ぜとくんと兄さんぜとくんがお腹をすかせていると、兄さんはいつもおいしいものを作ってくれます。ある日のことです。
「ごちそうさまでした! 」
朝ごはんを食べ終わって両手を合わせるぜとくんに、兄さんは言いました。
「よーし、今日はちょっと遠いけど、◎星まで行ってみるか!」
「えっ……? 」
兄さんがお休みの時は大体公園に連れていってくれます。この星の外に出るのは初めてです。
「 ほら、リュックサック背負って」
兄さんはぜとくんの小さな背中にリュックサックをかけます。中には水筒やお菓子などが入っています。
「よし行くぞぉ~! しっかりつかまってろ!!」
言うなり兄さんは窓辺から空に飛び立ちました。
「わぁああっ!! 」
思わず声を上げるぜとくん。
「大丈夫だ、怖くないぞ 」
そんなことを言っているうちにもグングン高度を上げていきます。もう町が小さく見えてきました。
「うひゃああああ……」
「どうだ、気持ちいいだろう!? 」
「うん!」
しばらく飛んでいると、今度は地面が見えて来ました。
「降りるぞ! 」
その言葉通り、地上に降り立った二人はまた歩き始めました。
歩いている途中、道端に大きな木がありました。そこには見たこともないようなきれいな花が咲いています。
「(何の花だろう……)」
じっと花を見つめるぜとくん。すると兄さんが答えてくれました。
「それは梅だよ」
「うめ?」
「ああ、花が落ちると丸い実が生るんだ」
「へぇ~……」
「こんどは、一緒に実を取りに来るか」
「うん! 」
二人は再び進み出しました。それから少しして、小さな池が現れました。池には綺麗なお魚が泳いでいます。
「コイがいるぞ」
「おっきい」
「フナもいるな」
「こっちにも!」
「よく見てみろ、エビもいるぞ」
「本当だ!」
いつの間にか、すっかり夢中になってしまいました。
「あれは何?」
大きな岩の上には石でできた不思議な家のようなものが建っていました。
「神社さ」
「じんじゃ? 」
「この土地の神様が住んでいるところだよ」
「ふぅん……」
「そろそろお昼にしようか」
兄さんはリュックの中から包みを取り出しました。それを開けると、おにぎりが出てきました。
「いただきまーす」
二人並んで座り、仲良く食べはじめました。ぜとくんのおにぎりにはお魚と青菜が入っていました。
「おいしい! 」
「ゆっくり噛んで食べなさい。味噌汁も持ってきてるからな」
「うん!」
ぜとくんは嬉しくなってニコニコ笑いながらおにぎりを食べました。
午後からも二人で楽しく歩いていきました。日が落ちてくる頃には山の向こうに太陽が沈んでいくのが見えました。
「今日はこのへんにしておこうか」
兄さんと一緒に帰る道中、ぜとくんは思い切って聞いてみました。
「きょうはどうして連れてきてくれたの? 」
「……お前に見せたかったんだ」
ぜとくんは首を傾げました。
「この世界のことを、色々」
ぜとくんはますます不思議になりました。そして同時に、なんだかくすぐったくて温かい気持ちにもなりました。
また、いっしょにきたいなぁ……
…という具合で、ぜとくんと兄さんの休日は終わりました。
でも、まだまだ知らないものが沢山あります。だから、これからもぜとくんはいろいろな場所に行ってみたいのです。
そして、いつかぜとくんが大人になっても、兄さんと一緒に行けたらいいなぁと思いました。
(おしまい)