港町のあれこれ 大きな開港がある港町。来訪者たちを歓迎するように立ち並ぶ美しい街並み。降り注ぐ日光を反射してきらきらと光る石畳をたどると街の隅に至るまで活気にあふれていることがわかる。港には大小、用途問わず様々な船が揺れている。広場では旅芸人たちが賑やかな音楽と異国の踊りで人々を沸かせ、町にある店からは店主と客の声が漏れ聞こえていた。
そんな初めて訪れる町を物珍しく散策していると、ふと喧騒が遠くなってしまっていることに気が付く。おとなしく迷子であることを認め土地勘がないまま一人でふらついていたことを後悔した。ひとまず来た道をそのまま戻ろうと振り返った時、ふわりと花のにおいがした。港から離れすぎたためだろうか薄くなった潮風に紛れかすかに香るそれにつられ歩みを進める。しばらくして見えたのはバラの生け垣に囲まれた小さな教会だった。
2890