雀も鳴き飽きて鳩に出番を譲る昼時、クロードは昨晩傷めた腰をさすりながら体を起こした。
クロードが起業してから、つまりこの地に引っ越してから、両手で数えるほどの年数になった。百年以上を過ごした地を発ち、伸ばしていた髪も断ち、身も心も状況も一新した彼の新事業はみるみるうちに名企業へと成長していた。業務はフルリモートが基本だが、今回ばかりは殆ど国家機関と言っても差し支えの無い大重鎮が相手の商談で、数日家を留守にしていた所だった。ベレトはここへ越して以来、定職には就かずに家庭へ入り、クロードの事業を支えていた。普段はどれだけ忙しくても家に帰る伴侶が、連日留守にするというのは実に数百年ぶりで、昨夜は寂しさから帰宅即尺の後、事に及んでしまったばかりだった。
2192