放課後“放課後、オレ様の家に集合”
学校から帰る仕度が終わって端末を開くと、そんな素っ気ないメッセージが入っていた。
送信時間は五分前。つまり、送った時点でもう放課後だ。しかも、時間ある?とか、そういう前置きもなく、まるで決定事項みたいに。それぞれ都合ってもんがあるんだぞ。
あいつはいつもそうだ。まぁ、今日はたまたま予定もないし、やることが無いわけではないけど、それもロアロミンに関わることだし、あいつがいるところでやった方が効率がいい。
ため息をつきながら、“わかった”とだけ返事を返した。
「ゲッタちゃん、お疲れ様」
おう、とだけ言って、ロアの向かい側のソファに座る。
「さっそくなんだけどさぁ」
「え? ロミンとウシロウは待たなくていいのか?」
そう訊くと、ロアはきょとんと首を傾げた。
「なんで? 二人は呼んでないし……っていうか、二人にだって都合ってもんがあるんだし、そんな急に呼びつけたりしないよ」
「オ、レ、は、い、い、の、か、よ!」
ムカついたので、一文字一文字、強く区切って言ってやった。
「ゲッタちゃんは来たじゃん」
ロアは動じずにしれっと言う。
「お、ま、え、なぁ〜〜〜! オレのこと、呼んだらすぐに来る飼い犬みたいに思ってんだろ!」
「まさか。ゲッタちゃんのこと、犬だとも子分ともしもべだとも思ったことないよ。そんなことよりさぁ……」
「そんなこと、って、おまえ……!」
さらに文句を言ってやろうとしたところに、目の前に端末を差し出されて遮られた。
「なんだぁ……? ロアロミンの動画のコメント欄? あ、これって……」
「そう、この前ちょっと言ったけど、軽い荒らしみたいな書き込み。さらに増えてるんだよね」
「全体に向けて注意するていでコメント出したって言ってたけど、効かなかったってことか?」
「うーん、っていうより、自覚ないみたい? ちょっと愛情表現の仕方を間違えちゃってるお姫様なんだと思う」
「……なんか、面倒だな……実害ないならほっぽっとくか?」
そう提案すると、ロアはオレの手から端末を取り上げて、なにか操作しはじめた。
「まだ実害までは至ってないんだけど……アンチの人たちが、この荒らしに気付いたっぽいんだよね」
ロアからまた、端末が差し出された。そこには、『ロアロミン、なんか荒れてんぞwww』等の書き込みが。
「これに乗じて『ロアロミンのファンは民度が低い』とか『やっぱり小学生は荒らし一つ抑えられない』みたいな方向性に持ってきたいらしい。そういうの、お姫様たちが見たら傷つくじゃん? オレ様、そういうの許せないんだよね」
端末から顔を上げると、いつになく真剣なロアと目が合った。
自分勝手で、まわりを振り回して、それですれ違うこともあるけど、本当は仲間思いで、ファン思いなやつなんだよな、こいつは。
「分かった。それで、オレは何をすればいいんだ?」
そう言ってやると、ロアはなにか楽しいことを始めるときみたいに笑った。
「さすがゲッタちゃん。匿名で無責任な発言するやつらに、その方がよっぽど幼くてカッコ悪いんだってこと、思い知らせてやろうぜ」
「よし。じゃあ、インターネットでの匿名の書き込みっていうのは、別に安全圏って訳じゃないんだってこと、そいつらに教えてやるか」