ししさめ学歴捏造々々々々妄想会話「センセーってやっぱ東大なん?」
「ああ。そういうあなたは横国の経営だろう?」
「えーなんでわかんの?」
「あなたは自称臆病者の慎重派だからな、株式の収益がいつから有ったかまではわからんが、本人に拘りはなくとも、周りの目と得られる知識を考慮して大学進学が最善と考えるだろう。普段の言動から出身は関東圏だから、受験や進学に一番予算を割かれない近場で一等良い国立を狙う。学部は収入に直結し顔を広げられるものが良いと考えるはずだ。」
「なるほどお見通しってわけね。でも先生、それこそ自分は医学部一直線だろうに、何で他学部にまで詳しいんだ?」
「兄貴の本命だったからな。結局滑り止めに行ったが。」
「へえ!」
「うちは確かに平均より豊かだったかもしれないが、それでも何不自由ないというわけではない。一人を医学部に進めるともう一人にまで割ける予算は無かった。兄貴が察して不満を燻らせるのも無理からぬことだ、実質、私のせいだと言っても過言ではない。」
「それは」
「慰めて欲しいわけではないから構わない。私とて彼のせいでこんな有様になっているとも言える。家族なんて良くも悪くも影響し合うものだろう。——ともかく、そういうわけで兄貴もまた国立大学の一般学部を目指したわけだ。彼は既に二度補導されていたから推薦は望めなかったしな。それだって、学費を工面するために年齢を偽って夜の店でボーイをしていたところをひっ捕まったのが一度だが。」
「あーわかるかも、進学もバイトも。ちなみにもう一度は?」
「ラブホテルから出てきたところを捕まった。」
「ブフォ」
「兄貴は手が早いんだ。良いと思ったらすぐに逃がさないよう囲いたがる。そこはあなたと違ったな。」
「褒められてんのか貶されてんのかわかんねえよ!」
「でもきちんと大切にする。一緒にいたのが当時から付き合っていた今の義姉なんだ。義姉の方は推薦が決まっていたので、兄は彼女を逃し自分だけ捕まったんだ。ああ、私がそうされたいとかいう意図はないから勘違いするなよ。」
「……わかってるよ。」
「捕まるなら一緒が良い。」
「珍しいな、口に出してくれんの」
「あなたは心配性で優しいから。警察なんて怖くないし、まだ怖くても私が半分請け負おう。」
「あ……」
彼の名と同じ雨を冠する影に未だ囚われていることを指摘され、獅子神はゆるやかなぬくもりが胸に宿るのを感じた。
「……ありがと。」
「お互い様だ。」