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    いつ完結するのかわからないのでちょっとの間だけ自分の確認用に挙げておきます。

    完結時期未定 拷問みたいなメンツでの合コンが行われた後、いなかったメンバーも含めて全員参加の合コンが開催されることになった。それには拒否権など存在せず、あらかじめ全員の予定を聞いた上で日程が組まれていたのだから、お子ちゃまたちの行動力には驚かされる。ミスラをルチルとミチルが、オーエンをカインとクロエが引っ張ってきたことで、北の魔法使いも含めて全員で合コンを始められることになった。もちろん、料理を食べたいがためにブラッドリーまで参加している。

    「ねぇ、先生。これ、帰っちゃダメ?」
    「ダメに決まっているだろう」
     僕も帰りたいところだが。
     元々人が多いところが苦手な東の魔法使いとして来て早々お互いに既に疲れてしまっていた。
    「今日の食事もきみが?」
    「ん、まぁ。一応全員いるって話だったから結構多めに作っといたよ」
     先生の好きなものもあるし。
    「それは楽しみだ」
     ちらりと横を見ると少し頬を緩ませていたファウストに自分の料理が認められているようで嬉しくなる。

     二人で飲んだり、やってきた他の魔法使いたちと話したりして、なんだかんだちゃんと参加して楽しんでいた。
     別のテーブルでは王様ゲームしよ〜!!なんて双子先生が言うものだから地獄みたいな空間ができている。
     あ、ブラッドも巻き込まれてる。おい、こっち見んな。巻き込まれたくないので合ってしまった目を逸らす。
     先程までカインと飲んでいたがアーサーに呼ばれて王様ゲームに行ってしまった。本物の王子さんが参加する王様ゲームって大丈夫なのか……?
     俺が一人になったタイミングでファウストが戻って来た。さっきまで一緒だったフィガロは双子先生に呼ばれ、レノックスはそのフィガロに引っ張られたらしい。

    「そういえば、前の賢者から聞いたんだが、合コンではお持ち帰りっていう二次会があるらしい」
     合コンの話をしながら、ファウストがふと思い出したように言った。
    「へぇ。二次会に名前があるんだな」
    「あぁ。ただの二次会じゃなくて、仲の良い者や仲良くなりたい者を誘って、二人で行くんだとか」
    「みんなで行くんじゃないんだ」
     二次会、というと、潰れなかった者たちが飲み足りず、揃って飲み直すイメージがあったが。うちの団でも仕事終わりによく馴染みの店に寄ったり、庇護している村に滞在してやっていた。

    「それで?先生はどうするの?」
    「ん?」
    「俺はまだ飲み足りないけど」
     ちら、と横にいるファウストを見る。
     それにふふ、と笑いながら、お持ち帰りさせてくれるの?と聞かれたので、頷き、二人で抜け出すことにした。


    「つまみ、ちょっとしたのしかないけどいい?」
    「いいよ。少しでもあるのはありがたい」
     呪文を唱えて自分の部屋から作り置きしていたものを机に置く。ファウストもとっておきなんだ、と言いながらワインとグラスを手元に呼びよせた。
    「白か」
    「うん、きっときみも気にいると思うよ」
     二つのグラスに注いで乾杯、と飲み口を合わせる。
    「ん、ほんとだ」
    「だろう?」
     美味い、と飲みながらテーブルに置いたナッツをつまむ。

    「それで、お客さんに子どもの誕生日はここでやりたいって言ってもらってさ」
     ぼーっとしながら近くにある手を握る。アルコールに浮かされたふわふわとした頭の感覚が気持ちいい。目の前の手に指と指を確かめるように触れる。うんうん、と聞いてくれるファウストの声に安心した。

    「子どもの喜ぶ飾りとか、流行りとかわかんねぇからさ、当日は折り紙とかバルーンとか用意して……ケーキも好み聞いて作ったんだよ」
     指を触って少し満足したので、ぎゅ、と隙間を埋めるように指を絡ませる。

    「めちゃくちゃ喜んでくれてさ、あなたに頼んでよかったって両親揃ってお礼してくれて……その子にもまた来たいって言ってもらえて嬉しかったんだよな」
     結局、容姿の変わらなさを誤魔化すのに限界を迎えて店を畳むしかなかったんだけど。

    「だから、こんなふうにパーティ料理作んの、ちょっと楽しくて、好きなんだ」
     ファウストは真っ直ぐ、微笑みながらネロの話を聞いていた。酒のせいでへにゃ、と頬が緩む自分には気付かず、話を続ける。

    「そろそろ、お開きにしようか」
     それにネロはえー、まだー、なんて子どものように駄々をこねた。
    「きみ、だいぶ酔ってるじゃないか。そろそろ寝たほうがいいだろう?」
    「まだのむ〜!」
     ねー、せんせー、良いでしょ?と握った手を離さず、上目づかいでねだる。


     素面ではしないようなネロの行動に、どうしてやろうかとファウストは考える。据え膳食わぬは……なんて言葉もあるが、酔っぱらいを襲う趣味はない。
     いつものように、酔ったら手を握ってくるのは想定内だし、話はできるようだったから放っておいたが、止めるタイミングを見誤ったらしい。赤く火照った頬は林檎みたいで、甘えながら潤んだ蜂蜜のような目をこちらに向けるのも食べてくれと言っているのではないか、なんて思うのは自分も酔っているからだろう。
     握った手を離すこともなく、ピッタリと合わせられ感じる少しの不自由さに、愛おしさを覚える。

    「ネロ」
    「んー?」
    「寝るならこのベッド使って良いから、今日は終わり」
     ふにゃふにゃとしたネロはやった、せんせぇのベッド〜なんて言いながらぽすんと転がる。こんなに酔っているのも珍しいなと思いながら、テーブルの上を軽く片付ける。
     部屋に来てからエプロンは外していたので、シャツが皺にならないように脱がせようとボタンを指にかける。
    「せんせがぬがしてくれんの?」
     へへ、と機嫌が良さそうな声が上から聞こえる。危機感のなさにため息を吐きたくなるが、説教は明日で良いだろう。起きたら覚えていないのかもしれないが。
    「ほら、腕あげて」
     は〜い、なんて従順な姿にまたため息を飲み込んだ。

     シャツを脱がせてしばらくベッドに転がしていると、ネロは寝たようだった。いつもよりペースも早く、量も多かったし、仕方がないだろうと思うが、起きたらこの男はきっと迷惑をかけたと気にするのだろう。
     さら、と下ろされた髪を撫でる。くー、かー、と寝ている姿に、今まで警戒されていた野良猫が懐いてきたような感動を覚える。
     まだ今よりもお互い距離があった頃。日向で猫と寝ていたところを発見し、気になってその髪を触ったところ、ガシ、と腕を掴まれ、睨まれたことがある。ファウストだったとはわからなかったようで、その後謝られたが。警戒心が強かったあの頃とは比べ物にならないほどのあどけない寝顔に、今は少し危機感を抱いてくれ、なんて思う。

    ***

     起きるとそこは知らない天井……ではなかった。ここがファウストの部屋だと気付き、やってしまったと項垂れる。
     テーブルも片付けられており、途中から記憶もないので色々と迷惑をかけたのだろう。とりあえず起きて、お詫びに朝食はガレットにしようと考える。

    「うわっ」
     ベッドから出ようとするとぐ、と後ろから腕を掴まれる。それに体制を崩し、ベッドに逆戻りした。
     細身に見えるが、案外うちの先生は力がある。元中央出身だからか、たまに物理的に解決させようとするところもあるから。
    「先生、起きて」
     もぞもぞと動きながらも随分眠いのか起きる気配がない。昨晩の処理をしてくれたのはファウストであって、自分より睡眠時間は短いだろうと思うと無理に起こすのも憚られる。悩みながらも、ゆっくりと掴まれた手を離そうとする。
     突然、辺りが麦畑一色に染まった。動揺するも、特に危害を加える呪いではなさそうな様子に安堵する。触れようとしても触れない。これは幻覚らしい。
     麦畑に沈む空色の髪。距離が遠い上に後ろ姿しか見えないが、あれは……
    「俺?」
     それに向かって歩いているようで、だんだんと近付いている。
     この俺は歩いている存在に気がついたらしく、後ろを振り返る。
    「ッ……!?」
     そして彼を認識して笑みを浮かべた。
     それはそれは、愛おしいものを見るように。

    ***

     はぁ、と息が外に出る。ため息を吐くと幸福が逃げる、なんて話が若い者の間で流行っていたが、幸福なんてため息を吐かなくても逃げていくものだろうと思う。
     あの後、何事もなかったかのように腕を抜き、キッチンに向かった。ガレットを焼くのは忘れずに。ファウストにも迷惑をかけたことを謝り、こんこんと無防備だとか、気をつけなさいとか注意された。別に北の魔法使い(オズ、フィガロ含む)とか西の魔法使いの前じゃああんなに酒は飲まないって……って思うけど、それは言わないでおく。
     この人に、俺はあんな顔で笑っていたのか。
     あの時の幻を思い出す。あんなの、どう見ても好きって言っているようなものだ。俺が、ファウストを?
     そんなの、あるわけないだろうに……あるわけ……。

    「……ロ!おい、ネロ!」
     はっ、と隣を向く。そうだ、おやつ。子どもたちのために作っていたのに。
    「なんかあったのか?いつも以上にじめじめしてんじゃねぇか」
    「あ?」
     どうして、ブラッドがここに?という疑問も口に付いた食べカスで察する。ちらりと机を見ると、置いていたスコーンが明らかに減っている。
    「てめぇ!またつまみ食いしたな!?」
     げっ、という顔をして、咳払いし、美味かったぜ!なんて言うので足で蹴る。
    「今日の晩飯は野菜たっぷりのカレーだな」
    「はぁ!?勘弁しろよ」
    「食わなかったらてめぇの飯は知らねぇから」
     やり取りをしながら、そいつの口に付いていたスコーンの欠片を取る。

    「……」
     近くまで来ていた存在には気付かないまま、子どもたちを待つ間にブラッドにお菓子の用意を手伝わせた。

    ***

     別に気にする必要はない。前から近いとは思っていたが、そもそもネロは人と距離を取ろうとするくせして自分から変に詰めてくるところがある。あの男にもそれが発動しているのだろう。気にしてなんか……。
     キッチンから背を向け、スタスタと当てもなく歩いた。そのまま外に出たようで、気がつくといつもネロとねこを可愛がっているスポットに来ていた。彼はまだキッチンにいるのに。
     先程のやり取りを思い出す。親しそうにブラッドリーの口を拭い、笑っていた。僕だけじゃないことなんてわかっていたのに。
     木陰に座ってにゃー、と近付いてきたねこを撫でる。いつもならここに彼もいて、ねこを愛でながら二人で話して過ごすのに……。
     わかっている。男の醜い嫉妬だ。いまに始まったことじゃないのに、この前のお持ち帰りもあって歯止めが効かなくなっているようだ。
     ふぅ、と心を落ち着ける。ねこが二匹。空のような青毛の子とふわふわとした癖のある茶毛の子。仲が良いのか、よくこの子たちは一緒にいるところを見る。たまに二匹の子ねこもいて、親のように面倒を見ていた。
     青毛の子がにゃ、と僕を慰めるようにこちらを窺う。いつもならこの子を触ると不機嫌になる茶毛の子も今日は少し様子を見ているようで、大丈夫だよと言うように二匹の頭を撫でた。
     
    「あっ、先生。ここにいたんだな」
     驚いて肩が跳ねる。その拍子で茶毛の子は離れてしまった。
    「悪い、びっくりさせた?おやつできたから食べるならと思って呼びにきたんだ。あんた、部屋にいなかったから」
    「そうか。ありがとう」
     すぐに行こう。

     自分を探しにきてくれたことへの喜びで先程のもやもやが少し晴れる。
     ネロはへへ、と笑って今日のは上手くいったから先生に食べてほしかったんだよね、なんて言うので、改めてこの男はタチが悪いと思った。

     今日のおやつはスコーンらしく、シノが次はレモンパイをと強請っていた。スコーンだけでなく、プレートには可愛らしいクッキーがちょこんとのっていて子どもたちが喜んでいる。それぞれに合わせて変えているのかシノにはイヌ、ヒースにはうさぎがのっていて可愛い。自分のプレートにもねこがいて、これを作っているところを想像すると笑みが溢れる。クリームだけでなく、ジャムも種類が多く、どれだけの労力がかかっているのか……。彼は自分でよく休むことが好きだなんて言うが、毎日三食、加えておやつも作っているとなると、なかなか休む時間もないだろう。大人も多いんだからたまには自分で作らせればいいものを、とも思うが、それをできないのがネロなのだ。
    「先生、どう?」
    「美味しいよ、シェフ」
     ネロは照れくさそうに頬を赤らめて笑う。どう?と期待するような目も可愛いが、こうやって期待しつつもいざ褒められると恥ずかしそうにするところも可愛い。
    「ネロ!おかわりありますか?」
    「お、もう食べたのか。夕飯が入るならいいけど」
    「入ります!!!」
     元気いっぱいにリケとミチルがおかわりを強請るのでじゃ、と言ってキッチンに戻っていった。座ってなと言われていたリケとミチルはお行儀良く椅子に座ってどのジャムが特に美味しかったかを話している。シノも食べ足りないのがキッチンに皿を持っていった。
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