閃光ここに、ひとつの瓶と、ひとつの便箋がある。どちらも深い緑の封蝋で封をされている。
モンドを護る西風騎士団団長室。遠征中の大団長に代わりこの部屋の主を務める代理団長のジン・グンヒルドは、図書司書のリサ・ミンツ、騎兵隊隊長のガイア・アルベリヒ、調査小隊隊長のアルベド、遊撃小隊隊長のエウルア・ローレンス、後方支援隊隊長のヘルターの五人を集めた。隊長職は他に六人在籍しているが、任務や遠征のため不在。ここにいる代理団長と四人の隊長が実質、現在の西風騎士団を管理している。図書司書のリサは、騎士団の顧問のような役割でもある。黒い革を張った椅子に腰かけているジンの横で、悠長に欠伸をしているが、その実力は前線に立つ隊長たちと遜色が無い。
「この二つはダンボールに入れられた状態で送られてきた。これらに指紋はなかったが、ダンボールにはついているかもしれないと、鑑識課が調べてくれている」
「それで、何が問題なの?普通の郵便物に見えるわ。瓶詰ってのが少しオシャレだけど」
せっかちなのはエウルアだ。不在にしている遊撃小隊のことが気掛かりなんだろうが、現在小隊は清泉町で奉仕活動をしている。単に気性の問題だろうか。
「先日、他国である事件が起きた。ヘルター、璃月で発行されている新聞は持ってきてくれたか?」
「はい、ここに」
ヘルターは懐から巻かれた状態の新聞を取り出し、ジンに手渡した。ジンは立ち上がって瓶と便箋を机の端へと退かし、新聞を広げた。見出しの欄に書いてある文字はこうだ─────【モンド国境付近で原因不明の爆破、調査は難航中】
「皆も知っていることだろう。新聞は二日前のもの。この郵便物が来るより早く、璃月からの使いが来た。本当はその話をしようと思って集めたんだが、“都合よく”これらが届いてな」
招集がかかったのは午前十一時。現在は午後三時を少しばかり過ぎた頃だ。招集がかかる以前に璃月から使いが届き、招集がかかった午前十一時から午後三時の間に瓶と便箋が届いた、ということだろう。