「よぉ、ライト!偶然だな!」
「パイセン?…またグッズでも買いに来てたんすか」
ルミナスクエアで用を済ませ帰ろうかとバイクを停めている駐車場へ向かう途中に呼び止められ振り返ればルミナモールから出て来たらしいパイセンの姿があった。
「いや、今日はニコの親分に頼まれたものを買いにな。お前は何してたんだ?」
「俺も似たようなもんすよ。用が済んだから丁度帰ろうと思ってたとこで」
「お?そうなのか?…あ、そういや聞いてくれよ!昨日邪兎屋の皆と店長たちとで飯食いに行ってよ。そこで何故か王様ゲームやる事になった訳なんだが」
「王様ゲーム?あのくじ引いて王様になった人の言う事聞くってやつっすか」
「そう!それで親分が王様引いてよ、その命令が1番と2番はキスしてちょーだい!とか言い出したんだ!」
「はぁ、それはまた厄介なやつっすね。それで?1番と2番ってのは?」
「俺と店長だよ!」
「…は?」
なんだって?パイセンとアキラってことか…?
特にパイセンと誰がキスだの何だのしようがどうも思わないが、その相手がアキラとなれば話は別だ。
「まぁ今思えばあのメンバーの中でってなると店長が「キスしたんすか」
パイセンの言葉を遮ってその命令通りキスしたのかと尋ねる。
「それはだなぁ~、…どう思う?俺と店長でぇ、チューしちゃったと思うかっ?」
俺の気持ちを知ってか知らずか何故か直ぐには答えを言わず焦らしてくる。
それに思わず苛立って小さく舌打ちをすればパイセンに聞こえたらしい。
「あ?おいおいー、何か苛立ってんのかぁ?あ!さてはライトお前…!」
「おや?ビリーにライトさんじゃないか、二人で遊んでたのかい?」
パイセンが何かに気付いたのかそれを言おうとした所で後ろから予想外の声が掛かる。
「おー!店長!昨日ぶりだな!」
「昨日はありがとう、楽しかったよ」
何事もないように普段の様子で会話をする二人に対して俺は黙ってアキラから少し視線を逸らしていた。
結局命令に従ったのかどうか分からないままモヤモヤとした気持ちを抱えていれば気まずかった。
そんな俺の様子にアキラは直ぐに気付いたらしく声を掛けてくる。
「ライトさん?どうかしたのかい?」
「あー、なんかライトのやつ、急に機嫌悪くなってよー」
「え?ビリー、彼に何かしたんじゃ」
「なっ!俺は何もしてないぜ!?ただ昨日の王様ゲームの話してただけだって!」
「昨日の?もしかして、最後にニコが王様になった時のことかい?」
「そうそう!」
「あの時はニコが酔って急に寝ちゃって驚いたけど、そのお陰であの命令を実行せずに済んだから助かったよ」
「え?それじゃあ…」
アキラの言葉に俺は目を丸くして黙っていた口を開いた。
「うん、僕とビリーのキスは未遂に終わったって訳さ」
「危うく俺の大切に守ってきたファーストキッスを店長に奪われるとこだったぜ!」
「ははっ、奪うことにならなくて良かったよ」
「~~っ…」
ホッとしたものの動揺を隠せなかったことが恥ずかしいやらで耳が熱くなる。
「んぁ?なんかライトのやつ、耳赤くねーか?」
「ん?本当だ、ライトさん具合悪いのかい?熱でもあるんじゃ…」
「っ…大丈夫だ。そろそろ帰るよ、じゃあな二人とも」
「えっ、あ、ライトさんっ?」
「ライトさん!待って!」
「…店長、…何か俺に用か」
「ええと、…明日。ライトさんが良ければ一緒に食事でもどうかなと思って。あ、具合が悪いなら無理は…」
「…行く。時間と場所はまた送っておいてくれ」
「うん、わかった。また明日ね、ライトさん」
「ああ、また明日な、アキラ」