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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。煙草の理由。

    ##文スト
    #BSD
    #敦太
    dunta

    偲ぶ煙 太宰さんから時々、煙草の匂いがする。特に天気の良い日。
     けれど吸っているところを見たことがない。別に隠れて吸うこともないだろうし、なんでだろうと思っていた。

     ある日。僕は国木田さんから、太宰さんを連れ戻してくるように云われた。異能を使って嗅覚を強化すると、息を吸い込んだ。匂いを辿って街を駆け抜ける。
     たどり着くのは街外れの、海が見える墓地。
    「……やあ、敦君」
     振り返らずに答える太宰さんは、まだ新しい墓の前で煙草を吸っていた。嗚呼、こういうことだったのか、と僕は合点がいった。太宰さんが煙草を吸うのは、故人を偲んでのことだったのだと。
     今の太宰さんは近づきがたい雰囲気をしている。僕はその背後からおそるおそる足を踏み出した。
     なんて、声をかければ良いんだろう。
    「……太宰さんって、煙草吸うんですね」
     頭の中を全部引っかき回して考えた末に出た言葉が、これだった。どうして僕は、こんな時にこんな莫迦みたいなことしか、云えないんだろう。
     太宰さんは気にした風もなく、雲ひとつない真っ青な空に向かって煙を吐き出すと、「たまにね」と軽く答えた。
    「天気の良い日なら、あの世にも届くかなって」
     僕が隣に立つと、そう云って、太宰さんはまた煙草を口元に持ってくる。
    「その煙草が、好きだったんですか。その人は」
    「うん。ラッキーストライクね」
     そう云って左手でコートのポケットから煙草のパッケージを取り出して見せる。箱には赤い丸が描かれていた。
    「花束を供えてもいいんだけど、花より団子……っていうか咖喱だったし」
     吸いさしの煙草を手に苦笑いするその顔が、どことなく何時もより幼くて、楽しそうで。
     ――嗚呼、ここに眠る人は、太宰さんの大事な人だったんだろうな。いや、『だった』じゃない。過去形じゃなくて、現在進行系だ。
     死んだ人間には勝てない。
     心の中の椅子に故人を座らせてしまった人は、生きている人間に椅子取りゲームをさせてくれない。記憶は美化されることしかないのだから。
     僕は胸が苦しくて、黙ってネクタイごとシャツの胸元を握りしめていることしかできない。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。ポッキーゲームに勝敗なんてあったっけとググりました。付き合っているのか付き合ってないのか微妙なところ。■ポッキーゲーム


     昼下がり、ソファに座ってモクマがポッキーを食べている。そこへチェズレイが現れた。
    「おや、モクマさん。お菓子ですか」
    「ああ、小腹が空いたんでついコンビニで買っちゃった」
     ぱきぱきと軽快な音を鳴らしてポッキーを食べるモクマ。その隣に座って、いたずらを思いついた顔でチェズレイは声をかける。
    「モクマさん。ポッキーゲームしませんか」
    「ええ~? おじさんが勝ったらお前さんが晩飯作ってくれるってなら乗るよ」
    「それで結構です。あ、私は特に勝利報酬などいりませんので」
     チェズレイはにっこり笑う。「欲がないねぇ」とモクマはポッキーの端をくわえると彼の方へ顔を向けた。ずい、とチェズレイの整った顔が近づいて反対側を唇で食む。と、モクマは気づく。
     ――うわ、これ予想以上にやばい。
     チェズレイのいつも付けている香水が一際香って、モクマの心臓がばくばくしはじめる。その肩から流れる髪の音まで聞こえそうな距離だ。銀のまつ毛と紫水晶の瞳がきれいだな、と思う。ぱき、とチェズレイがポッキーを一口かじった。その音ではっとする。うかうかしてたらこの国宝級の顔面がどんどん近づいてくる。ルー 852

    高間晴

    DOODLE字書きだって洒脱モを書きたかった……というだけのアレ。チェズモク。■オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ


     それは突然の雨だった。
     昨日、チェズレイとモクマの二人はとある国に拠点を移した。モクマがそのセーフハウスの近辺を、どんな店があるのか見て回っていた。
     ――あそこのラーメン屋、うまそうだな。チェズレイはきっとついてきてくれないだろうけど。
     なんて思いながら歩いていく。するとみるみる空が曇って雨が降り始めた。
     まずい、傘なんて持ってないぞ。
     モクマはとっさに青藍の羽織についていたフードをかぶると、慌てて下駄を鳴らしながらセーフハウスに向かってアスファルトを駆け抜けた。雨はどんどん激しさを増していく。確かにスコールが多い国だとは聞いていたけれど。顔に大粒の雨のしずくが次々と当たるのがわかる。
     約二十分の後。セーフハウスの玄関を開けて駆け込むと、チェズレイが慌てて出迎える。
    「モクマさん……! いま迎えに行こうとしていたところで――」
    「ただいま、チェズレイ。いや~いきなり降り出すからびっくりしちゃった」
     言いながらフードを脱ぐと、羽織がだいぶ雨を吸って重くなっているのに気づく。全身濡れ鼠だ。「待っていてください」と言い置いてチェズレイが 1511