語る世界、遥かなる沈黙〜第3章 律する言葉(中)〜◇
もう随分と長い間、太陽の下を歩き続けている。景色は移ろい、砂漠や森、川辺、それから見たことのない建物──何度形を変えたところで決して陽が沈むことはなく、ここが現実の空間ではないと言うことを顕著に示していた。
(博士と戦った後──駄目だ。やはり思い出せない)
カーヴェ達が来たことも博士との交戦も想定の範囲内ではあった。一番の想定外は、神の心などと言う大層なものが紛い物にせよ自分の中にあったことだ。掠れた視界の中で見たあの輝きは、確かに神々しくはあった。
「……ければ……」
元々、自分自身と両親の過去を確かめるためにあの場所を訪れたのだ。それも、ここを歩く最中に見せられた幻覚──現実の再現のおかげで図らずも目的は達している。
「帰らなければ」
はっきりと、一つの目的意識が浮かび上がってくる。職場に近くて、広くて、静かで、居心地がいい場所。
(今は──静かではないな)
あの先輩は、夜中には騒音を出すし朝の支度も騒がしい。静けさをどこかに置いてきた晩の時間には、反駁する言葉を何度も交わした。カーヴェだけではなく、草神救出作戦以来、家にはティナリやセノ、旅人──戦友と呼んでもいい人物が度々訪れては、なんてことない手土産と談笑を置いて帰っていく。
鮮やかな外を映していた窓の内側も、気が付けば外と同じように色づいていた。それでもなお、帰りたいと思う。どれだけ形を変えても平穏の本質は不変だ。
膝が笑ってしまうほどの時間が経っても、歩みは止めなかった。出口も出る方法も分からないが、同じ場所に留まり続けるだけでは状況は変わらない。
──世界樹が燃えるのを見た。知恵の葉は全て灰へと還り、枝と幹は空を赫く照らすための薪となった。
──原始胎海が、珊瑚のように白い都市を飲み込むのを見た。海に溶けるはずだった人々は罪を許され、嵐が晴れ間へと変わるように虚を実とした。
──枯れた大地で空が裂けるのを見た。太陽に等しい輝きは空に浮かぶ漆黒を切り裂き、勢いのあまり見てはいけない偽りの空の向こう、星海の輝きを世界に刹那、映し出した。
破滅と、希望と、未来と、過去と、現在と──言葉で表し得るおおよそ全ての可能性が、手の中に等しく転がっている。言葉は世界の至る所にあり、人々の中にいつでも存在した。言葉とは制約であり、限界であり、思考の最低条件でもある。故に、この世界に存在し得る事柄ならばいくらでも並べ立てることができた。だが、いくら言葉で世界を切り取ったところで自分の欲求には届かない。
「君は俺に何を見せようとしている」
一面の花畑の中に、消え入りそうな白い影を見つけた。痩身の女性──だろうか。
「せめてものお礼を、と思ったのだけれど」
慈悲深いとも冷酷とも思える声音は一度も聞いたことすらないと言うのに。懐かしいと感じる響きだった。
「あなたの体を貰い受けるのだから、私はあなたが欲しているものを見せた」
「俺がこんなものを求めていると?」
「あくなき知的好奇心──いつの時代であっても、学者とはそう言うもの」
「……満足できなかったといえば、君は体を返してくれるのか」
「残念だけれどそれはできないわ。それに、神様が与えてくれる知識はいつもちょっと足りないものでしょう?」
クスクスと笑った彼女──魔神は興味深そうにフードの下からこちらを覗き込む。灰の髪にコバルトブルーの瞳。自分と似てはいるが、そこには星々の輝きが見えた。
「言葉の根源たる魔神であっても──いや、そうであるからこそ、君には俺の願いを言い当てることはできない」
「あなたは、言葉なき混沌の時代を希求しているのかしら。私を病の元だと指差した彼らと同じように」
「超常的思考を追い求める学者の言い分に俺は賛同しない。山があるからこそ人は山の向こうの景色を希求するし、底の見えない闇があるからこそ底を見ようと覗き込む。言葉とは永遠の未知を隠し続ける──学者にとっての福音だ」
「……あなたが私の民になれたのであれば、それは喜ばしいことだったのでしょうね」
だがそうはならない。この魔神は再び実体を持ち、あまつさえ元素力すら手にして神の座へと上り詰めようとしている。この魔神が存在しようとする限り、俺は永久にここに止まったままなのだろう。
「君に一つだけ忠告しておこう。外の人間は君が思っているよりもずっと狡猾だ。それに、知識の量と知恵の程度は比例しない」
「……確かに私は愚かで、だから、この機会を逃せるほど冷静にもなれないの」
一陣の風が吹くと、舞う花弁と共に魔神は姿を消した。
──さようなら、私の小さなアルハイゼン。平穏の中で良い夢を。
◇
追跡を続けていたマハマトラから連絡が届いてから三時間程が経った。
あの後、逃走したファデュイは砂漠方面へと向かい、森と砂漠の境界付近に位置する岩山の中に拠点を築いた。その拠点というのも、話を聞く限りではカーヴェと夢境の中で訪れた研究施設の跡地であるらしい。
「それで、あの軍団に突っ込んでいくつもりか?クラクサナリデビ様の協力があるとはいえ、俺から言わせて貰えばそれは蛮勇だ」
岩山に程近いキャンプに再度集まったのはセノにティナリ、それからカーヴェと自分を合わせて四人だった。外には三十人団が待機しているが、神の目を持たない人間が魔神と相対するのは自殺行為に近いし、そもそもこんな重要事項を一般傭兵の目に触れさせることはできないだろう。
「何も馬鹿正直に戦うことはないよ。僕達はファデュイをこっそり何人かふんじばって、変装して潜入すればいい」
「いや、『こっそりふんじばる』のは無理じゃないか。俺達は何かと目立つし」
カーヴェの言う通りで、自分はファデュイに目を付けられているし、セノもカーヴェも前回の戦闘でバッチリマーキングされているはずだ。唯一、ティナリだけはまだ存在を知られていないけど、頭に生えた大きなフェネックの耳はどう見ても潜入には不向きだ。
「……じゃあそれ以外に何があるのさ。ことがことである以上、大規模な兵員は動員できないよ」
「……分かった。じゃあティナリの『こっそりふんじばる大作戦』でいこう。ただし、少し時間が欲しい」
カーヴェは外の三十人団に頼んで大きめの紙とペンを持ってきてもらい、四人が囲む座卓に広げた。黄ばんだ紙の上に直線や曲線が引かれていき、それは段々と一枚の地図に近づいていく。
「あくまで記憶の中の上に非現実的な連続性もあったから確実とはいえないが──中の構造はおおよそこんなもんだろう」
「はぁ、相変わらずの記憶力だね、君」
「マハマトラの事務員として雇いたいくらいだな」
「給料が良かったら考えるよ」
ともかく、とカーヴェは話を仕切り直した。
「決行は予定通り今日の夜更け。ファデュイの鼻っ柱を折って──あいつを助けるんだ」
──で、その結果がこれだ。
「全然予定と違うじゃないか!」
「そう?ふんじばることには変わりないと思うけどっ、と」
ティナリの弓から放たれた矢が遊撃兵の頭部へとクリーンヒットしする。セノは仕事モードに入ったのか愚痴すら言わずに黙々と周囲の兵士を処理し続けている。
「君達は!戦いなれてるかもしれないけど!僕は!建築デザイナーなんだよ!」
ヤケクソ気味に叫んでいるカーヴェも、なんだかんだと大剣で敵を薙ぎ払い続けていた。
「それって自称文弱ぐらい笑えない冗談だよ。いいじゃない、こっちの方が分かりやすくて」
「ないっ!全然!」
夜襲を仕掛けて孤立している兵士四人組を見つけたまでは良かった。ただ、周囲には炎元素による光源が散らばっていて、しかもこちらには草元素が二人もいる。そうなれば戦闘が静かに終わることもなく、盛大に森が燃えた。レンジャー長曰く、生木で湿度が高いからそう簡単には燃え広がらないということだけは救いだったけど、それ以外は全部最悪だった。夜中に煌々と燃える炎が目立たないはずもなく、『こっそりふんじばる』から『盛大にボコボコ』へと作戦名は変更を余儀なくされた。
「三人とも!こっちだよ!」
間隙を縫ってティナリは門へと接近し、重いそれを開く。呼応してセノが雷撃で道を作り、ティナリの援護を受けながら門の中へと滑り込んだ!
「ティナリ!門の上にある日々を狙え!」
「了解!」
カーヴェの指示通りに元素の矢が構造の最も脆い部分を穿てば、崩落した天井が入り口を塞いだ。危うく巻き込まれそうにはなったけど、まぁそれはそれだ。
「これで時間稼ぎにはなってくれるかな」
広間の中央にはとても見覚えのある隠し階段があり、記憶の中と同じように真っ暗な道の先に僅かに光を感じた。
「相手も元素力を扱える以上、先を急ぐのが賢明だ」
近接戦闘に長けたセノを先頭に、カーヴェをしんがりにして階段を降りていく。空っぽな廃墟は足音がよく響き、それが抱きたくもない嫌な予感を助長させている気がした。
「ここ、すごく嫌な感じだ。魔鱗病の末期患者病棟に昔行ったことがあるけど、それを思い出すね」
「同意だ。さっさと抜けてしまいたいが……道はこっちであってるんだな?カーヴェ」
「ああ。この先に実験室があって、周辺地形から推測するに、広い空間がその先にあるはずなんだ」
記憶の中では出てこなかったけど、アパーム叢林と同じ開けた空間が必ずあるはずだ、とカーヴェは考えていた。仮にここが元々は魔神の信仰の場所だったのなら、その信仰に相応しい場所を人間は作ってしまうものだから、と。
薬品の匂いが仄かに残る実験室を通りいくつかの扉を抜ければ、はたしてそれはあった。壁刻まれた無数の古代文字は高い天井まで続いており、くり抜かれたような天井の穴からステンドグラス越しに月の冷たい光が差し込む。叢林よりもずっと広い空間は「昔の人はここで神様を見ていたのかもしれない」と確かに思わせるものがある。
そして、光の中で二人の人物が床に影を投影していた。
「アルハイゼン!」
一人は中心の椅子に腰掛け穏やかに眠っていた。もう一人は、眠る人物に得体の知れない装置を取り付けている真っ只中だった。
「おや、随分と早かったな。起動まで待てないとはお前達はせっかちすぎる」
「生憎、僕は魔神にも実験にも興味がないんでね。そこの大バカを返して欲しいだけなんだ」
「建築家風情にはこの実験の意義はやはり理解できないか」
ドットーレが中心から離れると、今のアルハイゼンの姿が顕になる。最後に見た時とさほど変わりはないが、左耳にはひどく見覚えのある機器が取り付けられている。
「例えば、紛い物の神の心の出力。あるいは魔神の権能の観測。ああぁ、まだあるな。魔神が神の知識を得たらどうなるか、人の体は神の心に耐えられるのか──」
「──お前の妄言は十分だ。マハマトラとして、国内での違法な研究は看過できない」
「僕としても、友人をこれ以上危険な目に合わすわけにはいかないんだよね」
「……私を拘束する前に、周りの状況を確認してみたらどうかね」
後ろから複数の足音が近付いてくる。崩落させた入り口を開通させて、外のファデュイの兵士が入ってきたのだ。追いついてきた兵士は退路を完全に塞ぐように臨戦体制の構えでいる。前にはドットーレ、後ろには兵士──八方塞がりだ。
「ああ、もう。だから正面から突っ込むのは嫌だったんだ!」
「愚痴を言ってる場合じゃない。どう切り抜けるかを考え──」
──なんだ?
セノの戸惑いの声が聞こえる。元素視覚に切り替えようとして、一瞬だけ見えた元素力の奔流に目を開いていられなかった。それは根を伸ばすように地面を這っていき、兵士たちを絡め取ったかと思うと霧散した。
「──人同士で相争うことはこの世の摂理に反する行いだ」
酷く聞き覚えのある声が響く。
ファデュイの兵士は怪我一つない。それなのに、彼らは一様に武器を取り落とすと呆然とお互いの顔を見合っていた。
「え、なに。どう言うこと?」
「攻撃、じゃないよな……」
ドットーレは光の中からすでに姿を消しており、残されたアルハイゼンはゆらりと立ち上がる。その背には七つの葉を模した光る円環が浮かんでいる。
「不完全ながらも──これが魔神の権能というわけか」
後ろで見物を決め込んでいたドットーレは実験結果を確認するように淡々と呟く。
「言葉は元よりお前から生まれたものだったか。ならば奪うことも容易いというわけだな」
「他人事と思っているようだが、自らを賢者と偽る態度とこれまでの行動──その名と共に俺は知っているぞ、ドットーレ」
ドットーレが飛び上がったのと、光る根が地中を突き破ったのは同時だった。悠々と交わしているかのように見えたのほんの一時で、視覚から足を絡め取った木の根は、アルハイゼンの振り払うような動作とともにドットーレを壁へと叩きつけた。
「な、ぜ……私……私は……!」
衝撃に驚いているのではない。内側から来る狂気に逆らおうと目や耳を滅茶苦茶に引っ掻き、血を流す。その有様を見たのは初めてではない。
つまり、叢林で学者達を殺したのは、アルハイゼンの中にいた何か、なのだろう。
「寸前に断片との繋がりを切ったか。だが、今はよしとしよう」
それよりも君達だ──アルハイゼン、らしき人物の双眸に射抜かれる。
「君……アルハイゼン……なんだよな」
彼は左手に四枚の琢光鏡を浮かべ、握り潰すようにしてそれを光の砂へと変えた。
「ど、どうしちゃったんだよ。さっきの攻撃は……いや。それよりも家に帰ろ──」
「俺はそのような名ではない」
元素力で尾が二股に分たれた杖が生成され、右手がそれを振るえば光の奔流と大風が巻き起こる。
鋭い嘴を持った鳥のような黒い装具を目深に被り、彼は名乗りを上げた。
「俺の名はトート──一対の魔神の片割れだ」
◇
「俺の名はトート──一対の魔神の片割れだ」
何を馬鹿なことを言ってるんだ、こいつは。
「嘘……だよな……?」
「摂理そのものが偽りを述べることはあってはならない」
普段のあいつが無愛想だとしたら、この声音は無、そのものだった。感動も感情もない。他者を本当の意味で平等に見つめる者の言葉だ。
いくらか覚悟はしてきたつもりだったのに、現実を目の前にして酷く打ちのめされた気分だった。
「カーヴェ、大丈夫だよ」
旅人が武器を抜き、力強く言い放つ。
クラクサナリデビ様は言っていた。世界に言葉を与えたというのなら、言葉を奪うこともできるはず──そして、テイワットに由来しない言葉を持つ者ならば、対抗できるとも。
武器を抜いた人間がどうなるのかは先程見た。目の前の魔神は学者達が目指した摂理、ルールの具現──律としての神は、その力を振るう理由に感情由来の揺らぎを持たない。つまり、ルールに抵触しなければ、僕達は危害を加えられない。
「まずは、アーカーシャを使うための隙を作る」
まずは目の前の魔神を打ち崩す──そのために僕達は来た。
「──心苦しいけど、君に任せるよ」
「言われなくとも」
アル──トートは、武器を突きつける旅人を一瞥した。僅かに覗く瞳には、本来のコバルトブルーと琥珀色の他に、星の海のような輝きが混じっている。
「異界からの降臨者、その意味は理解しているか?」
「──もちろん」
「そうか」
酷く淡白な了承──開戦の火蓋はそれだけで十分だった。
旅人の剣が迫る根を切り払えば、根の奥から奇襲のように閃光が走る。それを間一髪で避けた旅人の頬を赤い筋が伝ったが、拭っている暇はない。
魔神の戦闘技能はさほど高くはない。アルハイゼン本人の技能をベースとしてはいるが戦い慣れていないのだろう。綿密に先頭を組み立ててはいるが明らかに経験が不足しており、旅人に喉元まで迫られることもあった。
ただ、問題は圧倒的な物量の差だ。近付いたと思えば束になった閃光が何本も襲いかかる。退避したと思えば地中から根が出てくる。しかも後ろの光輪は爆発的な攻撃に備えるかのように徐々に輝きを増していた。
(元素の供給元を封じられれば……あるいは、あいつの意識を呼び覚ませるものか?)
彼の左肩で神の目は異常なまでの輝きを放っている。そんな出力を出し続けていた体の方が持つはずがない。
相変わらず戦闘は続いているが、どちらの体が先に使い物にならなくなるかの消耗線を続けるのは得策じゃない。
あいつが何を大切にしているのかは知っている。祖母の言葉が刻まれた本──残念なことに、あれは自宅に置いてきてしまっている。持ってくればよかったなんて後悔をするより、打開策を考えるべきだ。
(僕はたくさん見てきただろ!くそ……思い付いてくれ……)
世界樹の記録の中で何を見た。虐げられた過去、孤独だが暖かい生活、その眼差しは──いつも真っ直ぐに世界を見つめている。窓の外の世界は、いつだって変化と色彩を見せてくれて、彼はそれを大切そうに眺めていた。
「そうだ、僕があげた……」
あいつは、まだ持っているのだろうか。持っているとしたら、腰袋の中──幸か不幸か、それはまだしっかりと彼にくっついたままだ。
ピシリ、と何かが割れる音がする。先にもたなくなったのは、アルハイゼンの体の方だった。琢光鏡を生成する左腕にヒビが入り、中から草元素の輝きが漏れている。そのヒビは徐々に広がり、肩へと侵食を始めたようだった。それでも魔神は抵抗を止めようとしない。
「──言葉の重みを知るがいい」
光輪の輝きが収束し、旅人のすぐ頭上に巨大な円陣が現れ、元素力が徐々に巨大な塊を形成していく。旅人は逃れようとするが重力に縛られているのか膝をつき、そのまま立ち上がれずにいた。
「ティナリ!腰袋だ!」
「──よく分からないけど……分かった」
セノは旅人の救出に、そして僕は魔神へと走り出す。
彼はティナリが武器を抜いたことに気付いたが、元素力は旅人の頭上に集中させている。中身を強奪するなら今が一度きりのチャンスだった。
(ひび割れが大きくなってる──アレを撃たせちゃいけない)
セノの矢はとても正確に腰袋の付け根を射抜いた。音楽プレイヤーや読みかけの本、それらに混じってつい最近まで見慣れていなかったものが勢いよく零れ落ちて足元まで転がってくる。
「はい、これ」なんて悠長に渡している暇はない。それを素早く掴み、見せつけるように中空に放り投げた。プリズムの乱反射が瞳の中の星の輝きを僅かに打ち消し、七色を映し出す。
「なん、で……」
呆然とした声と共に頭上の円陣が霧散する。ひび割れは顔や腹にまで達していた。
「旅人、今だ!」
現れた新型のアーカーシャが光を放ち、暖かい声が頭の中に流れ込む。それと同時に視界は白くなっていき──この感覚は、この間夢境に入った時ととてもよく似ていた。
『あなた達を繋ぐ道は、わたくしが作るわ』