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    Monday_killer14

    @Monday_killer14

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    Monday_killer14

    MOURNINGこはだい
    エロになるはずだったやつ
    「ただいまぁー」
    間延びした帰宅の声に返事はない。虎春は再度呼びかけようと息を吸ったが、口をついてでたのは大きなため息だった。
    「……ふぅ、」
    リビングに置かれた大きな柱時計。フェリクスがいつの間にか持ってきたもので歌に出てくるおじいさんの時計はコレかと思うほどの貫禄と存在感がある。22時半。アンティーク調の美しいそれが指すのは外の暗さを納得させるには十分な時間だった。
    手に持っていたカバンを置き、スカジャンを脱ぐ。凝り固まった肩を回しながら、こちらに来てめっきり二人の時間が減ってしまった恋人を想った。
    フェスのために上京して数ヶ月。仕事の事、住居の事、そしてバンドの事。運営の手回しがあるとはいえ、フェスに伴った環境の変化は皆の多忙を呼んだ。かく言う虎春も同じ保育士とはいえ場所が違えば勝手も違う、新しい職場で毎日奔走していた。慣れないことも多く、今日のように遅くまで残る日も少なくはない。そんな忙しない日々の中で、メンバー達、特に恋人でもある大門が家で待っていてくれる事、「ただいま」と言えば「おかえり」と返ってくる、ただそれだけの事がどうしようもない程の幸せとなっていた。
    1920