僕の初恋を君に捧ぐ「……でもよ先生、本当にいいのか?初めての相手がオレなんかで。先生なら他にいくらでも選べんじゃねえの?」
募る想いを告げた村雨を、しかし獅子神は何処か思い詰めたような瞳で見ていた。
「私が欲しいのはあなただと言っている。あなたしかいらないし望まない。恐らくあなたの知っている『だれか』の中でも拙いとは思うが」
自分から口に出しておきながら、酷く苦いものを含んでしまった時のように、村雨が眉間に深く皺を寄せる。
負けず嫌いのこの男が、こんな表情をするのを獅子神は初めて見た。
「負担を強いてしまうかもしれない。それでもどうか、私があなたに触れることを許して欲しい」
赤い双眸は、決して揺らぐことなく真っ直ぐに獅子神を見つめている。命懸けの勝負の最中ですら、殆ど表情を変えることのない村雨の顔に今、切実な懇願が見える。
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