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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    ロナドラ800字。

    ##94SS

    ■熱があるから


     ロナルドが風邪を引いた。先日の大捕物の際、川に落ちてずぶ濡れになったのが原因だろう。
     今日は事務所も臨時休業。ドラルクはつきっきりでロナルドの看病をしている。
    「寒いし頭ガンガンする……」
     ソファで毛布をかぶって丸くなっているロナルドの額に手を当てる。先ほど風邪薬を飲ませたのでそろそろ効いてこないかと思ったのだ。
    「うーん、まだ熱下がらないな」
     体温が人間より低いドラルクにとっては、今のロナルドの肌は低温火傷するんじゃないかと思うくらい熱い。手を引っ込めようとしたところで手首を掴まれた。
    「どこ行くんだよドラ公……」
    「どこって、ちょっとあっちでリンゴでも剥いてこようと思ったんだけど」
    「いらないから傍にいろよ……」
     掠れた声に熱のこもった吐息。それと潤んだ青い瞳に、ドラルクは胸が高鳴るのを感じた。それでも手首を掴む力は強くて離れられそうにない。仕方なくソファの前に膝をつく。
     やれやれ。風邪を引いてすっかり弱ってるな。
     額ににじむ汗で張り付いた銀髪をかきあげてやる。伏せられたまつ毛も同じ色で、改めてドラルクは思う。黙っていれば美しいのになあ。だが同時にこうも思う。ただ美しいだけなら絵画や彫刻と同じだ。彼は生きているからこそ魅力的なのだと。
    「……ねえ。手、離して。痛い」
    「やだ。捕まえとかないとお前どっか行っちまうだろ」
     あー五歳児のおつむにゴリラの腕力が加わるとこうなるのか。ぎゅっとドラルクの手首を掴む手に力がこもる。
    「ちょ、ちょっと待って、これ以上強く掴まれたらほんとに私死ぬから」
    「やだよ死ぬなどこへも行くな」
    「無茶を言う」
     そこへジョンが近づいてきた。
    「ヌヌヌヌヌヌ。ヌーヌー」
    「ほら、ジョンが代わりに抱き枕になってくれるって言うから」
     そう言ってドラルクはロナルドにジョンを抱かせてやると、その場を離れた。リンゴを剥こうと思って腕まくりをしたら、ロナルドの手の跡がくっきり残っている。ああ、これデスリセットで消したくないなあ。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。年下の彼氏のわがままに付き合ったら反撃された。■月と太陽


    「あなたと、駆け落ちしたい」
     ――なんて突然夜中に年下の恋人が言うので、モクマは黙って笑うと車のキーを手にする。そうして携帯も持たずに二人でセーフハウスを出た。
     助手席にチェズレイを乗せ、運転席へ乗り込むとハンドルを握る。軽快なエンジン音で車は発進し、そのまま郊外の方へ向かっていく。
     なんであんなこと、言い出したんだか。モクマには思い当たる節があった。最近、チェズレイの率いる組織はだいぶ規模を広げてきた。その分、それをまとめる彼の負担も大きくなってきたのだ。
     ちらりと助手席を窺う。彼はぼうっとした様子で、車窓から街灯もまばらな外の風景を眺めていた。
     ま、たまには息抜きも必要だな。
     そんなことを考えながらモクマは無言で運転する。この時間帯ともなれば道には他の車などなく、二人の乗る車はただアスファルトを滑るように走っていく。
    「――着いたよ」
     路側帯に車を停めて声をかけると、チェズレイはやっとモクマの方を見た。エンジンを切ってライトも消してしまうと、そのまま二人、夜のしじまに呑み込まれてしまいそうな気さえする。
     チェズレイが窓から外を見る。黒く広い大海原。時 818

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。結婚している。■いわゆるプロポーズ


    「チェーズレイ、これよかったら使って」
     そう言ってモクマが書斎の机の上にラッピングされた細長い包みを置いた。ペンか何かでも入っているのだろうか。書き物をしていたチェズレイがそう思って開けてみると、塗り箸のような棒に藤色のとろりとした色合いのとんぼ玉がついている。
    「これは、かんざしですか?」
    「そうだよ。マイカの里じゃ女はよくこれを使って髪をまとめてるんだ。ほら、お前さん髪長くて時々邪魔そうにしてるから」
     言われてみれば、マイカの里で見かけた女性らが、結い髪にこういった飾りのようなものを挿していたのを思い出す。
     しかしチェズレイにはこんな棒一本で、どうやって髪をまとめるのかがわからない。そこでモクマは手元のタブレットで、かんざしでの髪の結い方動画を映して見せた。マイカの文化がブロッサムや他の国にも伝わりつつある今だから、こんな動画もある。一分ほどの短いものだが、聡いチェズレイにはそれだけで使い方がだいたいわかった。
    「なるほど、これは便利そうですね」
     そう言うとチェズレイは動画で見たとおりに髪を結い上げる。髪をまとめて上にねじると、地肌に近いところへか 849