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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。

    ##文スト

    オーバードーズ(Side. D) 久しぶりに、織田作の名を叫んだ自分の声で目が覚めた。がばりと跳ね起きると何時もの煎餅布団が汗で湿っていて、心臓がうるさいほどに早鐘を打っている。コントロールできない。
     ――嗚呼、そうだ。私はまだ君のいない世界で生きていくのに慣れていない。
     兎に角、気分が酷く落ち込んで居ても立ってもいられない。そうだ。薬をたくさん飲んでしまおう。何度も試したことがあるが、咳止めシロップを三本くらい飲めばきっとまた莫迦みたいに幸せな気分になれる。
     部屋の隅に転がっている、買い置きの咳止めシロップを開封すると、一気に喉へ流し込んだ。いつも思うがシロップとか云う割にものすごく飲みにくい味。我慢して続けざまに三本とも空にする。ふう、と息をついて極力くだらないことを考えた。今日のお昼ご飯は毒茸にしようかな。
     ふいに窓の方へ目をやる。カーテンの隙間から差し込む朝の光がぬらぬらと重力で歪んだかと思ったら、時計の秒針が何千本もの尖った先端で、私の頭蓋からごぼごぼと無限に溢れる脳髄に突き刺さってくる。頭が割れそうで吐き気を催した。でも、今吐いたら最後、私は内側から裏返ってしまってもう元には戻れないことになるだろう。
     怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
     死にたいけれど、痛いのや苦しいのは嫌だ!
     たまらずカーテンをしっかり閉めて、頭を抱える。なんだこれ、何時ものと違う。バッドトリップだ。
     私は枕元に置いてあった薬のシートからありったけの錠剤を取り出しては水無しで飲み込んだ。その辺の精神科をはしごして適当に「眠れない」と嘘をついてもらっている薬。たぶんこれを全部飲めば、耐えられないくらいの眠気が来て、目が覚める頃には元に戻れる。そのはずだ。じゃないと――死ぬより酷いことになる。
     仰向けに寝転がると古びた天井がぐわっと迫ってきて、思わず息を呑んだ。早く効いてくれ。押しつぶされてしまう。
    「助けて、たすけて……あつし、くん」
     覚えているのは、そこまでだった。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。眠れない夜もある。■インソムニア


     同じベッドの中、モクマはチェズレイの隣で寝返りをうつ。
    「眠れないんですか?」
    「なんか寝付きが悪くてな。……寝酒でもするか」
     起き上がろうとしたモクマの肩を押し止める。薄暗がりの中でプラチナブロンドが揺らめいた。
    「寝酒は体によくありません。それだったら私が催眠をかけて差し上げます」
    「えっ」
     モクマは少しぎょっとする。これまで見てきたチェズレイの催眠といえば、空恐ろしいものばかりだったのだから。するとそれを見透かしたようにアメジストの瞳が瞬いて眉尻が下がる。今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。――モクマはこの顔にたいそう弱かった。
    「モクマさん……私があなたに害のある催眠をかけるとでも?」
    「い、いやそんなこと思っちゃおらんけど……」
     言われてみれば確かにそうだ。この男が自分にそんなことをするはずがない。
     しなやかな手によって再びベッドに背を預け、モクマは隣に横たわるチェズレイと目を合わせた。
    「目を閉じて、ゆっくり呼吸してください。体の力を抜いて」
     穏やかな声に、言われるとおりにモクマは従う。
    「想像してください。あなたは果てのない広い草原にいます。そ 854

    高間晴

    DONEモさんの好きな場所「海と雪原」を踏まえて、チェズモクが雪原の夜明けを見に行く話。
    巷で流行りの「おじさんが〇〇だった頃の話」構文が使いたかった。
    ■夜明けを見に行こう


     とある冬の夜更けに、二人で温かいカフェオレが飲みたいと意気投合した。ベッドから二人抜け出すと、寝間着のままでキッチンの明かりをつける。
    「……そういえば、前にあなた『ヴィンウェイにいたことがある』というようなことを言っていましたよね」
     コーヒーを淹れながらチェズレイが訊ねた。モクマはコンロから温め終えた牛乳の小鍋を下ろしながら「えー、そうだっけ?」と答え、火を止める。チェズレイはおそろいのマグカップにコーヒーを注ぎ分け、差し出される温かい牛乳の鍋を受け取る。その表面に膜が張っていないのは、二人で暮らすようになってからモクマが気をつけ始めたおかげ。モクマひとりで飲む分には膜が張っていても気にしないが、神経質なチェズレイはそれを嫌うためだ。
     チェズレイはモクマの記憶の引き出しを開けようと、言葉を続ける。
    「ほら、ここで暮らしはじめて間もない頃ですよ。ボスにヴィンウェイ名物を送るためにスーパーに行った日」
    「……んー? ……あ! あの燻製サーモンとナッツ送った、あの時の」
    「そうそう、その時です」
     チェズレイは鍋からコーヒーの入ったマグカップに牛乳を注ぎ、黄 3173