もちろん、美味しくいただきました「プレゼント?」
「そう」
もし良ければなんだけど、と真剣なトーンで切り出した話は何かと思えば、なんてことない、クリスマスに贈る子どもたちへのプレゼント選びに行かないかとのことだった。
「お子ちゃまたちにさ。せっかくだしって」
賢者に聞いたクリスマスの話から思いついたらしい。つくづく彼は子どもに甘いなと思いつつ、了承の旨を返す。
「これってデートのお誘いって思っても良いの?」
加えて言うと、飲みながら赤くなっていた顔がさらに朱を帯びる。そして視線を彷徨わせた後、小さくこくりと頷いた。
翌日。昼食には早いが、朝食には遅いブランチを食べ、そのまま中央のマーケットに向かう。お昼は任せてください!とカナリアに言われ、時間を心配することもなくなった。
リケは〜、うちの子たちは〜と真剣にプレゼントを選ぶ姿がなんとも可愛らしい。自分より年下の子どもたちみんなに渡すようで、荷物がどんどん増えていく。
「ね、せんせ、これどう?」
「良いと思うよ。それは右がヒースで左がシノ?」
「んーん、逆。あいつらは自分より相手の色のもんがいいだろ」
「なるほど。そうだな」
ネロが持ってきたのは小物入れ。最近仲直りに手紙を使うようになった彼らにはそれを仕舞えるものを、と探していた。細かい彫りが入っていて、ヒースが気に入りそうだ。彫られているものはシノが気に入りそうで、二人に合うものを選んだことが伺える。
「よし、これで全部だ」
ありがとな、ファウスト。
こっちを見てにっと笑う彼にどういたしましてと返す。
「それにしてもすごい量になったな」
「まぁ、なんだかんだ俺の欲しいものも買ったしな……」
「新作を楽しみにしているよ、シェフ」
「一番最初に味見してくれよ?」
「もちろん」
===
当日。渡されたプレゼントを前に瞳を輝かせる子どもたちを見て、笑みが溢れた。嬉しい、ありがとう、と言われるネロは喜んでくれたならよかったと恥ずかしそうに、けれど喜びを滲ませていた。
夜は二人で飲もうとファウストの部屋でワインを開ける。そういえば、と気になっていたことを聞いてみようと思い、話題が切れたところでネロに尋ねる。
「僕にはないの?」
「え?」
「レノには渡していただろう?」
彼はラスティカやレノックスといった、「お子ちゃま」以外の年下にもプレゼントを用意していた。自分からしたら彼らも年下の子どもだと言って。
「あ、いや」
ネロはその、ともごもごしながら困った顔をする。
「用意、してないとかじゃなくて、えっと」
「うん、なに?」
強請っているように聞こえただろうか。だが、僕以外には用意しているのに?と少し妬けてしまう。
「……の…と」
「もう一回言ってくれるか?」
いつぞやの晩酌のように赤くなった顔をばっとあげた。
「俺、のつもりなんだけど」
先程よりも大きい、だがぼそっと小さい声で恥ずかしそうに言った。
それを理解するのに一テンポ遅れ、ファウスト?と居心地の悪そうなネロの顔が目の前にあった。
「いや、まあ、俺にそんな価値ねぇし……実はあんたのも」
「いる」
「へ」
「僕のプレゼントはきみなんだろう?」
手を頬に当ててぽかんと開いた口にキスをおとす。そのまま
明日もネロは休みだと伝えておこう。彼を自分の部屋から出すつもりもキッチンに立つ力を残すつもりも全くないので。