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    watasi_is_orz

    @watasi_is_orz

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    watasi_is_orz

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    ネタバレは無いと思いますが、本編終了後時空のため念の為ネタバレ注意です。
    make magic聴きながら書いてたらめちゃくちゃ時間経ってて草
    キメ細かな肌チェリーなリップとろけるようなキュートな瞳!

    #チェズルク
    chesluk

    近頃、同僚のルーク・ウィリアムズの様子がおかしい。……と、思う。
    その変化に気づいているのは俺だけではないらしく、署内の視線はちらちらとあいつに向けられてはいるものの、どうやら肝心のウィリアムズ本人はその視線には気が付いていないようだ。
    そして、同じ部屋にいる同僚たち──特に女性職員たちからは、際立って熱い視線を向けられている。だが、それには恋慕の情は混じっていないだろう。
    彼女たちの視線に込められているのは、そう。興味と羨望だ。

    ルーク・ウィリアムズは、最近綺麗になった。


    ◇◇◇


    休職から復帰したウィリアムズは、パッと見では以前とそう変わりない。だが、ある時、特に目ざとい一人の後輩署員が気が付いたのだ。

    『……ウィリアムズさん、最近肌が綺麗じゃありませんか?』
    『そうかな? ありがとう』
    『何か変わったことしてるんですか?』
    『いや? ……ああ、でも。近頃貰い物のいい野菜を食べているし、……その、友人から貰ったスキンケア用品を使っているんだ。駄目にしてしまったら悪いからね』

    その短い会話は人の多く行き交いする室内で行われており、さして隠すように話された訳でもなかった。故に、その言葉が僅かでも頭の端に残った人間も多かったのだろう。
    それから、ウィリアムズの見た目が噂話に上がることが増えた。

    『ウィリアムズさん、よく見ると唇がものすごく綺麗なんですね……色味は薄いけど、表面なんか高級なチェリーみたい。なにでケアしてるんだろう』
    『甘いもの好きみたいだから蜂蜜とか? 擦れ違った時に果実みたいな甘い、すごくいい香りがしたし……』
    『それより爪よ! 書類渡された時に随分と綺麗だったから何か表面に塗ってるのかと思って聞いてみたけど、「なにも?」ですって! トップコート無しであのきらめくネイル……何なの?』
    『俺はやっぱり肌が気になる。あれだけ糖質脂質摂っててあのシルクみたいな肌はありえない。前は結構肌荒れしたりもしてた……ような……よく覚えてないな』

    話をしている各々が好き勝手話していたので会話に割り込む気にはなれなかったが、かく言う俺もウィリアムズの髪がとても気になっていた。何しろ俺は軽度の髪フェチであり、恋人は現役の美容師だ。そんな俺から見ても、最近のウィリアムズの髪は美しい。
    身体のパーツの配置や大きさは生まれ持ったものである以上そう簡単には変えられないが、それらのパーツのもつ各々の美しさが、徐々に、しかし確実に向上しているようだった。
    しかし理由を知ろうにも、生憎俺も他の署員たちもウィリアムズとはそう深い関わりがある訳ではない。むしろ、暗く澱んだ警察組織の中で唯一燦然と輝くあの眩しい生き方に気後れし、あるいは嫉妬を隠すように嫌悪していた。プライベートの話題など、とてもじゃないが振ることはできなかった。
    だから、搦手を使うことにしたのだ。

    ◇◇◇

    「ウィリアムズ、少し雑談いいか。時間はかからない」
    「ああ、丁度書類の送信も終わったところなんだ」

    時刻は定時直後。しょっちゅう居残り仕事をしているウィリアムズだが、今日は用事でもあるのか、帰り支度をしているところだった。

    「俺の恋人がもうすぐ誕生日なんだが……お勧めのヘアケアグッズを知らないか?」
    「それはおめでとう。……けれど、なんで僕に?」
    「あー……なんとなくだ。最近お前、髪が綺麗になったって話題だし」
    「ええ? そんな……」

    予想外の質問と想定外だったらしい褒め言葉に、ウィリアムズはしばし口篭る。だが、根っからの誠実さを持つウィリアムズが求められた意見を無視する筈もなく、やがておずおずと口を開いた。

    「その、僕もあまり詳しい訳ではなくて……使っているものは貰い物だし、知識も受け売りなんだ。確か貰った時に並べて撮った写真がタブレットに……」

    貰い物、か。確かスキンケア用品や野菜も貰っていると言っていた。もしや、ヘアケア用品も同じ人物から贈られたのだろうか?
    そんなことを考えていた俺の視界に、突如とんでもない画像が提示された。

    「僕はブランドには疎いけれど、そんな僕でも知っているくらいなんだ。きっと有名どころばかりだろう? あまり参考にはならないかもしれない」

    有名どころ。ああ、確かにそうだ。俺でも──否、俺でなくとも、誰しも知っているような、ハイブランドの数々。写真の中で所狭しと並べられているのは、小ぶりながら美しい細工の容器に入れられた、美容化粧品の数々。画面右寄りに写っているのは、俺の恋人が一月の給料の半額程で買ったというピーリングジェルではなかろうか? 誤って容器の端に触れてしまっただけで酷く怒鳴られたのは記憶に新しい出来事だ。
    そんな、“超”が二つ三つ付属しそうな程高級製品の数々が、贈り物?

    「……」
    「あ、ヘアケア用品は画像の左端に密集していて……あと、ここには写っていないけれどスカルプブラシっていうのも貰ったんだ。結構気持ちがいいよ」

    黙り込んでしまった、もとい絶句した俺に気を利かせているつもりなのか、ウィリアムズは言葉を重ねる。そんな中、突如として室内に控えめな電子音が響いた。

    「あ、僕だ。少しいいかな」
    「……ああ、」

    音の出処はウィリアムズのスマートフォンからだったようで、どうやらメッセージでも届いたらしい。それもどうやら、とても良い内容の。
    なぜ分かるかといえば、スマートフォンの画面を見た瞬間ウィリアムズの瞳が星の瞬きのように煌めいて、とろけるように甘くなったからだ。心に決めた相手のいる俺も思わず見蕩れてしまうような、あまりにもキュートな瞳だった。

    結局俺は絶句した状態から回復することができず──あるいは、ウィリアムズに見蕩れてしまったまま──お利口さんに挨拶をして去っていくウィリアムズの背中を見送るしかなかった。


    ◇◇◇

    「お久しぶりです、ボス。私の贈り物は──ああ、きちんと使ってくださっているようで」
    「最初は不慣れで落ち着かない気もしたけど……チェズレイがわざわざ贈ってくれたものなんだ。ひとつたりとも無駄にはしたくなくて」
    「あァ……!」

    久方ぶりに直接会う私のボス、ルーク・ウィリアムズは、そう言って照れたように頬を軽く掻く。その指先が触れる肌はどこまでもまろやかで、堪らなくなって彼の手を取ると、滑らかな肌とつややかな爪を感じることができた。

    彼は元々、自分の見た目に関してはエチケット程度にしか気を使っていないようだった。歯を磨く、髪を整えるなど──それは一般的には至って普通のことなれど、私にとっては不足に思えた。
    目立たない、地味だと言われがちな彼ではあるものの、その見た目は決して悪くない。だが、際立って良くもない。

    故に私は磨き上げることにした。宝石を研磨するように。刃を研ぐように。ルーク・ウィリアムズの持つ目立たなくとも確かな美しさに、そっと花を添えるように。

    最初はハンドケアだった。老舗のハンドクリーム専門店の数ある品から、愛しきボスに似合う香りのものを選び、贈り物に紛れ込ませる。そして、手紙に一言「手を洗う度、手が濡れる度に使ってくださいますよう」と言葉を添える。それだけで、律儀で誠実な彼は、贈られた品物を活用すべく、日々せっせとハンドケアに勤しんでくれた。ある程度ハンドケアの習慣がついたら、ナイトケア用にテクスチャの重めなクリームと、絹の手袋を追加で送付する。
    ネイルケアに関しては以前の逢瀬の際、私が手ずからネイルファイルで形を整え、その一枚一枚にたっぷりのケアオイルを浸潤させながら教示した内容を律儀に反復してくれたらしい。手を取られ、すべての爪を順繰りに愛でられたあの時のボスの顔は……思い出すだけで、あまりにも……。

    続いて手を付けたのはリップケアだった。
    幸いにして時候は冬に差し掛かる頃合であり、取っ付きやすいスティック状のリップクリームを贈り物に添えれば、彼は事ある事にそれを唇へ塗布してくれた。日々交わす画面越しの会話でもその口元へ徐々に艶が満ちていく様子が分かって、溢れ出る笑みを抑えるのに少し苦労した。

    そうして、フェイスケア、ヘアケア、ボディケア……と段階を踏んで習慣付けられるよう彼を誘導し、元来真面目な彼は、私からの贈り物を無駄にしないよう、向けられた親愛を残さず飲み干すように、トータルケアを日常の習慣に取り入れてくれたようだった。
    こうして出来上がったのが、このスイートな逢瀬。

    例え彼の見た目が損なわれようと、私はその心根に愛情を見出した。けれど、愛しい恋人がより美しくなることを喜ばない者はいない。

    「、チェズレイ?」
    「フフ……少し会わないうちに、あなたは……こんなにも」

    私よりも少し低い位置にある彼の頭に手を添え、そっと髪に指を通していくと、微塵の引っ掛かりもなく毛先まで流れていくことができた。その仕上がりに満足感を覚え、知れず笑みが浮かぶ。
    そうして彼の頭を優しく引き寄せると、何をされるか悟ったらしい彼は羞恥からか一瞬躊躇うように瞳を逸らしかけたものの、覚悟を決めたらしい。ぎゅっと力強く瞼を閉じた。
    そんな慣れない様子がまた愛おしくて、私は自ら魔法をかけた愛しのボスに、しばし口呼吸をやめて貰うことにした。
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    watasi_is_orz

    SPOILERネタバレは無いと思いますが、本編終了後時空のため念の為ネタバレ注意です。
    make magic聴きながら書いてたらめちゃくちゃ時間経ってて草
    キメ細かな肌チェリーなリップとろけるようなキュートな瞳!
    近頃、同僚のルーク・ウィリアムズの様子がおかしい。……と、思う。
    その変化に気づいているのは俺だけではないらしく、署内の視線はちらちらとあいつに向けられてはいるものの、どうやら肝心のウィリアムズ本人はその視線には気が付いていないようだ。
    そして、同じ部屋にいる同僚たち──特に女性職員たちからは、際立って熱い視線を向けられている。だが、それには恋慕の情は混じっていないだろう。
    彼女たちの視線に込められているのは、そう。興味と羨望だ。

    ルーク・ウィリアムズは、最近綺麗になった。


    ◇◇◇


    休職から復帰したウィリアムズは、パッと見では以前とそう変わりない。だが、ある時、特に目ざとい一人の後輩署員が気が付いたのだ。

    『……ウィリアムズさん、最近肌が綺麗じゃありませんか?』
    『そうかな? ありがとう』
    『何か変わったことしてるんですか?』
    『いや? ……ああ、でも。近頃貰い物のいい野菜を食べているし、……その、友人から貰ったスキンケア用品を使っているんだ。駄目にしてしまったら悪いからね』

    その短い会話は人の多く行き交いする室内で行われており、さして隠すように話された訳でも 3847

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