片想い 自販機の近くで他の隊員と楽しそうに談笑している水上の姿が見えた。隠岐が一方的に見ているだけで向こうが気付く気配はない。普段なら隠岐が傍に来るだけで気付いてくれるが、今隠岐がいるのは自販機からかなり離れた場所だ。
「視力が良いって言うのも便利なんかわからんなぁ」
狙撃手として遠くを見ることに慣れてしまったからなのか、近くよりも遠くにいる人を見つける癖がついてしまった。特に水上に関してはつい目で追ってしまう傾向にある。その理由を嫌と言う程自覚しているので難儀な体質だと呆れるしかない。
自分の気持ちに気付いたのはどれくらい前だっただろうか。これ以上の関係を望むことはハイリスク過ぎるが、この気持ちをなかったことにもできずに、ただ隠すことを選んだ。ひたすら隠して隠して、そうしてたどり着いたのは、結局好きという気持ちを捨てられない現状だけだった。どうにもできないなら、この気持ちと上手くやっていく他に術はない。時々遠くから水上を見つめては、気づかれる前にその場を去る、それが隠岐の日常だった。
824