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    そうこ

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    そうこ

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    #LH1dr1wr
    お題「靴下」所要時間70分程度
    クリスマスっぽいなにかの準備をするラーヒュン。全てが捏造です。
    終始ほのぼのというか会話だけ。サンタブーツはロマン。
    全体的にゆるふわなので深く考えずにお読みいただければ幸いです。

    #ラーヒュン
    rahun
    #LH1dr1wr

    靴下 ラーハルトが帰宅すると、そこには奇妙な光景が広がっていた。
    大量の食料と思われる包みをテーブルに広げ、なぜか靴下の片方だけを持ち、包みを持ち上げては首を傾げるヒュンケルの姿だ。
    よほど集中しているのか恋人の帰宅にも気づかない様子に、少しだけ面白くないラーハルトはいつもより少し大きな声で帰宅を告げた。
    案の定予測していなかった声にヒュンケルは少し肩を跳ねさせ、驚きと申し訳なさを滲ませた顔で声の主を振り返る。
    「気づかなくてすまないラーハルト、おかえり」
    「別に気にしてない、随分と夢中のようだが何をしている?」
    明らかに気にしている声音を感じ、ヒュンケルは眉を下げつつ手の中の靴下をラーハルトに見せる。
    「もうすぐ聖誕祭だろう? お前にプレゼントを作ろうとしていたのだが、つい買いすぎて入り切らなくなったんだ」
    せいたんさい、と気の抜けた声でラーハルトは返す。その言葉で思い出したのは今はいない愛しい人々だ。
    神が生まれたことを祝う1年に一度の祭典、思えば人間である母も竜の騎士であるバランも祝い事としてささやかながら豪華な食事やプレゼントを貰ったことがある。
    人生のほとんどを魔族と過ごしたヒュンケルも知っているということは、三神を信じる者共通のイベントなのだろう、とラーハルトは納得した。
    「聖誕祭には菓子が詰まった靴下をプレゼントするのが習わしだろう? 先に靴下を買ったんだが、つい大きさを考えずあれこれ買ってしまったんだ」
    そういえばそんなような習わしがあったようなと思いつつ、ラーハルトはテーブルの上の包みを見分する。菓子だけではなくナッツなど酒の肴にできる物など、ラーハルトの好きな物や過去に食べた時美味いと言っていたものばかりだ。
    「小さい時に貰ったのが嬉しかったんだ、だからお前にも喜んでもらいたくて」
    思えばあいつは信心深かったな、と呟くヒュンケルの表情は穏やかで、過去を衒いなく話す姿と、己への想いの大きさにラーハルトは沈んでいた気分が上向くのを感じつつ、なんとなく引っかかっている疑問を投げる。
    「その気持ちだけで嬉しいさ、ありがとうヒュンケル。しかし、オレの記憶だと入れ物はブーツを模した形だったような気がしたのだが、魔族は靴下なのか?」
    そう問うた瞬間、ヒュンケルはラーハルトを見つめたまま固まった。じわじわと苦い顔になっていくヒュンケルにラーハルトは笑いを抑えることが出来なかった。
    「……しまった、菓子が入っていたのは確かにブーツだった」
    ラーハルトは分かりやすく落ち込むヒュンケルの肩を笑いながらも励ますように叩く。
    「だいぶ小さい時の記憶だろう? 曖昧になっても仕方ないさ。 その食料はそのまま倉庫にしまって靴下は本来の用途で使えば良い」
    ラーハルトの言葉にヒュンケルはハッとした顔で呟いた。
    「本来の用途……」
    「ん?」
    「そうだ、靴下は枕元に吊り下げて置くんだった!」
    思い出した、と明るい顔で言うヒュンケルを可愛いなと思いつつ、知らない知識にラーハルトは首を傾げた。
    「枕元に吊り下げるのは……聞いたことがないな」
    「そうなのか、枕元に靴下を下げておくと聖誕祭の朝にプレゼントが入っているんだ。 その記憶と混ざってしまったようだ」
    「あぁ、それは間違えるな……ふむ、朝のプレゼントならオレの記憶だともみの木の下に置かれていて靴下を吊り下げる習慣はなかったな」
    「靴下は魔族流なのだろうか? もみの木も用意したことが無いが家の中に入れるのか?」
    お互いの知識に相違があることに気づいたヒュンケルは興味津々だ。
    「家に入れるのは小さなものだがな、生命の力強さの象徴として聖誕祭の時期に飾る習わしがあるらしい。 子供の頃時期になると森に取りに行ったものだ」
    お互い過去のことをこうも穏やかに話せることにどこかくすぐったさを覚えながらも、そう思える相手が出来たことに信じていない神にこの時ばかりはラーハルトの心にも感謝の念が生まれる。
    「飾ろうか、もみの木。 そして聖誕祭は食事を豪華にしよう」
    ヒュンケルも同じ心持ちのようで、どこか浮かれた声の提案だ。
    「そうだな。 その前に、お互い認識にズレがありそうだからお前の知っている聖誕祭を教えてくれ。 どうせお互い信じる神もいないんだ、良いとこ取りしてやればいい」
    悪戯っぽく笑むラーハルトに、ヒュンケルはクスクスと笑いながら同意を返す。
    「そうだな。晩御飯を食べながらにしようか、あとは運ぶだけだから少し待っててくれ」
    「ではこの包みはオレがしまっておく、ヒュンケルは晩御飯の準備をしてくれるか?」
    「す、すまない、手間をかけて」
    「いいさ、オレの為に悩んでくれたんだろう?」
    帰宅時の不機嫌など何処にいったのかと思うほどの声色に、ヒュンケルは照れたような拗ねたような表情を浮かべ、返す言葉が出ないのかキッチンへと足早に向かっていった。
    そんな後ろ姿をラーハルトは愛おしげに見つめ、軽い足取りで一抱えもある荷物を持ち倉庫へ向かっていった。
    聖誕祭の朝には枕元の靴下ともみの木の下にプレゼントが置いてあるだろう、と二人が想像するのは難しいことではなかった。
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