貴方の進むみちへゾンビたちの沈静化。それがこの隊に入る条件だった。だけど、毎日毎日ゾンビを沈静化するだけで何の意味があるいつ人間を襲うかも分からない状況で、人間の方からゾンビに近づいていくんだぞ。
守り切れるのか?…本当に
「ゾンビの言葉に耳を傾けろ。」
Ado隊長は一体何を考えているんだ。
ゾンビと会話をしてはいけない、呪われてしまうかも、ゾンビになってしまうと声をかけているのに、隊長自らそんな指示を飛ばして。
「聞けるわけないでしょ」
日々、自分をはじめとする若い隊員の不満は大きくなる。
「大体、沈静化ってなんなんですか。」
それに目だけを向けてくるのは少しベテランの隊員たち。彼らの目には、もう光はない。
言ったところでどうにもならない、ということを分かっているのだろうか。
返事もせずその場がどう収まるのかの興味だけで目を向けてくる。
一人一人に声をかけるのはファルコン分隊長くらいのもの。
「頼む、今だけは、今だけ我慢してくれ。Ado隊長にもお考えがあるはず。」
「そのお考え、が知りたいんです。」
「我々が必死で、ゾンビに近づくな·話しかけられても無視をしろ·触れるなと伝えてもAdo隊長の一言で人々は混乱してしまう。」
ファルコン分隊長は、一人一人の隊員の言葉をそうか、そうだな、と聴きながら返事をしようと努めている。
「君たちの言うことはよく分かった。私がすべて受け止めよう。だが君たちが、もしもAdo隊長の言葉に対して不満があるというのなら今の内に辞めたほうがいい。どの道、人の命を守るために命を張る仕事だ。納得のいかない死に方ほど嫌な死は無い。パークに来る人々の命も君たちの命も私にとっては等しく尊い大切なものだ。この先どう生きるかは君たちで決めてくれ。」
私は、君たちの意思を尊重する。
最後にはただ、それだけ言ってファルコン分隊長は部屋を出ていった。
「····はぁ、やっぱりファルコンさんは格好いいよな。」
口を開いたのは、先輩隊員だった。
「ぶっちゃけ、俺はファルコンさんへの憧れでここまで続けて来れてる。」
次の言葉も先輩隊員。
「····ゾンビの数にも人間の数にも、言うこと聞かねぇセディエーションガンにもうんざりだけど、仕事するか。」
勤務中、あんなにだるそうな隊員ですらどっこいしょと言って腰を上げる。
「···で、お前らはどうすんだ」
ちらりと、背後を見ながら声を掛ける先輩に「自分も行きます。」と一人、また一人と名乗りを上げ続くのだ。