届けたかった曲「冴子さん、これ貰っても良い」
それを貰ったのは、由紀の葬儀が済んだ直後のことだった。
「……えぇ、良いわよ。」
「ありがとう。」
「…柊、真冬は…」
「………さぁ。」
俺達はずっと幼馴染だった。
それはずっと変わらないはずだった。
高校に入って違う高校へと進んだ真冬とほんの少し距離ができただけ。
高校に入って由紀とシズと俺でバンドを組んでまた少し真冬と距離ができただけ。
それでも、それだけで俺たちの関係が変わるなんて思っていなかった。
由紀がいなくなってから、すぐに真冬と連絡が取れなくなった。
住み慣れた街のどこでも真冬を見かけなくなった。
あんなにも、一緒にいた俺たちの関係はこんなにもあっさりと無くなってしまうのかとさみしくて同仕様もない気持ちでいっぱいになった。
そんな時にはいつも冴子さんにもらった由紀のノートを見た。音源を聴いた。
音楽の中で、由紀が真冬に伝えたかったことが生きている気がした。
どのフレーズにも真冬への思いがこもっていた。
届けてやりたい。
これは、真冬が受け取らないといけない歌だ。