お題:木漏れ日 冬の厳しい寒さが和らぎ太陽の光が優しく降りそそぐ公園で、出水はふと歩みを止めた。視線の少し先にはベンチに座って目を閉じている烏丸がいる。眠っているような、ただ目を瞑っているだけのような、そんな顔ですら整っている、なんて思いながら再び足を踏み出した。
小さな足音は烏丸の前で止まり、その音に気づいたのか烏丸がゆっくりと目を開く。風に揺れる木々の隙間から差し込む木漏れ日が眩しいのか、右手で遮るような動きを見せる。
「おはよ?」
声をかけた出水は光を遮るように烏丸の正面に立ち、その瞳が自分に向けられるのを見届ける。
「さすがに眠ってはなかったすけど……」
「でも珍しいだろ。おまえが外で気を抜くなんてさ」
「似てたんすよ」
「何が?」
「待ってる間に上を向いたら、木の間から見える光が出水先輩のトリオンに」
まさかの話題に出水が言葉を失う。そんな理由で目を瞑っているなんて思ってもみなくて、出水はその場にしゃがみこんだ。
「出水先輩?」
頭上から降ってくる烏丸の声に小さく息を吐きだして、しゃがみこんだままの状態で頬杖をついた。下から見上げる烏丸も、上から覗き込んだ時の烏丸の顔も、どの角度でも整い過ぎて腹が立つ。それなのに本人はそんなことに無関心で、周りからの視線を集めていても気にしない。挙句の果てには出水のトリオンに似ているからという理由だけで、目を閉じるような始末だ。
「もうこの公園で待ち合わせは禁止な。やっぱり今度から建物内にしようぜ」
「え?」
出水の提案に意味がわからないという顔をされるが、そんなことは関係ない。ただ、烏丸の無防備な顔を人目に晒す被害を考えたら、出水の判断は正しかったと後に他の隊員からも理解を得られるだろうと、そう思った。