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    shigu04x

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    shigu04x

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    アキヒュSS
    初夜の翌朝のお話。

    「ん、……」

    目を覚ませば見慣れない天井が先ず目に入る。
    覚醒したばかりの頭は直ぐに回らずここは何処だっただろうかとぼんやり思案する。
    隣の少し乱れたシーツの上に手を置けば、先程までそこに誰かが居たであろう事を伝えるように僅かな温もりが残っている。

    そうだ、昨夜は…。

    シーツの皺をなぞりながらようやくこの場所の事を思い出す。
    此処はヒューゴの家で、今自分はヒューゴのベッドで寝ていること。
    自分のベッドよりも大きく肌触りの良い滑らかなシルクのシーツに包まれているのはかなり心地が良く、此処から抜け出したくないと体が起きる事を拒めば、隣に置かれた同じシルクの素材の枕を引き寄せてぎゅうっと抱き締め顔を埋めるとほのかに甘くも静かな夜を思わせるような上品な香りが鼻腔を擽る。

    いい香りに肌触りの良いシーツに包まれて再び眠れると目を閉じかけた所です、と視界に影が落ちる。

    「アキラくん、お目覚めかな?」

    閉じる寸での所で落ちて来る瞼に抗い開けば、すらりと長い指が近付いて来て目に掛かる前髪を払い開けた視界には美しい顔の男がその顔に見合った綺麗な笑みを浮かべて此方を見下ろしている。

    「そろそろ起きてはどうかね?君の為にコーヒーと朝食を用意しているぞ」
    「…ぅ、ん……だって、君のベッドは、心地が良すぎて…」
    「ははっ、俺のベッドを気に入って貰えたのは嬉しいが…せっかく用意した食事が冷めてしまうのは俺としても悲しいことだ」
    「…わかった、…起きるよ」

    何度か優しく髪を撫でられながら起きるよう促されては枕を手離しゆっくりと上体を起こして一度大きく伸びをする。
    すると目の前に立っていたヒューゴは身を屈め再びするりと指を此方に伸ばして軽く顎に添えて顔を寄せればちゅ、と小さなリップ音と共に触れるだけの口付けを落とす。

    「おはよう…我が親愛なるアキラくん。さぁ、顔を洗って一緒に朝食を食べに行こう」
    「ん、おはようヒューゴ」

    スマートに行われるヒューゴの一連の行動に此方は慣れず照れ臭さを感じながら、あまり狼狽えたりするのも格好が悪いと思えば何とか平静を装い言葉を返す。



    顔を洗ってリビングに向かえばヒューゴが用意してくれた朝食がテーブルに並べられている。
    席に着けば程なくしてカップを手にコーヒーの良い香りを引き連れた彼がキッチンから出て来た。
    喫茶店と同じくらいにコーヒーの香りが漂っているという事は、豆から挽いて淹れられたものなのだろう。

    「砂糖とミルクはここにあるから好きなだけ入れるといい」

    先に使っていいと砂糖とミルクの入った容器を差し出されるが、先ずはそれらを入れずに一口コーヒーを啜ってみる。
    程良い苦みと酸味のバランスで苦みは後に引かず後口がすっきりしている為に、寝起きの頭にはブラックのままで飲むのが良さそうだと思えば軽く頷く。

    「うん、すごく美味しい。ブラックで大丈夫だよ」
    「おや、君はなかなかに大人な味覚をしているようだな」

    ふ、と小さく笑っては自分が使う為に彼は差し出した容器を手元に引き寄せると、ミルクは一般的な量だが砂糖はそれなりに多く入れているようだ。
    低血糖だからと聞いている為に驚きはしないが、やはり彼のイメージからするとギャップがある光景についまじまじと見つめてしまう。

    「特に一日の始まりである朝は甘いものを摂取しなくてはいけなくてね」

    その視線に気付いたヒューゴは此方が思っている事が分かっているのだろう、僅かに眉尻を下げて用が済んだ容器を元の位置へと戻す。

    「あ、いや、ごめん。ヒューゴが好んで摂取している訳ではないと分かっていても…やっぱりそのギャップがあって…それが、…可愛く見えてしまって」
    「…可愛い?…そんな風に見るのは、君くらいなものだろう」

    そう言って甘いコーヒーを口に運ぶ彼の尖った耳の先端がほんのり赤く染まった気がした。

    「いただきます」

    そろそろ食事が冷めてはいけないと手を合わせてからフォークを手に取る。
    サラダ、キッシュ、ポーチドエッグ、ソーセージにポタージュスープ。
    うちでは絶対出てくることはない朝食に感動を覚えながらキッシュを口に運んでみる。

    「…美味しい、お店で出てくるような朝食だ。これは君が作ったのかい?」
    「口に合ったようで何よりだ。キッシュとスープは手作りだが…そう難しいものではない、君にも作れるさ」

    彼は簡単に作れると言うが同じレシピで自分が作った所で同じ味には仕上がらないだろうと思う。
    そう思うくらいに彼の作る物はセンスがあるし非の打ち所がない。

    美味しさに手を休めることなく食べればあっという間に綺麗に平らげた。
    最後に残ったコーヒーも飲み干し、満たされた腹を軽く撫でながら一息吐く。

    「ご馳走様でした。本当にすごく美味しかったよ、ありがとう」
    「どういたしまして、喜んでもらえたなら俺としても甲斐があったというものだ」

    ヒューゴも少しして食べ終えれば流石に片付けくらいは自分がすると申し出てみたものの断られ、シャワーでも浴びてくるといいとキッチンを追い出された。

    あまりしつこく食い下がる訳にもいかず渋々一旦寝室に戻ってベッドに腰掛ける。

    先程は寝起きで頭が回っておらず大して意識はしていなかったのだが、こうして改めて頭が冴えて乱れたベッドに目を向けると昨夜の情景がありありと思い浮かんできては思わず顔が熱くなるのを感じる。

    昨夜はヒューゴに招かれ初めてこの家を訪れて、恋人と二人きりとなればそういった甘い雰囲気にならない訳もなくキスから始まりその流れのまま彼と初めてセックスをした。
    同性同士でありどちらがどうするかというのはあったが、自分としてはもしもそういう事になったら彼を抱きたいと思っていた。
    体格や経験で言えばヒューゴの方が上である事も明らかだが、彼に抱かれる想像よりも、その綺麗な顔が熱に浮かされ甘く蕩けるのを想像しては興奮を覚えたのだ。

    ヒューゴが自分を押し倒そうとした時に肩を押し返し抵抗すれば少し驚いたように目を丸くする彼に告げた。

    『僕が、ヒューゴを抱きたいんだ』

    彼がそれを意外に思ったのかどうかは分からない。
    それくらい考える間や素振りもなく

    『…そうか。君が望むのなら、俺は喜んでこの身を君に委ねよう』

    そう甘い声音と笑みで返してきたのだから。



    「…まずいな、思い出したら…」

    昨夜の新しい記憶はとても鮮明で脳内に艶やかな彼の姿がフラッシュバックしては、思わず身体に甘い疼きが走りどうにも落ち着かない。
    何とか冷静になろうと思うも彼を強く感じるこの場所では到底落ち着けるはずもなく。
    やはりシャワーに向かい冷たい水でも浴びるのが一番かも知れないと立ち上がろうとしたが、その前にガチャリと寝室の扉が開いて片付けを終えたらしいヒューゴがやって来た。

    「おや、てっきりシャワーに向かったと思っていたが…やはりまだ眠り足りないのかね?」

    未だに寝室に居る僕を不思議に思いながら隣へ腰を下ろし、まだ眠りたいのかと顔を覗き込んでくる。

    「いや、眠気ならお陰様ですっかり飛んだのだけれど…」

    かなり意識している状態で本人が近付いてきたとなると相当まずい上に、察しが良い彼の事だ…このままでは確実に…。

    「…ん?アキラくん、もしかして具合でも…?」

    やはり僕の様子がおかしい事にすぐに気付き、恐らく顔が赤くなっているのであろう…それを確かめる為に彼のひんやりとした手が頬に触れる。

    「…少し赤く、…熱いようだ。首も、…」
    「……っ、」

    頬の次は首筋に掌が当てられて指が項を掠めれば思わずびく、と肩が跳ね上がる。
    その反応を見てかヒューゴの指は首筋をなぞり鎖骨を撫でてからシャツの襟に軽く引っ掻ける。

    「…もしかして、…思い出したのかね?…昨夜のことを」

    耳元に彼の唇が近付いたと思えば甘く誘惑的な声が囁き問い掛ける。

    「…うん、…この後の予定は?」

    それを僕は素直に認めた。きっと彼に今更誤魔化そうとした所で無駄だと悟ったからだ。

    「ふふ、…そうだな。空けることは出来る、君の為ならばな」
    「じゃあこの後も…僕と過ごして欲しい」
    「いいとも。君が望むのなら…俺は何度だって、」

    ヒューゴが言葉を言い終える前に唇を塞ぐ。
    深く口付けを交わしながら乱れるシーツの波へ再び僕たちは身体を沈めて、甘い夜の残り香に酔いしれ溺れるのだった。
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