烈な視線に気付かない訳がない。だが、いくらその色を垣間見たとしても、文次郎は一度も指摘することはなかった。嫌な眼だと思いながらも、ましてやこの男の感情を知りながらも、文次郎は気付かないふりをした。いずれは忍びとなる身。道を違える身。更には男同士であり、犬猿の間柄だ。この男から向けられた感情を知ったところで、文次郎にはどうすることもできない。
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